報道によりますと女優の天海祐希さん(45歳)が急性心筋梗塞のため都内の病院に入院されました。

お若い天海さんが、心筋梗塞というどちらかと言えばもっとご年配の方に起こりやすい病気に襲われたということで、驚いておられる方も多いことでしょう。天海さんは映画やテレビをはじめたくさんの仕事をこなす売れっ子ですが、その大切な仕事を一時止めて、治療に専念されるようです。心筋梗塞とはひとつ間違えると命にかかわる重病ですので、それが安全でしょう。

天海さんの一日も早いご全快をお祈りするとともに、若いひとを襲うこともあるこの急性心筋梗塞について解説します。

天海祐希さんの急性心筋梗塞報道

サンケイスポーツ 5月9日(木)7時0分配信
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天海祐希、心筋梗塞…1週間以上は治療に専念

女優、天海祐希(45)が心筋梗塞(こうそく)を発症し、今月6日から都内の病院に入院していることが8日、明らかになった。体調不良を訴えて診断を受け た結果で、症状は軽度と判明。このため、天海は当初、上演中の舞台「おのれナポレオン」の出演続行を強く希望したが、ドクターストップがかかり無念の途中 降板となった。大事を取って、1週間以上は安静と治療に専念する。ハツラツとして働きざかりの天海が一体、なぜ?

宝塚の元男役トップスターで、女優に転身後も颯爽とした姿で教師や刑事など多彩な役を演じてきた天海。保険会社の実施する「理想の女性上司」アンケートで今年4年連続の首位となり、頼れるイメージの彼女を意外な病が襲った。

天海は先月9日の初日から東京芸術劇場(東京・西池袋)で上演中の舞台「おのれナポレオン」(三谷幸喜作・演出)に出演。所属事務所によると、今月6日の 昼公演後「体がだるい」と訴えたという。また、舞台スタッフから伝え聞いた劇場関係者は「天海さんは6日の公演中、いつもより汗を多くかき、公演後に『胸 が痛い』と話していたそうです」と証言する。

天海はすぐにマネジャーと車で都内の病院へ向かい、軽度の心筋梗塞と診断された。所属事務所によると、過去にも心臓を含め、病気で入院したことはないとい う。ストレッチで体のケアを怠らず、美しさの秘訣については「よく食べ、よく笑い、よく寝ること」をモットーにしてきただけに、青天の霹靂(へきれき) だったようだ。

翌7日は休演日で、千秋楽の12日まで7公演(すべて完売)を残すのみとあって、天海は当初、出演を強く要望。しかし、ドクターストップがかかり、そのま ま入院、途中降板が決まった。手術の必要はなかったが、1週間から10日の安静を言い渡され、現在は血液の流れを良くする点滴などの治療を受けているとみ られる。

所属事務所は「心臓に負担のかかる仕事や運動をしたことは一切ないんです」と困惑気味。「軽度と診断されたのは幸いでしたが、本人はお客さんや共演者、ス タッフに申し訳ないという思いが相当強かったようです」と説明した。代役は、9日の夜公演から宮沢りえ(40)が務める。

実際、無理なスケジュールは組んでいない。(中略)

昨年も夏から秋にかけ、フジテレビ系スペシャルドラマ「女信長」(先月放送)や昨年10月期の同局系連ドラ「結婚しない」に主演したものの、ハードなスケ ジュールではない。関係者が一様に首をひねる中、「目に見えない疲れがたまっていたのか」「ゆっくり治してほしい」と周囲は心配するとともに、温かく見 守っている。
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急性心筋梗塞とはどうやって起こるのか

急性心筋梗塞は、冠動脈という心臓に血液を送る大切な血管の内側に粥腫(じくしゅ、プラーク)と呼ばれる油がたまったふくろのようになり、その粥腫が破れてその上に血栓が付着して広がり、冠動脈を閉塞することにより起こります。心筋梗塞の約6割はこうした形で発生し、その原因はメタボや動脈硬化などが知られています。ともあれ冠動脈が急に閉塞すればそのエリアの心筋(心臓の筋肉)が死んでしまい心筋梗塞になります。

