農地から住宅へ
急速に変わってきた街、千歳船橋
希望ヶ丘団地。中庭その他広々と作られている
新宿から小田急線の各駅停車あるいは区間準急利用で20分ちょっと。世田谷区千歳船橋は昭和30年代から宅地開発が進んだ街です。戦前からこの地に居住、現在は賃貸アパートを経営する方に伺ったところ、それ以前は農業、牧畜業が多かったそうですが、昭和30年前後にアパート経営に転ずる人が増加、それ以降、住宅化が進んだといいます。当初はシングル、カップル、それに東京農業大学の学生を対象とする小規模な木造アパートが多かったものの、昭和47年の日本住宅公団(現在のUR都市機構)の希望ヶ丘団地建造以降、大規模な団地、マンションなども建てられるようになり、その流れは今も続いています。特に2005年以降は年々乗降客が増えてきてもいます。
団地、マンションの多い船橋、
農地に小規模な一戸建ても目に付く千歳台
環八から南側を見たところ。通りの右手が船橋、左手が千歳台になる
では、実際の住宅街の様子を見ていきましょう。今回取り上げるエリアは地名で言うと、駅の東側、線路を挟んで両側に広がる経堂、線路の北側、環状八号線の東側の船橋、西側の千歳台、線路南側で環八の東側の桜丘、西側の砧になります。ただ、物件表記、商業施設などの利用状況で見ると、砧では環八沿いの一丁目、二丁目くらいまで。それ以外の砧エリアはどちらかといえばお隣の祖師谷大蔵圏です。
今回取り上げたエリア、本文中に取り上げた施設の位置を概念的に示したもの。位置、距離などは正確ではありません。下線は地名の意味です
希望ヶ丘団地内にあるショッピングエリア、サンヒルズ希望ヶ丘。日常の買い物ならここで済む
まず、駅北側の船橋エリアですが、ここは前述の希望ヶ丘団地の周辺に団地が集中しており、希望ヶ丘団地1800戸超、フレール西経堂700戸超と規模が大きいのが特徴です。そのため、その人口を見込んで周辺にはスーパー、酒屋、クリーニング店などが集まっており、駅からは10数分かかるものの、毎日の買い物には便利そう。小中学校や公園、緑道なども整備されており、のんびりした雰囲気のエリアです。
URの賃貸住宅、フレール西経堂。敷地内を烏山川緑道が通る
ちなみに希望ヶ丘団地は30平米から50平米の1K~2DKが多く、賃料は6万円台後半から。建物は古いのですが、高層階からは都心の夜景も望めるとか。適宜補修も行われてきています。それに比べると新しいフレール西経堂は60平米~70平米前後の2LDK、3LDKが中心で2LDKで賃料は15万円前後から。このエリアにはUR初のシルバーハウジング、エステート千歳希望ヶ丘もあり、賃貸のバリエーションは豊富です。
千歳台では新しい小規模な一戸建て、古い大きな農家、低層の集合住宅に畑が混在している
その反対側、千歳台は駅から距離があることはもちろん、環状八号線を横断する必要があることもあって、船橋エリア以上に農地が目立ちます。環状八号線沿いには少しずつマンションも見かけられますが、少し入ると農地の区画の一部を利用したような建売住宅の現場などもみかけました。
環八通り沿いで目立っていたスパ、スポーツクラブ、衣料品店の入ったビル。時々駐車場渋滞が起こっていることも
住宅が元々少なかったせいか、千歳台では環八沿いにスポーツクラブ、スパ、衣料品店が入った大型施設はあるものの、それ以外には目に付く商業施設がなく、コンビニもないため、買い物にはちょっと不便かもしれません。ちなみにこのエリアの環八沿いで目に付くのはファミリーレストランや自動車販売店など。自転車利用でランチに来るお客さんも多いようです。
環八沿いには大型商業施設、
高台にあたる桜丘は一戸建て中心のエリア
お隣祖師ヶ谷大蔵駅行きや渋谷駅行き、千歳烏山駅行きと複数のバス路線が利用できる千歳船橋
線路の南側、砧は千歳台よりは駅に近く、また、環八沿いにスーパー、ドラッグストア、カフェなどの入った大型商業施設があることもあり、千歳台に比べると住宅はかなり建て込んだ印象。中小規模の集合住宅、アパートなどが多くなっています。
千歳船橋駅から世田谷通りに向かう千歳通り。右手の高台の上が一戸建て中心の住宅街。通り沿いには桜並木
続いて線路の南側で、主に千歳通りの南側に広がる桜丘エリア。ここは千歳通りとの間は場所によっては急な坂になっており、基本的には一戸建てが中心のエリア。ところどころに農地もあり、直売所も点在、空が広い印象があります。ちなみに、私が生まれて初めて筍掘りをしたのはこのエリアの農家の庭でした。20年ちょっと前のことです。
桜丘の住宅街。きれいに手入れされた垣根のある家が多い点が印象的だった
住宅街の中で農地と並んで目についたのは、大手企業の社宅や寮、官舎など。都心勤務者には便利で住み心地の良い場所として選ばれているのでしょう。
駅南北に商店街、
昭和30年前後創業の店も残る
街に翻る黄色い旗には森繁久弥さんのイラストが。商店街の会館ショーウィンドーには森繁さんのエッセイの一説も掲げられていた
住宅街の次は駅周辺の様子です。まず、駅北側には千歳船橋商店街、通称ちとふな商店街があり、最近はこの中にある通りを森繁通りとして商店街活性化が進められています。俳優森繁久弥さんは船橋3丁目に長らく居住されており、世田谷区の名誉市民。現在、そのお屋敷はマンションに建替えられていますが、その前の通りを森繁通りが名づけられているのです。
烏山川緑道。ところどころにはベンチも置かれ、散策するには気持ちの良い道
かつての森繁邸は坂の上にあり、その下を現在は緑道になっている烏山川が流れ、田園風景が眺められたとか。森繁さんが見ていたであろう緑の風景はすでに一戸建てやURの団地などになっていますが、周辺には烏山川緑道はもちろん、都立千歳丘高等学校の北側から西側の遊歩道のように自然が残された場所もあり、散歩が楽しいエリアになっています。
千歳船橋駅南側にある千歳船橋商店街。駅前は小さな広場になっており、高架下にも店舗が
さて、その商店街ですが、駅周辺から環八までなどと三方にところどころ途切れつつも続いており、生鮮食料品店から定食屋、喫茶店などと飲食店まで一通りは揃います。目についたのは昭和のレトロ感のあるケーキ屋さんに、手作りのハム・ソーセージの店、全国的にも有名なコーヒー豆の店に和菓子店。昭和30年前後創業の店も多く、街の開発の歴史とも重なります。
駅の北側、細い通りに店舗が並ぶ千歳船橋参集会。入り口の和菓子店に風格を感じる
駅南側にあるのが千歳船橋参商会商店街。こちらにもスーパーあり、八百屋さんあり、お惣菜屋さんありと種々の店舗があります。古いアパートを利用したカフェなど、しゃれた雰囲気の店もありました。また、なぜか、こちらの商店街にも手作りソーセージの店があり、どうも、千歳船橋は肉屋の多い(肉好きが多い?)街といえそうです。
最後に気になる
小田急線千歳船橋の住宅事情を見ていきましょう。