猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ;FIV) ☆
■症状このウイルスに感染すると、猫の免疫を低下させ様々な病気にかかりやすくなるなど、人のエイズに似たような症状を示すので猫エイズとも呼ばれます。しかし、人のエイズとは全く違うウイルスによる病気で、人や犬に感染することはなく、人のエイズウイルスが猫に感染することもありません。
猫免疫不全ウイルスに感染していても、発症しない限りは無症状キャリアとし発症猫とは区別されます。感染して1年程度はリンパ腺が腫れたり、下痢が続いたり、細菌感染などを起こすことがありますが、ほとんどの猫が無症状キャリアとして平均5年以上安定した状態で過ごします。その後、発症するかどうかは猫の生活環境や健康状態に左右されることが多く、発症することなく寿命を全うする猫もいます。
症状が進んだ猫でよく見られるのは口内炎で、口臭、ヨダレが目立ち、食事を食べると口の中を痛がります。病気が進行するとやせ細り、下痢が続いたり、病気やケガに対しての抵抗力がなくなっていきます。猫免疫不全ウイルス感染症は、急性の感染症ではないので若い猫が急に具合が悪くなって死亡することはなく、発病してもそれぞれの症状に合わせた正しい治療を続けていけば、かなり長く延命することも可能です。
■感染経路
猫免疫不全ウイルスは感染しにくいウイルスで、感染猫と激しい血を見るようなケンカをしなければ感染しないことが多いとされています。母猫がエイズキャリアでも感染する子猫は少なく、もし同居猫がエイズキャリアで他の猫と舐め合ったり、食器、トイレを一緒に使っても感染しにくいといわれています。
■ウイルス検査
簡易キットを使い血液検査(抗体価検査)で簡単に調べることができ、陽性(+)だと感染、陰性(?)だと感染していません。ただし、もし母猫が猫免疫不全ウイルスキャリアだと、子猫は約6ヶ月頃まで移行抗体が残っていてこの抗体が検査に反応して(+)と出ることがあります。この区別は簡易キットではできませんので、検査センターに血液を送りPCRという遺伝子検査で調べます。
猫白血病感染症と複合感染を起こしている猫が多く、両方が陽性である場合は発症率が高くなります。
■予防
陰性であれば室内だけで飼育し、不妊・去勢手術を行います。もし陽性とわかったら、ケンカを防ぐために早急に不妊・去勢手術を行い、室内だけで飼いましょう。陽性猫と同居していても、猫同士が大喧嘩をしない限り感染する危険性は少ないです。
■ワクチンの効果
このワクチンは抗体検査で陰性でなければ接種することができません。
ワクチンで約7割の猫の感染が防げます。
猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ;FIV)ワクチンの有効性
毎年ワクチンを接種する場所を変えましょう |
感染するリスクが少ないから接種する必要がないのでは?
猫免疫不全ウイルス感染症は、どちらかというと感染しにくい病気です。一緒に食事をしたりグルーミングをしあった程度では感染しないウイルスなので、もし猫免疫不全ウイルス感染症陽性の猫と陰性の猫が同居していても、噛み合って出血するほどのケンカなどをしなければ、ほとんど感染の心配がありません。まして完全室内飼いで、他の猫と接触する可能性がなければなおのこと、このウイルスに感染することは考えられません。それでももし獣医師がこのワクチンの必要性を語って、接種を勧めるのであればその理由をきちんと確認し、飼い主さんが納得してから接種を決めてください。ワクチン接種の回数が増えることに不安
現在発売されている猫免疫不全ウイルス感染症ワクチンは、猫免疫不全ウイルスが陰性であると確認された猫に初年度3回、その後毎年1回、他のワクチンとは別に単体で接種しなければ効果がないとされています。ビタミン注射でも肉腫を生じるかも知れない猫の身体を考えると、そんなにたくさんのワクチンを何回も接種してよいのだろうかと不安に思います。また接種しても免疫力がつくのは約7割で、すべての猫に効果があるわけでないそうです。日本で一番多いタイプに適合していない
猫免疫不全ウイルスには2つの型があります。このワクチンはその中のサブタイプAとDに対しては70%以上、サブタイプBに対しては「Bに対しても効果あり」としか報告されていません。サブタイプというのはワクチンの亜群のことで、日本では北海道がA、関東から関西がB、九州にDが多く、国内での割合はAが20~30%、Bが60~70%、Dが10%と報告されています。その日本で一番多いサブタイプBへの効果が不透明な部分を考えると、果たして今このワクチンを接種してどれだけの効果があるのか?と疑問に思います。