女性が、夫の親を介護するのは、なぜ「当たり前」なのか?
これらの統計をみると「やはり女性の方が、介護に向いているから」と勘違いする男性もいるかもしれません。なぜ男性と比較しても女性ばかりが、「配偶者の親」を介護することになっているのでしょうか?その根拠は、女性が夫の戸籍に入り、夫の名字になることと無関係ではないはずです。
「夫婦は、婚姻の際、夫又は妻のどちらの姓を称してもよい」とされていますが、家制度の名残りで2005年(平成17年)の時点でも、96.3%の女性が改姓し、夫の氏を名乗っています。妻の名字になる男性(3.7%)と、妻の親を介護する男性の割合は、近似で極端に少ないことからも、同じ家制度の影響を受けていると推測できます。
どうして男性も、介護に参加しよう!という声がないのか?
確かに、男性が外で働き、女性は働ける環境がなく専業主婦として家の労働を一切引き受けていた時代ならば、育児に続いて、嫁いだ先の義父・義母の介護が「嫁の役目」という観念は、まだ役割分業として成立していたのかもしれません。しかし、今は、女性も外でも働くのが当たり前の時代。夫も家事や育児にも、積極的に関わることが奨励されています。育児にも大変さはつきものですが、その反面、我が子の日々の成長に向き合える楽しみがあります。そのため、父親の育児参加は、肯定的に広がりつつあります。しかし、介護に関しては、明るく楽しい要素が少ないためか、「男性も介護に参加しよう!」というキャンペーンは、ほとんど聞かれません。自分の親や、妻の介護ならともかく、妻の親の介護までが自分の身に降りかかることなど、想像すらしたことがない男性が大半でしょう。
婚活推進派は、「老後を孤独に生きる不安」や「孤独死の恐怖」を煽ることが多々あります。結婚しても解決にはならないことは、「結婚すれば孤独死は救われる?」で述べた通りですが、自分の「老後」よりも先に来るのは、夫の親の「老後」です。その介護を、嫁が引き受ける現実には、一切触れようとしません。