皮膚・爪・髪の病気/粉瘤・アテローム・脂肪腫

【症例画像あり】粉瘤(ふんりゅう)の治療法・予防法・再発防止法

【症例画像あり】粉瘤の治療法は、外科的な摘出手術です。炎症期は抗菌薬を使用し、約1ヶ月後に炎症が落ち着いてから、摘出することが多いです。線1本の傷跡が残るため、小さいうちに早めに治療することをお勧めします。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

粉瘤の根本的治療法は外科手術のみ

粉瘤(ふんりゅう)undefined発赤、腫脹がみられます

粉瘤(ふんりゅう) 発赤、腫脹がみられます

基本的にすべての粉瘤の治療法は手術です。
  • 自然治癒しないこと
  • 徐々に大きくなってしまうこと
  • 感染すると炎症で痛み、発赤、腫脹が生じ治療が必要となること
  • 薬で治療は不可能であること
が理由として挙げられます。

手術をせず経過をみるという選択もありますが、数年すると大きくなるので、最終的に手術が必要となることがほとんど。取り出す粉瘤が大きくなる分、手術の傷も長くなってしまうので、結果的に患者さまにもデメリットが大きくなります。皮膚科、形成外科以外の科の医師で手術を勧めない方もいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。

悪性の可能性は低いとはいえ、病名を確認するためにも摘出して病理検査を行うことが大切。手術の方法として、くりぬき手術、摘出術の2つのどちらかを選択します。健康保険が適応でき、手術費用は概ね3割負担の健康保険で2万円程度。部位、大きさにより多少の費用の増減はあります。通院期間は外来で1週間、3回ほどの通院で、予約制となります。
 

炎症期の粉瘤の治療法

粉瘤が炎症を起こしてしまった場合、まず、抗菌薬、鎮痛薬の投与を行います。化膿している場合、粉瘤の一部を切開し膿を排出する応急処置を行います。この応急処置(切開排膿といいます)から1ヶ月程度時間をあけて、根治的な摘出術(完治術)を行います。

炎症が起きた状態で摘出術を行うと、取り残しのリスクがあがり、再発してしまう恐れがあるからです。
 

粉瘤の根治手術のメリット・デメリット

■粉瘤のくりぬき手術
比較的小さな粉瘤の場合に有効な手術。長所は健康保険の適応があること、病理検査ができること、手術時間が短いこと。短所は皮膚がくぼんだり、隆起したりする場合があること、まれにケロイドとなることです。(傷跡が数年間にわたり赤くなり隆起したままの状態が続くこと。痒み、痛みを伴う場合は耐え難い状態となります。)

■粉瘤の摘出術
小さな粉瘤から大きな粉瘤まで治療可能な方法。長所は健康保険の適応があること、病理検査ができること、皮膚のくぼみや隆起はほとんどないこと。短所は瘢痕(傷跡)が残ること。
 


 

実際の粉瘤手術の方法

摘出術を施行する予定の粉瘤

摘出術を施行する予定の粉瘤を決める

頭部に約1cmの粉瘤がある場合を例に、実際の手術の経過をご説明しましょう。

このような場合は、紡錘形に2mm程度の余裕をみて、皮膚の切除範囲を決定します。これに沿って、皮膚の下にある球状の粉瘤を丸ごと摘出します。







 
手術終了時

手術終了時 直線状の瘢痕が残ります

粉瘤摘出後は、直線状に皮膚を縫合します。

この場合は髪の生え際ということもあり、あまり目立ちませんが、手術直後はかなりはっきりとした傷が残ってしまいます。








 
粉瘤の内容

粉瘤の内容 角質物質が認められる

少し見づらいかもしませんが、取り出した粉瘤は右図のような形状です。角質物質が中に詰まっていたことがわかります。









 
術後2週の傷跡

術後2週の傷跡 あまり目立ちません

術後2週間後の状態。ここから髪の毛が生えてくれば、傷跡はほとんど目立たなくなります。










どの方法を選択するにしても粉瘤の形、大きさ、部位などを見てから治療法を患者さまと直接相談する必要がありますので、信頼のおける病院を受診してください。ただし大きな病院ほど外来が混み、短時間で治療法を決めるのが難しい場合が多いです。時間を空けてからもう一度受診してその時に治療法を選択することや、セカンドオピニオンを考慮するのもよいいでしょう。

 

粉瘤の予防法

一部の粉瘤は外傷が原因なので、ケガを避けることが予防につながります。一方でほとんどの粉瘤は原因不明なため、有効な予防法はありません。小さな時期に手術で治療することが大切です。
 

粉瘤の再発防止法

炎症の時期に摘出術を行うと、嚢胞がわかりにくく、再発リスクが高まります。まず炎症の治療を行い、感染が落ち着いてから根治的な摘出術を行えば、再発はほとんどありません。

私の勤務する病院での手術成績では、再発率は0.2%以下となっています。
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