約7カ月間で、住宅ローン返済猶予の申請者数は6万人超に達する
少なくとも6万3000人弱の人が住宅ローン返済に苦しんでいる。
09年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」により、金融機関は中小企業や住宅ローンの借り手から申し出があった場合、貸付条件の変更などに応じることが努力義務となりました。その制度を受け、今年6月末時点で6万3000人弱の人が住宅ローンに関する条件変更を申し出ていることが金融庁の調査で明らかになりました(下表参照)。言うまでもなく、返済が困窮しているがゆえの条件変更です。かなり深刻な事態といわざるを得ません。
1000万円超の預金は減額されても、住宅ローンは一切減額されない
なぜ、ここで住宅ローン困窮者の話を持ち出したかというと、2005年4月にペイオフが全面解禁されて、(繰り返しになりますが)預金者1人当たりの預金は「1000万円とその利息」までしか保護されなくなりました。つまり、預金者に自己責任が課されるようになったのです。であれば当然、破綻した金融機関側にも経営責任が問われなければなりません。預金者がその金融機関から住宅ローンを借りていた場合、経営責任としてペイオフ同様、住宅ローンの一定額が債務免除(=経営責任)されるのが筋というものです。なぜなら、「預金」というのは預金者の金融機関に対する一種の貸し付けと解することができるからです。だからこそ、金融機関は預金者に対して利息を支払っているわけです。
ところが現実は、住宅ローンが一部カット(債務免除)されることは一切ありません。日本振興銀行の破綻でも、金融整理管財人となった預金保険機構は、融資取引のある方に向けて「返済は従来どおりで変更ありません」と説明しています。
この「返済は従来どおりで変更ありません」との説明、良心的な解釈をすると、たとえば「借入金利の引き上げ」や「残債の一括返済」といった融資条件の厳格化を否定しているように受け取ることができます。しかし、見方を変えれば「減額されることはありません」というメッセージでもあり、経営責任の「け」の字も垣間見ることができません。実に、金融機関側に都合よくできた制度といえるでしょう。
唯一、住宅ローンを借りている金融機関に預金もある場合、ペイオフの発動によって両者を相殺することが認められています。たとえば同一金融機関に預金が1500万円、住宅ローンの残債が3500万円あるとすると、相殺して住宅ローンの残額を2000万円(3500万円-1500万円)に圧縮することができます。これにより預金額がゼロ(1000万円以下)になることで、預金が一部カットされる心配からは開放されることになります。
ただ、実質的には預金の1500万円を繰り上げ返済したに過ぎず、当初の借入金額そのものが減ったわけではありません。1000万円を超える預金額は一部カットされて、自己責任を取らされるにもかかわらず……です。この点、私ガイドはどうも腑に落ちません。預金者ばかりに責任を押し付ける理不尽な制度には、断固、「NO」を突きつけなければなりません。