プラーク破裂以外では、エロージョンつまり冠動脈の内皮がはがれてそこへ血栓ができるタイプがあります。心筋梗塞の約3割を占めます。その他では血管の内膜の解離、血管がけいれんする血管攣縮(れんしゅく、スパスム)でも心筋梗塞が起こることがあります。

そうした自然経過から発生する心筋梗塞以外に、冠動脈カテーテル治療(PCI)で埋め込まれたステントに血栓ができて急性心筋梗塞になることがあり注意が必要です。ステント治療とくに薬剤溶出性ステントを植え込まれた患者さんはそうした注意が身を守ることにつながります。

急性心筋梗塞の症状と診断の方法

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きびしい胸痛はすぐ病院へ

突然、きびしい胸痛が起こります。痛みは20分以上つづきます。お年寄りや糖尿病などの患者さんでは痛みが起こらないこともあり、注意が必要です。また心臓の下側が梗塞を起こした場合は、吐き気やおう吐などの症状から始まることもあります。

他の病気にも胸痛を起こすものがありますので、これらでないことを確認することも大切です。たとえば急性大動脈解離や気胸なども鑑別する必要があります。

検査では心電図でのST-T変化と呼ばれる波形の変化があればかなり確実です。多くの場合、心電図のST部分が上がることから急性心筋梗塞をSTEMI(ST Elevation Myocardial Infarction)と呼びます。そして血液検査でCK(酵素の名前です、筋肉が壊れたときに筋肉の中から出ます),CK-MB(CKの中で心臓の筋肉から出てくるものです),トロポニンT(これも心臓から出ます)などの血清酵素が上昇していれば、診断が確定します.とくにトロポニンTの上昇は決定的です。 ただしこうした血清酵素の上昇は心筋梗塞が起こってから3時間くらいかかるので,早期に診断し、速やかに下記の治療を行うためには症状と心電図変化が重要 です。

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女性の胸痛は出現がやや遅れることも

なお高齢者の場合は症状もいろいろで胸痛がないことも少なくありませんし心電図変化もいろいろです。
女性の場合も症状に幅があり、症状がでるタイミングがずれることもあります。それ以外では糖尿病の患者さんは症状とくに胸痛が軽いことがあります。

天海さんの場合も当初は体のだるさを訴えられ、次第に胸が痛くなったと報じられています。仕事中でもあり、最初はがまんされていたのかも知れません。

急性心筋梗塞の治療法

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急性心筋梗塞の治療は早期に!

急性心筋梗塞の治療のポイントは梗塞エリアをできるだけ小さくすることと、危険な不整脈を抑えることです。

梗塞は冠動脈の閉塞後4-6時間という比較的短い間にできあがるため、この間にできるだけ早く冠動脈の閉塞を解除することが肝要です。

早期治療、これが急性心筋梗塞治療のポイントなのです。

■急性心筋梗塞の初期治療
まず胸の痛みをできるだけ取ることから始めます。必要に応じてモルヒネなどを適切に使います。これは単に痛みを取って患者さんを快適にするだけでなく、不整脈その他の二次的問題を予防するのにも役立ちます。モルヒネといってもごく一時的な使い方ですので麻薬中毒などの心配はありません。さらに冠動脈をなるべく広げて流れを良くするために、ニトログリセリンなどを使います。

■再灌流療法
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一刻も早く血流の再開を!

冠動脈の血流を再開するための治療です。
その主役はカテーテルによる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)です。かつては血栓溶解療法という、冠動脈内にできた血栓を溶かす治療が広く行われましたが、現在は最初からPCIを行うことが多くなりました。これをプライマリーPCIと呼びます。とくに心不全などがある場合に有用です。

またカテーテルで血栓を吸引して取り去る血栓吸引療法も適宜行います。

お薬としてはバイアスピリンやプラビックスなどの血小板を抑える薬が使われます。PCIに際しては静脈注射できるヘパリンを使います。

必要な場合は冠動脈バイパス手術で冠動脈の血流を再建します。天皇陛下にも使われた方法で、冠動脈が複雑に壊れているときや糖尿病、慢性腎不全などで血管がぼろぼろになっている時などに威力を発揮します。

