食と健康/旬・季節の食事の食べ方・レシピ

春は苦みで冬に貯めた老廃物を出そう(2ページ目)

「春は苦みを盛れ」と言いますが、食養生では苦みのある山菜は、冬の間に貯めた毒を出すといいます。科学的に見ても、有効な成分を含んでいるようです。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

注目される山菜の有効成分

ここでは、スーパーなどでも手に入りやすい山菜の特徴と、最近注目されている有効成分などについてご紹介しましょう。

フキノトウ
雪解け前に雪の中から摘まれるフキノトウ。早春の味わいです。
・フキノトウ
キク科フキ属。フキの花のつぼみで、雪解けをまたずに雪の中からつぼみをのぞかせる姿がなんともけなげで、また命の息吹を感じさせ、おいしさもひとしおです。独特の香りとほろ苦さがあります。天ぷらや、お味噌汁の実、和え物に。

栄養的には、β-カロテン(390μg)、ビタミンC(14mg)、ビタミンE(3.3mg)やカリウム(740mg)が含まれ、注目される成分としては、抗酸化作用や血糖値抑制作用のあるケルセチンや、免疫機能を強化するというわれるケンフェロールなど、様々な抗酸化成分を含んでいます。ケルセチンは、タマネギにも含まれ、有害物質を捕まえて毒性を防ぐ成分としても注目されていますよね。

また山菜のサイトによりますと、試験管レベルの研究ですが、フキに含まれるフキノンという成分は、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンや、鼻詰まりの原因となるロイコトリエンを抑制する作用があるといわれ、花粉症対策への展開が、今後は期待されているようです。

ウド
これは、少し緑がかかった山ウド。
・ウド(独活)
ウコギ科タラノキ属の多年草。約2~3mの高さまで成長し、「ウドの大木」などとよく使われる言葉ですが、ウドは木ではありません。芽と茎の部分を食用とします。

日当たりのよい露地に自生するものを山ウド、日の当たらない地下で軟化栽培したものを白ウドと区別しています。山ウドは白ウドよりもややアクが強く、白ウドは水でさらす程度で生食できます。天ぷらや、きんぴら、和え物、佃煮など広く使えます。

漢方では根を「独活(どっかつ)」と呼び、解熱や神経痛の緩和に用いられるそうです。注目される成分としては、香り成分であるジテルベンが、自律神経系に働き、疲労回復や不安定な気分を落ち着かせる作用があり、また抗酸化作用の高いケルセチンやクロロゲン酸なども含まれています。

農林水産研究情報センターのホームページによると、東北農研(畑地利用部・畑作物栽培生理研究室)の研究では、うどに含まれているクロロゲン酸は、高い抗酸化性とラジカル消去活性をもち、クロロゲン酸含量と抗酸化性には高い相関があり、その量は緑葉で最も多いことが分かっています。

こうした有効成分は、茎よりも葉に多く含まれ、自生栽培のものの方が多く含まれています。またウドに含まれるクロロゲン酸の調理(天ぷら)による損失は少ないそうです

*研究室では、ウドの抗酸化成分が人体に及ぼす影響については、動物実験によるデータが必要であるとしています。

コゴミ
クルクルと渦巻き状になったユニークな形のコゴミ。
コゴミ(別名カンソウ、ガンソウ)
オシダ科クサソテツ属。渦巻状に丸まった幼葉を、おひたし、サラダ、ゴマ和えなどの和え物、天ぷらなどにして食べます。アクがなく、ほのかな甘味もあり、たいへん食べやすい山菜です。

β-カロテン(1200μg)やビタミンC(27mg)も多く含まれており、また強い抗酸化作用のあるクロロゲン酸と、新規物質として注目されるL-O-カフェオイルホモセリンが含まれています。

東北農研(畑地利用部・畑作物栽培生理研究室)の研究では、「コゴミを食した際、体内の活性酸素の消去が期待される他、活性成分を食品に添加し食品の天然由来の酸化防止剤として期待される。けれどもこの成果は農産物としての活性酸素消去能を示しているため、摂食後の代謝、生体内での機能については未解明である」としています。

タラノメ
ホクホクとした食感で、おいしいタラノメは、昔から糖尿病にきくと言われていました。
タラノメ
ウコギ科タラノキ属、タラノキの新芽。ほろ苦さが特徴。栄養学的には、他にβ-カロテン(570μg)やビタミンE(2.6mg)が多く含まれています。

タラノキの樹皮は民間薬として健胃、強壮に用いられ、糖尿病にもよいと言われていますが、科学的にもタラノメの苦み成分であるエラトサイドという成分は、血糖値上昇抑制作用があることがわかっています。

また秋田県総合食品研究所(応用発酵部門・素材開発担当)によりますと、ガン細胞増殖抑制機能のスクリーニングを行い、 タラノメの機能性として、アポトーシスを誘導し、ガン細胞を殺傷する活性があったことを報告しています。(ただしタンパク質であるので、タラノメの加熱により活性は低下する)。

春の味わい、タケノコ菜花にもこんな働きが…。


アクや香りにこそ、注目の成分が含まれる

山菜が蔬菜(栽培される野菜)になりにくかったかった理由の一つはアクが強いことが揚げられるでしょう。けれども、ここでご紹介したように最近の研究では、そしたアクや苦みなどの成分の中にこそファイトケミカルなど、活性酸素除去などに有効な成分が多く含まれていることもわかり、山菜が見なおされています。

けれども、こうした機能性は、まだ食べ物としての有効性はどうなのか、またどれだけ食べればいいのかなど、解明されていませんので、むやみに効能を期待して食べずに、あくまで季節の恵みとしていただきましょうね。

*β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、カリウムの数値は、100g中あたりの含有量です。

次のページで、山菜を楽しむときの注意事項ご紹介しましょう。>>
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