スパイスの効いたコクのある男、ネロ。
骨太のようで繊細なドミートリー。
宝塚の舞台上の“男”を観ていて思います。「こんなイイ男はいないわ…」と。それは、宝塚の男役の演じる“男”が、リアル社会には存在しない…と感じさせるから。
しかし水 夏希の演じる“男”には「こんなイイ男に出会いたい…」と思ったものでした。どこかに存在するかもしれない…と。
それはたぶん、声や所作だけじゃない、もっと深いところから“男”になっていたからでしょうか。
最後の役『ロジェ』のロジェも、虚構の世界の人物なのに、見えないものや聞えないものまで知りたくなる、触れたくなる……そんな風に惹かれる男でした。
スタイリッシュなショーマンとしても大活躍。
『ソロモンの指輪』『Carnevale睡夢』など冒険的なショー、舞台と客席が一体となった『RIO DE BRAVO!!』が誕生したのも、水 夏希のテクニックと魅力ゆえ。
キレのいいダンスや黒燕尾は最高にカッコよく綺麗でした。
AQUA5 (C)宝塚クリエイティブアーツ |
“トップスター”と同時にもう一つの顔はAQUA5。2007年、水 夏希さんを筆頭に、雪組男役スターの彩吹真央さん、音月
桂さん、彩那 音さん、凰稀かなめさんらと結成されたユニットです。
CDリリース、数々のテレビ出演やライブ、コンサートなどにより、宝塚ファンを楽しませることはもちろん、宝塚歌劇を知らない方々に、宝塚歌劇の魅力を伝えたり、宝塚歌劇への足がかりを残しました。
通常の稽古や公演の他にAQUA5の活動。その忙しさは想像もつきませんが、それが出来たのは、忙しさを苦とは思わず、宝塚歌劇を世に広めることをむしろ楽しんでいたであろう水さんだったからでしょう。水さんでなければ、こうしたユニットの存在すらなかったかもしれません。本当に頭が下がります。
水 夏希の舞台から、自身に対する強い厳しさと、心の大きさ深さ温かさを感じます。
誰よりも過酷なトップスターでありながら、後進たちを引き上げることを忘れず、愛情持って接し指導しました。言葉ではなかなか伝えられないモノまで、組子たちも水さんの背中から学んだことでしょう。
光り輝きながら、いつも仲間や観客の元に降りてきてくれたトップスター。
これこそが頂点に立つ者の姿だということを、すべてで感じさせてくれました。