医療費控除に関する間違いやすい点や誤解している点を区分してみると、以下の3点に集約されます。それは医療費控除の対象となるもの・ならないものに対しての質問、税務署に提出する書類に関しての質問、高額療養費や入院給付金を受けとったことに関しての質問です。ポイント別にみていきましょう。
こんなものも医療費控除の対象に?
医療費控除の対象になるものは拡大傾向にあります。平成20年の税制改正ではメタボ健診の導入にあわせ、メタボ検診もある一定の条件を満たした場合にのみ、医療費控除の対象となるものとされました。(受診時に、高血圧症、脂質異常症又は糖尿病と同等の状態であると認められる基準に該当し、引き続き医師の指導が行われた場合)医療技術の進歩という点からみると、レーシック手術(視力回復レーザー手術)・オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)やインプラント(人口歯根)なども医療費控除の対象となりますし、医療そのものに対する考え方の変化という観点からすると不妊治療や妊婦の定期検診も医療費控除の対象となります。医師等による診療・治療といってもさまざまなものが含まれるように進化している、ということになります。
税務署に提出する書類とは?
医療費控除をうけるためは医療費の領収を証したことを示す書類が必要となります。しかし、必ずしも領収書でなくてもOKです。たとえば、量販店などで日用品とカゼ薬を同時に購入した場合には、レシートにカゼ薬の箇所だけマーカーを引いて集計を かけておけば認められます。また、公共交通機関を利用した場合の通院費の領収書は手許には残りません。この場合には、表計算ソフトなどを利用して右記のようなものをとりまとめておくといいでしょう。通院日と通院費を照合できるようにしておき、小計額を実際の医療費の明細書に記入しましょう。しかし、健康保険組合から送られてくる「医療費のお知らせ」は医療費の領収を証したことを示す書類にはなりません。注意が必要です。
高額療養費や入院給付金を受けとった場合はどうなる?
高額療養費や入院給付金を受けとった場合には、支払った医療費から差し引いて、正味で支出した医療費の金額を算定することとなっています。高額療養費や入院給付金、出産育児一時金はいわゆる医療費を補てんする保険金等に該当します。そのため、支払った医療費から差し引くこととなっていますが、補てんの対象となる医療費ごとに、補てん金の差し引き計算を行えばいいのです。したがって支払った医療費の額を上回る補てん金の額があっても、他の医療費から控除する必要はありません。医療費を補てんする保険金等の差し引き計算は個別対応すると捉えておきましょう。
医療費控除の申告を行うと所得税が還付されるだけでなく、住民税の軽減にも役立ちます。還付税額をみて「これだけ?」と思わずに必ず申告手続きは済ませておくことをおすすめします。