無害な不整脈・危険な不整脈の見極め

刺激伝導系

心臓の中の電気信号の伝わるルート(刺激伝導系)を示します。刺激伝導系のどこがどう壊れるかで治療法がちがってきます

不整脈の中には、無害なものから危険なものまであります。特に心臓病などが背景にある場合は要注意。不整脈そのものがそう悪くない場合でも、不整脈のために心臓の力が落ちて血液を十分送り出せなくなると重症です。

重症度は、不整脈が心臓内のどこから発生しているか(洞房結節、心房、心室のうちどこからか)によっても、ある程度わかります。

たとえば心筋梗塞を原因とした不整脈で、とくに心室性のものであれば要注意ですし、弁膜症のなかで大動脈弁狭窄症に合併する心房細動という心房性不整脈では急に状態が悪化して危険なこともあります。不整脈は不整脈単独ではなく、その背景にある病気も考えて治療する必要があります。患者さんにおかれましては不整脈を無用に怖がる必要はありませんが、原因疾患がある場合などには油断禁物であることも知っておいてください。やるべきことは、気になる症状や健診結果が出れば、心臓に詳しい医師に相談することです。

ここでは不整脈の重症度別に、それぞれの不整脈の治療法をご説明します。

重い合併症を引き起こす危険性のある不整脈

脳梗塞

脳梗塞を起こす不整脈があります。要注意です。前もって治療しておけばかなり防げます

重い合併症を起こす不整脈としては、特に、脳こうそくを起こす「心房細動」が知られています。心房細動になると心房全体がけいれんのように震え、血液の流れがよどみます。そのため左房内に血栓ができやすくなります。この血栓が何かの拍子に剥がれると、血流に乗って心臓から脳へと進み、脳動脈の途中で詰まって脳梗塞を起こします。心房細動による脳梗塞は高齢者だけでなく若年者でも起こります。

心房細動による血栓や梗塞を予防するためには、心房細動を根治させるか、血栓ができるのを防止する必要があります。どちらが良いかはまだ世界的に検討中ですが、両方が無理な場合、せめて血栓だけでも予防すれば悲劇はかなり防げます。

■頻脈性不整脈
発作性心房細動、持続性心房細動、慢性(永続性)心房細動、心房粗動、心房頻拍など

心不全を引き起こす危険性のある不整脈

除脈頻脈

脈が遅すぎたり速すぎたりのときは苦しくなります

1分間130拍以上の極端な頻脈や、逆に40拍以下の極端な徐脈が長時間続くと、次第に左室に負荷がかかります。この際、もともと心臓病があると、容易に心不全を誘発してしまいます。こうした例ではより積極的な不整脈の治療が必要になります。

最近では、基礎心疾患がなくても長期間の頻脈持続によって心筋細胞が変性し、拡張型心筋症と同じように強い心不全を来たす「頻脈誘発性心筋症」という病態が注目されています。服薬やカテーテル治療(アブレーションと呼びます)あるいはそれが効かないときに「メイズ手術」という方法で不整脈を治し、心臓の機能も回復したケースがあります。もちろん原因となる基礎疾患がある場合、その治療も行います。たとえば弁膜症や心筋症、虚血性心疾患、先天性心疾患などがある場合、それらの治療も有効です。

■頻脈性不整脈
洞性頻脈、上室性頻拍、頻脈性心房細動・心房粗動、接合部頻拍、心室頻拍

■徐脈性不整脈
房室ブロック、洞房ブロック、洞性徐脈

強い自覚症状を伴う不整脈

不整脈の中には強い自覚症状を伴うものがあります。不整脈そのものには命の危険はありませんが、症状のために日常生活に大きな支障を来します。特に、心房細動、心房粗動、上室性頻拍などの頻脈発作を繰り返す場合や、期外収縮の多発などは、ほとんどの患者さんが強い動悸を自覚します。

一方、発作性洞停止では強いめまいや失神発作を来たすことがあります。頻脈発作と洞停止を繰り返す徐脈頻脈症候群と呼ばれる病変もしばしば見られます。基本的にはお薬で不整脈をできるだけ治しますが、お薬が効かないときにはカテーテルによるアブレーション治療を考えたり、遅い脈にはペースメーカーを併用することもあります。一般にお薬は頻脈に強く、ペースメーカーは除脈に強いためです。

■頻脈性不整脈
発作性心房細動、発作性心房粗動、
発作性上室性頻拍、
多発性上室性・心室性期外収縮

■徐脈性不整脈
徐脈頻脈症候群、発作性洞停止

次のページでは、より重症度の高い不整脈の種類・治療法を解説します。