ハードル1 「正社員になりたい理由」と企業の期待不一致
正社員の仕事には責任と裁量がついてくる
「年も年だし、将来を考えて、そろそろ安定して働ける会社に落ちつきたい」が本音かもしれません。でも、この理由だと採用選考で、「御社の○○事業でこれまでの経験を生かして◇◇を実現したい」「チームリーダーとして5人のメンバーをまとめてきたのだが、会社が倒産してしまって転職先を探している」という応募者とバッティングした場合、企業から見てあまり魅力的に映らないですよね。
企業はたいてい正社員に、営業目標をもって会社が利益をあげるのに貢献してほしい、いずれ管理職としてマネジメントを担ってほしい、地方に赴任し事業所の立ち上げを頼みたい……など、裁量と責任と期待しています。転職動機が企業の期待とずれていると、採用選考を進むことは難しくなります。
逆にいえば、「派遣スタッフだと契約の範囲でしか仕事ができない。多少大変になっても、もっとやりがいのある仕事がしたい!」という人は正社員転職が向いています。
ハードル2 「派遣先=応募先」だと難しいこともある
派遣スタッフが転職先を探す場合、2つの傾向があります。これまでに経験した仕事や業界の延長で探すケースと、憧れの仕事に就こうとするケース。どちらの場合でも、前述のように派遣先の正社員が大したことなさそうに見えることもあり、派遣先と同じような規模や業態の会社を応募先に選ぶことが少なくありません。ところが、ここで苦戦することが多いのです。自分の方が優秀に見え、そのように周囲から評価されていたとしても、実は役割が違うのです。そのため、派遣スタッフとして優秀だからといって、正社員として優秀だとは評価されずなかなか採用されません。
とくに人事制度が整っている大企業では、派遣の仕事、契約社員の仕事、正社員の管理職の仕事などと役割が分かれています。35歳の派遣スタッフが正社員になるためには、早い人ではすでに係長や課長になっている35歳の正社員と同等の能力や将来性が求められます。
ハードル3 「さまざまな職場を経験」がデメリットになることも
派遣という働き方のメリットとして、「さまざまな職場やいろいろな仕事を経験できる」という点をあげる方がいます。会社を見る目が養われ、職場適応力が高まり、交友関係が広がっていく。確かにメリットがたくさんあります。しかし、正社員転職を考えた瞬間に、このメリットがデメリットに転じます。というのも、企業は正社員の採用選考では、転職を繰り返してきた人を好まない傾向があるからです。企業は辞めずにずっと働いてくれる人を採用したいと考えています。派遣スタッフの場合、仕事内容によっては派遣活用期間の制限もあることから、マジメに働き高く評価されてきたとしても、正社員経験者と比べると職務経歴が転々とした印象を与えがちです。
正社員経験者と同じ採用選考を進むためには、ひとつの職場にずっといた正社員よりも、さまざまな職場の経験を通じて何ができるようになったのか、派遣スタッフならではの一貫性のある「ストーリー」をつくることが大切です。
ハードルの乗り越え方は次ページにて。