正社員転職のハードルは高い?低い?
出所:日本人材派遣協会「2009年度派遣スタッフWebアンケート―1万人調査―」
現在、派遣で働く人たちの中には、このまま派遣で働き続けたいと思っている人も、いずれ正社員になりたいと考えている人もいます。
正社員になりたいと考えている派遣スタッフは全体の約4割(出所:日本人材派遣協会「2009年度派遣スタッフWebアンケート―1万人調査―」)。その理由は、「安定して働けるから」「やりがいのある仕事ができるから」「収入が高いから」など人それぞれです。
正社員になるために企業の中途採用募集に応募すると、ずっと正社員として働いてきた人と同じ採用選考で競い合うことになります。企業は人物や能力の絶対評価というよりも、応募者の相対評価で採用選考を行うため、正社員として働いてきた人の方が高く評価されやすいもの。
事務系の派遣スタッフが、正社員募集の採用選考にのぞむ時のハードルがどこにあるのか、そのうえでどうすれば正社員になれるのかを、今回(現状編)と対策編「派遣が正社員転職を勝ち取る3つのポイント」にわけてまとめていきます。
「正社員よりも派遣の方が優秀」は一面的な見方
「派遣先の正社員よりも自分たち派遣スタッフの方が、仕事をたくさんしているし、優秀だ」こう感じたことはないでしょうか? 確かに派遣スタッフの中には、給料は安いにもかかわらず正社員以上に会社にとって高い貢献をしている人がいます。正社員の中にも、待遇に見合うだけの働きをしない人がいます。このような理不尽な実態が一部にあることはまぎれもない事実です(この理不尽さは大きな問題ですが、派遣労働や有期労働の規制強化として議論されている構造的な問題なので、今回、このコラムではこれ以上ふれません)。
しかし、あえて厳しいことをいうならば、派遣スタッフの勘違いである場合も中にはあるのです。
かくいうわたしも社会人経験が浅い頃、正社員の上司よりも派遣スタッフの方が能力が高いと感じていました。今も優秀な派遣スタッフのツボをおさえた仕事ぶりには頭の下がる思いで、尊敬しています。けれども社会人経験を重ねるうちに、かつてのわたしは正社員の仕事を一面的にとらえた偏った見方をしていたのだと気づきました。
ポイントは、正社員は職場のフロアだけで仕事をしているわけではないということ。正社員が担っている収益への直接的な貢献やパートナー企業とのやり取り、他部署との連携の多くは、取引先や会議室などフロア以外で行われます。しかもその内容は、達成するために努力が必要だったり、意思決定が難しかったりします。正社員の上司や先輩が能力を発揮している瞬間に、わたしが立ち会っていなかっただけだったのです。
派遣スタッフは決められた仕事を担当しています。決められた範囲で、締切に間に合うように関係者と上手くコミュニケーションをとって仕事を進める。フロアの中では一番の働き者かもしれません。けれども、会社を運営していく経営者の立場からすると、収益には直結しないアシスタント的業務や責任の少ない限定された業務を担っていることが多いのも事実。
正社員の方が派遣スタッフよりも優秀ということではなく、派遣スタッフとして仕事ができるということと正社員として仕事ができるということは、質がまったく違うのです。
では、派遣スタッフから正社員に転職するときに具体的にどんなハードルがあるのか? 次ページにてとりあげます。