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流山市、仕事と子育て両立の暮らしをめざす、緑の街(2ページ目)

2005年のつくばエクスプレス開業で沿線は変化してきました。中でも注目は交通利便性でなく、自治体が変化、住みやすくなったと子育て世代に人気の流山市。どんな街なのか、施策も含めて見ていきましょう。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド


目標は「働きながら子育てができる街」
駅前送迎保育ステーションは独自のサービス

流山市のポスター

流山おおたかの森駅に貼られていたポスター。これと同じものが都内でも貼られていた

2010年11月、首都圏のJR東日本、東京メトロの主要駅に流山市PRのポスターが掲出されました。緑を青空をバックにしたポスターには「父になるなら、流山市」「母になるなら、流山市」のコピー。市が子育て世帯に存在をアピールしたいことが明確に分かるポスターでした。





森の図書館

親子で出かけるための公園にも事欠かない。写真は広大な敷地を持つ北部地域図書館、通称森の図書館

実際、流山市は子育て環境の整備に力を入れており、テーマは「働きながら子育てができる街」。働きながら子育てする世帯、子育てが一段落したら再び働きたいと考える世帯が暮らしやすい街を目指しているといいます。主な施策のうち、待機児童解消に関しては
・保育園を新設・増設
2011年(平成23年)4月に3園新設、1園増設が予定されており、360人の定員増
・駅前送迎保育ステーションを設置
駅から市内すべての認可保育園へ子どもを送迎する仕組みで、近くの保育園の定員に空きがなくても、他の保育園が利用でき、待機児童解消に役立つ。また、親は園まで送迎する手間、時間が不要。夜間保育を行うなどの機能も
・保育ママ制度の充実
待機児童対策と同時に、保育メニュー多様化の目的も

江戸川台福祉会館

江戸川台駅東側にある江戸川台福祉会館には児童センターが併設されており、子どもの遊び場になっている

また、授乳やオムツ替えができるなど、子ども連れの外出を支援する「赤ちゃんほっとスペース」や、子育て世代の交流のための「子育て支援センター」などの設置にも力を入れており、子育て支援関連施設は市内をほぼ網羅するように配されています。





駅前送迎保育ステーション

流山おおたかの森の駅から続く写真左の建物内に駅前送迎保育ステーションがある。周辺はまだまだ開発中

上記のうち、駅前送迎保育ステーションは流山市独自の施策。駅やその周辺に保育施設を作るのは他の沿線、自治体でも見られる施策ですが、それよりも一歩進んでいるというところでしょうか。現在は流山おおたかの森駅、南流山駅前の2カ所に設置されています。





親子連れ

街を歩いて目に付くのは親子連れ。特に乳幼児から小学生くらいまでの年代の子どもをよく見かけた

つくばエクスプレス開業以降、流山市の人口が増加したことは前述しましたが、こうした施策の結果、流山市では30歳~44歳までの子育て世代が増加、年齢層別のグラフでは最大のボリュームゾーンを形成するに至っています。





独自の施策を上手にアピール、
流山の認知度アップを図る

おおたかの森病院

市にはフィルムコミッションもあり、流山おおたかの森駅近くにあるおおたかの森病院(住所は柏市)は最近テレビドラマなどに頻出、売れっ子(?)のロケ地となっている

さて、駅のポスターを見て、私はもうひとつ、違うことを感じました。いくら、子育て施策に力を入れていても、それを自治体が駅張りのポスターとして外に向けてアピールするのは珍しいということです。そこで市のホームページをチェック、また、問い合わせをしてみると、2004年にマーケティング室(翌年にマーケティング課設置)、さらに2009年には課内にシティセールス推進室が設置、流山の認知度アップのための各種PRを行っているとのこと。つくばエクスプレス開業が2005年ですから、その効果をPR活動によって最大限に利用、沿線の他自治体よりも抜きん出た数の住民誘致に成功したというわけです。

流山市役所

流山市役所。2007年(平成19年)に市制40周年を迎えた

そして、もちろん、こうした施策の立案には市政が大きく関わっています。2003年に就任、2007年に再選を果たした流山市長井崎義治氏の存在です。市長のリーダーシップの下、流山市は変化を遂げてきたのです。





土地区画整理事業、保留地販売の看板

南流山周辺で行われている土地区画整理事業。いずれは保留地販売で回収するものの、先行投資が必要なため、財政には影響が大きい

たとえば、もっとも分かりやすいのは財政です。2003年当時、流山市の財政は破綻に近い状況でしたが、以降入札制度の見直しや職員数の削減、市役所の仕事の効率向上など、様々な手段によって好転。たとえば、3~5%が望ましいとされる、財政の健全性を示す指標のひとつ、実質収支比率は平成15年度の2.5%から平成17年度には4.6%まで回復していますし、財政力を示す財政力指数も平成13年度の0.81から平成20年度には0.949に。日本経済全体の落ち込みなどから、必ずしもすべての指標が良くなったとまでは言えませんが、順調に財政は立て直されつつあります。財政事情が良くなれば、それが住民サービスに還元されることになりますから、市民としては喜ばしい成果です。

住宅街内の公園

森の図書館近くの住宅街の街並み。住戸間には都心では信じられないほどの広さの公園が設けられ、緑が豊富

節約だけでなく、前述した子育て支援策の充実、「都心から一番近い森のまち」を掲げたグリーンチェーン戦略推進など、独自の施策も打ち出し、さらにそれを上手に外にアピールすることで、市の認知度は大きく変わってきたというわけです。市長が変わったことで、街の実際の住み心地、景観だけでなく、イメージも大きく変わったのです。



流山の商家

市役所周辺には立派な商家や新撰組流山本陣跡なども残されており、流山の歴史を感じさせてくれる

では、これに対して市民の評価はどうでしょう。市長再選はなにより、市民に支持されている結果ですが、加えて長くこの地に住んでいる人に伺ってみると、市役所の対応が良くなった、市政を身近に感じるようになったとの答えが多く、市政の変化を肌で感じられているようです。





流山おおたかの森駅

周辺にマンションが急増、人気も高まっているつくばエクスプレス流山おおたかの森駅。一方、東武野田線沿いは一戸建てが多いなど、路線によって住宅事情も異なる

特に私が印象的だったのは、総合運動公園でお話を伺った流山在住40年以上という女性の笑顔。「以前は流山といっても、そこ、どこ?と聞かれたが、今は流山、いいところに住んでいらっしゃるのねと言われるのよ」と非常にうれしそうでした。住んでうれしい、誇りに思える、そんな街に住めるのはとても幸せなこと。今、流山市にはそう思っている住民が多いようですが、実際の街の様子はどうなっているのでしょう。次回は流山の各駅の様子などをレポートします。




*今回の記事中の北部地域図書館とその近くの住宅街の写真は流山市役所に子育て支援策資料などとともにご提供いただきました。また住み心地その他の生活情報はまいにちせいぶつがくの小林ゆう様はじめ、取材でお目にかかった流山市民の皆様にご協力いただきました。ありがとうございました。



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