ネットオークションの収入も確定申告が必要?
ネットオークションで売ると、代金が手に入ります。1年を振り返ってみると、結構なお小遣いになっているような気がします。「収入に対しては税金がかかるんだよなぁ」
「じゃあこの収入に対して確定申告をしなくちゃいけないの?」
「そして税金を払う?」
「でもそんなことしている友だちまわりにはいないけど」
ネットオークションで得た収入は、どのように考えればよいのでしょうか?長谷川会計事務所の長谷川 暢彦先生に指導していただきました。
家にある物を売っても税金がかかりますか?
長谷川:家にあるものを販売する場合は、 生活用動産扱いで非課税となります。堀切:え?家にあるものをいくら売っても税金かからないのですか?
長谷川:いえ、そういうことではありません。「生活用動産扱いで非課税」とは、ご自身または家族が生活のために使用する、家具、什器、衣服などを売却した場合です。1個または1組の価額が30万円を超える貴石、貴金属、真珠、べっこう、七宝製品や書画、骨董、美術工芸品は課税されます。
堀切:なるほど~いわゆる高額商品は課税されるのですね。ちょっと注意が必要ですね。
どれくらい儲かったら税金がかかりますか?
長谷川:給与所得者か、そうでないかで変わってきます。給与所得者については、給与所得以外の所得が20万円以下の場合は確定申告は不要です。他に、収入のない主婦や学生の方については儲けたお金が38万円以下であれば、確定申告は不要です(詳しくは税務署等にお尋ねください)。
堀切:給与所得者って、サラリーマンとか、給与をもらっている人ですね。サイドビジネスとか、お小遣い稼ぎの場合は、20万円を目安に考えるとよいのですね。
長谷川:生活用動産を売って儲けたお金も非課税です。
堀切:生活動産以外で20万円ですか、でも年間で考えると結構それくらい売っているようなのですが。
【参考】株取引、ネットオークションetc. サラリーマンの副業にかかる税金
税金は売上で計算する?利益で計算?
長谷川:生活動産ではないものを販売するということは、その商品に対する経費や仕入代金がかかります。税金の計算は売上代金から仕入代金と必要経費を差し引いた金額(所得といいます)を元に計算します。
経費として認められるものは?
●租税公課
税金(所得税、住民税、延滞税、住宅用の固定資産税等は認められません)
●通信費
電話料金、プロバイダ料金などインターネットに関わるもの、ハガキ・郵送費
●広告宣伝費
ホームページ作成費用やメールマガジン配送料金など
●図書費
勉強のために購入した書籍、雑誌など
●支払手数料
報酬受け取り等、取引にかかる手数料 や銀行手数料等
●家賃・水道光熱費
自宅と兼用の場合は、割合を決めて一部を申告します
●旅費・交通費
取材や出勤など移動するときの交通費
●消耗品費
事業に必要な事務用品で、10万円未満のもの
●給料・賃金
従業員への給与、賃金など
●宅配料
商品の梱包、発送費用
●貸倒金
商品代金が振り込まれなかった場合などの費用
※判断に困ったときなど、詳しくは税務署等にお尋ねください
※すべて、オークションに直接要した経費のみです(厳密にいえば、趣味でインターネットをやっている場合は按分しないといけません)
【参考】サラリーマンの副業で「必要経費」とできるもの
オークションで儲けたのは年間で5万円程度。これなら申告の必要はない?
長谷川:ないと考えてよいでしょう。ただし、給与所得者、専業主婦、学生以外の方ですでに確定申告をしている方は、その申告に、オークションで儲けた分を含める必要があります。会社に副業がばれることはありますか?
