速やかな治療が必要な重症不整脈
早めに専門医に相談しましょう。不整脈の場合、落ち着いているときはまずまず良くでも、状態が悪くなるときは一気のときもありますから。
■頻脈性不整脈
WPW症候群における頻脈性心房細動
肥大型心筋症における頻脈性心房細動
心房粗動の1対1伝導
■徐脈性不整脈
Mobitz II型第2度房室ブロック
発作性房室ブロック
急速に進展する三枝ブロック
一分一秒をあらそう超重症不整脈
心室細動は心停止と同じ状態ですから直ちに心肺蘇生やAEDが必要です
■ 心室細動
もっとも危険なタイプです。こうなると心臓はけいれんしているだけで、血液を送り出すことはできません。血圧はほぼゼロとなり、事実上心停止の状態になるため、そのままでは4分以内に脳死になってしまいます。
心室細動が起こった場合は、ただちに心臓マッサージ・心肺蘇生や電気的除細動(電気ショック治療)を行う必要があります。最近普及したAEDを早い段階で使って電気ショックを与えると改善する可能性があります。平素からBLS講習会などでこうした勉強・実技練習を経験しておけば大切な肉親や友人をいざという時に助けるチャンスが増えます。
■ 心室頻拍
致死性の不整脈では一刻も早く病院へ行く必要があります。そうしないと、心停止から脳死になる心配があるからです
■ トルサード・ド・ポアン
心室頻拍の特殊なタイプ。死亡する恐れの高い不整脈で、心電図では「QT時間」が延長しているときに起こりやすいです。
■ 房室ブロック
心臓の中の電気信号(「不整脈の原因・メカニズム・診断」参照)が途中で途切れてしまうために脈拍が極端に遅くなり、時には止まってしまう危険な不整脈。失神発作が起こったり、突然死にもなりかねません。ペースメーカーで安全を確保できます。
■ 洞不全症候群
心臓の中の自然のペースメーカーが壊れてしまい、何秒かの間、心停止が見られる状態。この間の心電図はまったく平坦で、血圧もゼロに近づき危険です。洞結節の機能が低下することによって、さまざまな徐脈性不整脈を起こします。これもペースメーカ治療の適応になります。
不整脈治療、最近の考え方
近年の大がかりな臨床研究によって、不整脈治療への考え方はずいぶん変わりました。かつての「何でも薬などで治そう」という方針から、「本当に必要かつ有効な治療だけ」するようになりつつあります。不整脈の中には治療が不要で生活の適正化だけで行けるものも多くあります
一般的には重い心臓病がない患者さんで不整脈が見られても、不整脈の重症度が高くなく症状も軽ければ、生活習慣の改善などの指導を行うだけで積極的な薬物治療などは行わないというのが最近の考え方です。
中等度の不整脈でも、治療する場合の治療目標は、無理をして完全治癒を目指すのではなく、患者さんの生活の質QOLの改善が得られること、あるいは多少の不整脈が残っても長期予後の改善が得られることのほうが重要です。
このような考えから、実際の治療法も眼の前の不整脈を表面的に治す対症療法から、不整脈の原因に対する治療すなわち根治を目指すようになり、さらには個々の患者さんに応じた個別の治療へと、治療戦略が大きく変貌しつつあります。