皮膚・爪・髪の病気/床ずれ・褥瘡(じょくそう)

床ずれ(褥瘡・じょくそう)の症状・原因

床ずれは骨の上の皮膚、皮下組織の障害です。意識障害、寝たきり、脊髄損傷などさまざまな原因で発生します。床ずれは発生した時の体位により、特定の部位に発生します。早期発見と予防が大切です。症例画像を挙げながら解説します。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

床ずれはありふれた疾患で、医学的には「褥瘡じょくそう」と呼ばれます。
部に発赤した床ずれundefined皮膚の発赤があります

お尻の中央にある仙骨部に発生した床ずれ。この部位は仰向けで寝たきりとなると発生します。皮膚が赤くなっています。この初期の状態は治癒が期待できますが、褥瘡の治療がうまくいかないと進行して深い床ずれとなります。



床ずれの定義

日本褥瘡学会では床ずれを「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の組織の血流を低下させる。この状態が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。」と定義しています。

ただこれでは難しすぎるので、私個人がもっとわかりやすく表現すると「寝返りが打てない、もしくは寝返りを打つ必要がない状態で、骨に一定時間外力が働き皮膚、皮下組織の障害が発生したもの。」となります。

床ずれの原因

寝返りが打てない状態として、意識障害(脳梗塞、脳出血、急性アルコール中毒、薬物中毒、低血糖など)、長期間の寝たきり状態、全身麻酔の術後、関節拘縮で寝返りが制限される状態などがあります。寝返りを打つ必要がない状態として、脊髄損傷や脳梗塞後の知覚麻痺があります。痛みを感じないので寝返りを打たない状態となります。

床ずれの皮膚症状

床ずれが起きやすい部位の皮膚は、毎日観察を行う必要があります。床ずれの深さにより皮膚の症状は異なります。主な症状は次の通りです。

■発赤
皮膚に持続する赤みがあります

皮膚に持続する赤みがあります


 

初期の床ずれは持続する皮膚の赤みだけが症状です。この状態で治癒することも、進行して深い床ずれとなることもあります。






■びらん、水疱
床ずれが進行すると皮膚に水疱が生じたり、びらんが発生します。

■黒い皮膚壊死
周辺の発赤が認められundefined炎症が強い状態

周辺の発赤が認められ 炎症が強い状態 膿瘍が皮膚の下に認められました

さらに進行すると皮膚が壊死し、血行がなくなり黒色の皮膚壊死となります。周辺に炎症、膿瘍などを合併することがあります。









■黄色い壊死組織
壊死した黄色い組織

壊死した黄色い組織

黒い壊死した皮膚を切除しても、黄色い皮下の壊死組織が残ります。







などさまざまです。

床ずれの発生部位

いろいろな体位により、床ずれが発生しやすい部位があります。

■仰臥位(仰向けの姿勢)

・仙骨部
仙骨部の床ずれ

仙骨部の床ずれ


お尻中央で一番骨が突出している部位。約2/3の床ずれがこの部位に発生します。広範囲になると膿瘍、敗血症などの原因となります。炎症の拡大に注意しましょう。






・後頭部
後頭部に発赤した床ずれ

後頭部に発赤した床ずれ


大きな合併症なく治癒が期待できる部位です。ただし毛髪が消失し、禿になります。










・踵
踵の床ずれ

踵の床ずれ

この部位も大きな合併症なく治癒が期待できる部位です。








・肩甲骨部、背部(肋骨)
背部の床ずれ

背部の床ずれ


時として広範囲な床ずれとなるので治療期間が長くなってしまいます。







■座位(車椅子など座っている体位)

・坐骨結節
坐骨結節部の床ずれ

坐骨結節部の床ずれ


坐骨結節は、座った状態で一番下に骨が突出している部位で、左右2ヵ所あります。

車椅子の半身麻痺の方に発生します。車椅子の方は車椅子なしの生活は無理なので重症化することが多いです。


■側臥位

・大転子
大転子の深い床ずれ

大転子の深い床ずれ

大腿骨で一番外側に突出している部位。この部位も簡単に深部に進行し、膿瘍を形成します。黒色の壊死した皮膚が生じた場合、早めに皮膚を切除する必要があります。







・外果(そとくるぶし)
外果(そとくるぶし)の床ずれ

外果(そとくるぶし)の床ずれ


この部位は合併症なく治癒が期待できる部位です。







・内果(うちくるぶし)
内果(うちくるぶし)の床ずれ

内果(うちくるぶし)の床ずれ


この部位も合併症なく治癒が期待できる部位です。






側胸部、耳介などです。

■腹臥位(うつぶせ)

・顔面
顔面の床ずれ

顔面の床ずれ


この部位も合併症なく治癒が期待できる部位です。









その他、耳介、乳房、膝、足指など様々な部位に発生します。


床ずれの合併症

■皮膚の炎症
組織反応としての炎症で、皮膚の赤みが生じますが、皮膚に常在する細菌が感染を合併するとさらに炎症が強くなります。

■浮腫
炎症反応の一つとして浮腫は生じます。体液が血管の外にでることで組織が膨張します。

■膿瘍
炎症が進行し、膿みが貯留すると、膿瘍となります。

■浸出液による体液喪失
壊死した皮膚を切除すると、浸出液が増大します。浸出液には水分だけでなく、蛋白質が含まれています。

■低蛋白血症
もともと低栄養の状態で床ずれは発生する傾向がありますが、浸出液があるとさらに低蛋白血症を助長します。

■発熱
炎症症状が全身に進行すると発熱、さらに菌血症を合併します。

■敗血症、ショック(血圧の低下)。
細菌感染が全身に拡大すると敗血症と呼ばれます。進行すると血圧が低下しショックと呼ばれる状態になります。この敗血症ショックにより死亡となる方もいますので、終末期医療では見過ごすことのできない病態の一つです。

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