■急性心筋梗塞の合併症の治療
1. 不整脈 
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不整脈治療は心筋梗塞のときにも大切

急性心筋梗塞ではさまざまな不整脈が合併することがあります。それに対して必要な処置を加えることが大切です。

たとえば心室性期外収縮、心室頻拍、心室細動などですね。そのままでは危険な不整脈です。キシロカインやアミオダロンの点滴はじめさまざまなお薬を適宜使用し、とくに心室細動などのいのちにかかわる重症不整脈では電気的除細動(カウンターショック、みなさんおなじみのAEDなどと同じ方法です)を考慮します。

急性心筋梗塞では閉塞した冠動脈の位置によってはブロック(心臓内の電気信号が流れなくなる)がおこり、除脈つまり脈が遅くなることがあります。あまり遅くなりすぎると、心不全さらにいのちの危険に至るため、治療を行います。アトロピンなどを注射したり、一時的ペースメーカーを使用して脈拍のスピードを適正にします。

2. 心不全
心臓が力不足になって血液を全身に送れなくなり、また全身の血液が心臓にもどりにくくなる状態です。急性心筋梗塞のあとに心不全が発生すれば冠動脈拡張剤や利尿剤などを集中治療室でモニターのもとで使います。

必要があればドパミンなどの強心剤の点滴や、さらに重症では大動脈バルーンパンピング(IABP、風船を広げたりしぼめたりしてポンプ作用をだして心臓を助けます)を使います。それでもダメなときには経皮的人工心肺(PCPS)を使うこともあります。人工心臓と人工肺をコンパクトに使えるようにした器械で強力ですが長い期間は使えないという弱点があります。

急性心筋梗塞を乗り切ったあとは? 大切なのは再発予防

安全に回復を図ることと、再発を予防することが柱となります。

■心臓リハビリテーション
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心筋梗塞のあとのリハビリは大切

上記1.や2.の治療で状態が安定すれば、心臓や全身の回復を図ることが大切です。それが心臓リハビリテーションです。状態が安定していれば、徐々にすわり、立ち、室内で歩き、と順を追って運動量を増やしていきます。危険な不整脈が出ていたり、狭心症がまだ続いている場合は無理をせず、調整して行きます。

■二次予防
急性心筋梗塞を乗り切ったあと、同じ心筋梗塞を二度とおこさないように予防するのが二次予防です。患者さんが長く生きるためには大変重要なことです。

さまざまなお薬を適宜選んで使います。たとえばアスピリンはもともとは風邪薬・熱さましあるいは痛み止めでしたが、少量で使えば血小板の作用を抑えて血栓を予防するため、心筋梗塞の二次予防に役立ちます。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)あるいはアルドステロン拮抗薬は,人間の心臓血管ホルモンの過剰作用を抑えて心臓を守る作用があるためよく使われます。β遮断薬もメカニズムはちがいますが心臓を守る作用があり長生きに役立ちます。

二次予防のなかで、もとの原因を抑えることも大切です。たとえば高血圧,糖尿病,脂質異常症,肥満,喫煙などのいわゆる心筋梗塞のリスクファクター(危険因子)をひとつひとつ入念に抑え込むことは重要です。それぞれ有効な治療法があるためやらない手はありません。とくにメタボ関係の場合はスタチン系薬剤の有効性が知られています。なお急性心筋梗塞の原因が冠動脈スパスムつまり冠動脈がけいれんして細くなる場合にはCa拮抗薬がその予防に役立ちます。

天海さんの場合は、まだ比較的お若く、体格もスマートであまりメタボのようには見えませんが、普段からご多忙なうえに、テレビドラマの不振などのストレスがあったという話もあり、それが天海さんのせいではないにしても、こうしたストレスの軽減は大切かも知れません。

まとめ

天海祐希さんの急性心筋梗塞の一件の機会に、その診断や治療、予防などを解説しました。天海さんの一日も早い全快と仕事復帰をお祈りするとともに、読者の皆さんの病気予防、健康増進に役立てば幸いです。


参考サイト: 心臓外科手術情報WEBの中の虚血性心疾患のページ: 狭心症、心筋梗塞やカテーテル治療PCI、冠動脈バイパス手術などの情報が得られます




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