シモキタの愛称で知られる下北沢は渋谷、新宿から至近な地にありながら、どちらとも違う、独自の雰囲気で知られています。しかし、活気ある駅周辺から少し歩くと、緑の多い、静かな住宅街。遊びに行く街ではなく、住む街としての下北沢の魅力を見ていきましょう。
猥雑な活気ある商店街が
多くの人を惹きつける
下北沢と周辺の関係は?
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小田急線と京王井の頭線が交差、三軒茶屋へは茶沢通りで結ばれている。駅名は下北沢だが、地名は代田、代沢 |
下北沢駅南口。2013年3月に小田急線が地下化されたため、駅は現在の位置に移動した。過去の駅は高架上のあり、写真右手に降りてくる形になっていた(クリックで拡大)
新宿から小田急線で7分、渋谷から京王井の頭線で4分。人気ターミナルから伸びる人気2沿線が利用できる下北沢は言わずと知れた全国区レベルで住んでみたい街のひとつ。駅を降りると、どの方面に出ても、幅2mほどの細い道がぐねぐねと続き、平日はまだしも、休日には自転車での相互通行もままならぬほど。商店街などでは安全性の問題も取りざたされているものの、この狭い路地にひしめき合う、小さな店の活気こそが、下北沢独特の雰囲気を生み出しているのです。
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戦後すぐの闇市が発祥という北口駅前市場。雑多な店がひしめく、独特の雰囲気(2006年時点の写真) |
駅周辺にはいくつもの商店街がありますが、それぞれ、違う表情を持っているのが、下北沢の特徴。特に他と違う印象を受けるのは戦後の闇市を思わせる北口駅前市場でしょう。80年代にブームを呼んだ衣料品店「アメリカ屋」や魚屋、八百屋、昼から酒が飲める店などがあり、名所のひとつでもあったのですが、2013年の小田急線地下化で半分ほどが無くなり、今後2~3年ですべてが無くなる予定になっています。
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飲食店の中に銭湯などもある下北沢一番街 |
ファッション雑貨が多いのは南口商店街。飲食店が多いのは東通商店街ですし、本格的な居酒屋などが揃い、お酒好きに愛されているのは一番アーケードだとか。商店街ではありませんが、2004年に北口にオープンした東洋百貨店にはハワイアンジュエリー、古着、帽子に風水グッズ、アフリカ雑貨、ロックバンド向け衣料(?)など雑多な店が集まり、その猥雑な雰囲気はまさに下北沢そのものとも。路地を曲がったら何があるだろう!というわくわく感が、この街の魅力というわけです。
身近で演劇、音楽が楽しめる、
文化度の高さも魅力
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下北沢が演劇の街となるきっかけとなったザ・スズナリ。劇場前には個性的な店の多い飲み屋街も |
雑貨店や古着屋さんと並んで、この街の雰囲気を大きく印象づけているのが劇場とライブハウスです。この街には1981年にオープンしたザ・スズナリをはじめ、本多劇場、駅前劇場、『劇』小劇場、本多スタジオ、しもきた空間リバティーなど民間の劇場のほかに、世田谷区が運営する北沢タウンホールなどもあり、街角では各劇場のポスターも目につきます。毎年2月には地域の8つの劇場で30余の劇団が参加しての演劇祭が行われ、4万人以上の観客が訪れるそうです。
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音楽関係者が多いせいか、下北沢では楽器を持って歩いている人をよく見かける |
また、音楽好きが集まる場にも事欠きません。LOFTや屋根裏といったライブハウスに、ジャズ喫茶、中古CDやレコードショップ……。こちらも7月には北沢音楽祭が開かれ、北沢タウンホールを中心に音楽が溢れる5日間となります。
こうした、演劇人、音楽関係者が多いこともあり、この街は夜更かしです。舞台やコンサートが終わった後でも楽しめる、飲食店、カフェ、バーがあちこちにあり、朝まで営業の店も少なくありません。昼間は若い男女や主婦が買い物に集まり、夜は安くておいしい食事を目当てに学生、サラリーマンが集うことを思うと、この街には3つの表情があるのです。
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シモキタで目立つお好み焼き店。昔から人気は衰えない |
ちなみに、焼肉、フレンチにエスニック、カフェ、和食と豊富な飲食店が揃う下北沢ですが、他地域より目立って多いのが、お好み焼き屋さん。特に広島焼きの店にはいつも行列ができています。最近は女性でも入りやすい雰囲気のラーメン屋さん、民家を改造したレストラン、カフェなど女性を意識した店が増えてもいます。
ほんの数分歩けば住宅街、
緑道にせせらぎ、由緒ある寺社も点在
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桜の名所、北沢川緑道。季節にはござを敷いて宴会をする人たちで賑わう |
こうした活気ある駅前からほんの数分、茶沢通りを渡る、あるいは三軒茶屋方向に歩けば、そこは静かな住宅街です。一戸建てやアパート、低層マンションなどが建ち並び、通り以外は交通量もあまりありません。住宅街の中には花見の名所として有名な北沢川緑道や商店街を練り歩く神輿で有名な北沢八幡宮、大銀杏で知られる森巌寺なども点在。ここが自然や歴史に恵まれた場所であることを認識させてくれます。
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代沢は代田と北沢から一字ずつとってできた地名。そのため、沢といいながら、実際には高台の部分も |
ことにかつて明治の作家たちが居住し、かつて総理を勤めた竹下登邸もあった代沢周辺は東京に詳しい人には有名なお屋敷街で、今も高台には見事な日本建築の家屋や竹林、洋館などを見ることができます。それ以外の地域でも、道が広く取られているため、日当たりの良い区画が多く、住環境としてはウレシイ場所といえます。
では、気になる住宅の相場はどうなっているか、次ページで見ていきましょう。