長谷川:所得(売上代金から仕入代金と必要経費を差し引いた金額)が20万円を超えた場合、確定申告が必要になります。確定申告をした場合、それをもとに住民税も課税されることになります。住民税は確定申告をすると自動的に区役所、市町村役場に回送され、会社に天引き徴収額が通知されることになっています。この際に所得ごとの内訳金額も報告されるために勤務先にわかってしまうこととなります。
ただし、確定申告書第二表に給与所得以外の住民税の徴収方法を選択する欄があります。給与所得以外の住民税の徴収方法で、「□自分で納付(普通徴収)」にチェックをつければ、副業分の住民税については会社に報告が行かず自宅に届くこととなり、会社にはわかりません。
堀切:会社に内緒で副業が営めるというわけですね。
長谷川:はい、ただなにかの拍子に副業が会社にバレてしまうことがあるかもしれませんので、私はお薦めいたしません(笑)。
【参考】マイナンバーで会社員の副業がバレやすくなる?
副業(雑所得)としていたのですが、会社を辞め本格的にオークション収入で生活します。このときの申告などの手続きは?
長谷川:事業所得として申告をする必要が出てきます。まずは税務署に開業届を提出します。これは会社組織(法人)か、などは関係ありません。個人で事業を行う場合も開業届を提出する必要があります。
事業所得の申告について
長谷川:記帳の義務が生じます。帳簿を用意して取引の内容を記帳してください。領収書なども保管します。青色申告と白色申告があるようですがどちらがよいですか?
長谷川:青色申告より白色申告のほうが簡単ですが、青色申告のほうが青色申告特別控除(最大65万円)や青色事業専従者給与、30万円未満の少額減価償却資産の必要経費算入、赤字が出た場合の繰越などの特典があります。節税のためには青色申告がよいでしょう。【参考】白色申告の記帳が2014年1月から義務化
パソコン会計や、電子申告について
長谷川:青色申告(65万円の青色申告特別控除を受ける場合)は複式簿記で記帳しなければなりません、堀切:え?複式簿記ですか
長谷川:複式簿記は経理の知識が必要なため面倒なものですが、経理の知識があまり無くても取引内容を選ぶだけで帳簿が作成できるソフトも出ています。パソコン会計の活用も検討してみましょう。
また、2004年から全国的に電子申告(e-Tax)が出来ることとなりました。
堀切:申告は、持参して提出と、郵送と、インターネットを利用した電子申告の3種類になったのですね?
長谷川:はい。税務署に電子申告・納税等開始届出書を提出すれば、翌月末にe-taxソフトが届きますのでこちらも利用してみてください。ただし、電子証明の入った住基カードの取得、ICカードリーダが必要ですので、初めて申告する方やパソコンに不慣れな方は、国税庁のホームページ上で入力をして、それをプリンタで印刷して提出する方法をお勧めします。
【参考】確定申告書の提出先はどこ?管轄の税務署を調べる方法
長谷川先生からのアドバイス
長谷川:個人で行う場合は、給与所得があるか、ないか、を まず考えましょう。そして税金上の所得とは「売上代金から仕入代金と必要経費を差し引いた金額」です。その所得が、給与所得がある場合は20万円を超える場合は申告の必要が出てきます。事業として行う場合で、不明な点や不安なところがある場合は、税理士や税務署に相談をしてください。曖昧な知識で判断するのは危険です。
【取材協力】
長谷川会計事務所
所長税理士:長谷川 暢彦 (1958年生)
会長税理士:小宮 茂 (1924年生)
スタッフ:男性2名 女性3名 計7名
TKC全国会 書面添付推進認定事務所
創業・経営革新アドバイザー認定事務所
所在地:
〒111-0056 東京都台東区小島2-14-5 毛利ビル204
03-3861-9561 hase-ao@tkcnf.or.jp
業務内容:
税理士会計業務全般、経営指導、業務事業承継対策、OA化指導業務
会社沿革:
1987年 3月 税理士登録
1988年 3月 TKC入会
1990年11月 法人設立(FP業務開始)
1998年 3月 所内LAN導入
1999年 4月 インターネット・ホームページ開設
2000年11月 国税庁電子申告実験に全国トップを切って参加
この間、下記の役職を歴任
・TKC全国会 システム委員会
・法人決算申告システム開発委員会 委員長
・勘定科目内訳システム開発委員会 委員長
・電子申告システム開発委員会 委員
・OMS普及委員会 委員
・FMS開発委員会 委員
・業務日報・スケジューラ開発委員会 委員
・TKC全国会 創業・経営革新支援委員会 委員