正社員転職のハードルを乗り越えるには?
派遣スタッフの中には、このまま派遣として働くことを希望している人が相当数いる一方で、正社員への転職を考えている人も4割います。希望どおりの正社員転職がかなわず悩んでいる派遣スタッフがいるのも現実にあります。「派遣の正社員転職をはばむ3つの壁」では、その原因として次のハードルがあることをまとめました。
- ハードル1 正社員になりたい理由と企業の期待が一致しない
- ハードル2 「派遣先=応募先」だと採用選考を突破するのが難しい
- ハードル3 正社員の選考では「1つの職場が長い」ことが重視される
今回は、正社員への転職を希望している方を対象に、ハードルを乗り越えて、正社員に転職するヒントを考えてみます。
正社員への転換ルートは2種類ある
派遣スタッフから正社員に転職するにはどんな方法があるでしょう? あなたの周りで正社員になった人がいたら、その人の転職方法を思い出してみてください。転職サイトやフリーペーパーなどの求人情報誌を通じて転職した人もいれば、派遣先で正社員に登用された人もいるのではないでしょうか。そうなのです、正社員になるルートは2つあります。第1のルートは、転職サイトや求人情報誌、ハローワークなど転職希望者全員が利用可能な外部労働市場を通じたオープンな転職方法です。第2のルートは派遣先での正社員登用や、派遣先の上司や同僚の口ききによる縁故転職など一般には公開されないクローズドな転職方法。
正社員転職は、派遣先での正社員登用や縁故が有利
派遣スタッフから正社員になるためには、この第2のルートを積極的に使うことをオススメします。なぜならオープンな転職方法を選択すれば、正社員として高い実績のある人と採用選考で比較されます。しかも、本当はあなたの方が優秀でその募集にふさわしい人材だったとしても、採用担当者の中には、残念ながら、非正規労働者の能力に対して偏見がある人や派遣スタッフの受入れ期間について知らない人も存在する。派遣先の正社員登用であれば、中途採用の選考競争に巻き込まれずにすみますし、何よりもあなたのそれまでの仕事ぶりが評価されています。派遣という働き方には、派遣スタッフも派遣先も「合わない」と思ったら変更が可能というメリットがあります。2004年に「紹介予定派遣」が法的に認められたのも、派遣のこの試験雇用的な機能を強化するためでした。東京大学の玄田有史教授が行った正社員になった非正規労働者に関する研究でも、派遣スタッフは同じ職場(派遣先)で正社員登用される割合が、他の非正規よりも高いことがわかっています。
非正規労働者に占める派遣の割合は10%未満なので、派遣から正社員になる割合は他の非正規労働者よりも高い。出所:東京大学玄田有史「正社員になった非正社員」
まずは派遣先の上司や派遣会社の営業に相談
派遣スタッフとして自分にあう職場を見つけ、そこで仕事をがんばって、正社員にならないかと言われるのが理想です。特に企業の業績が好調で人材不足が顕著なときは、この可能性が高まります。ただし、正社員への登用制度がなかったり、契約社員への転換を進める企業もあります。もし正社員への転換を考えているのであれば、派遣会社の営業や派遣先の上司に、紹介予定派遣でないにしても正社員への転換余地がありそうな職場か聞いたり、可能な範囲で派遣先に働きかけてもらえないか打診してみましょう。
そうはいっても派遣先で正社員になることは考えられない。という方のために、オープンな転職市場を通じて正社員になる方法を次ページで考えていきます。