広告チラシの専有面積は「壁芯基準」だが……

以下はよくあるマンション広告チラシ。4LDKのマンションで専有面積が76.53平米、販売価格は6688万円です。バルコニーの他、25.4平米のルーフバルコニーつきで広々した造りですね。
よくあるマンション広告チラシ

よくあるマンション広告チラシ
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さて、この物件を購入し、火災保険をかけるとします。その場合、建物部分の保険金額はいくらになると思いますか?

火災保険はそもそも、保険金額が多すぎる場合、超過した部分までは支払われず、少な過ぎる場合、損害の補てんが不十分となる特性があります。つまり、保険金額をいくらにするかは、充分な保険金を受け取る前提条件であり重要なポイントです。以下、順を追って説明していきます。

まず、マンション(区分所有建物)は、個々の購入者が所有する「専有部分」と、購入者全員が共同所有する「共用部分」に分かれます。マンションを購入した人が個々に火災保険をかける場合は、個々の専有部分だけが対象になります。では専有部分とはどこまでをいうのでしょう。

マンションの専有部分と共用部分の境を定める基準には、「上塗基準(うわぬりきじゅん)」と「壁芯基準(かべしんきじゅん・へきしんきじゅん)」がありますが(「マンション専有部分の火災保険金額はいくら?」参照)、広告チラシ上の専有面積は、多くの場合、壁芯基準で表示されています。つまり、界壁、階層の中央部分(壁芯及び床の中心線)までの専有部分側が自分の専有部分とする基準です。
 

火災保険を見積もる時には通常、
登記上の専有面積「内法基準」が用いられる

一方、登記の時に用いる専有面積は、内法基準といい、面積的には上塗基準とほぼ同じです。言うまでもなく、内法基準のほうが、チラシに記載されている壁芯基準よりもやや狭くなります。

ちょっと話がそれますが、住宅ローン控除は登記上の専有面積、すなわち内法基準で50平米以上でないと適用されません。そのため、広告チラシ上の専有面積が50平米ですと、住宅ローン控除は受けられないことに。微妙な平米数では注意が必要となりますね。

さて、ご自分のマンションの専有部分の範囲がどちらの基準を用いているのかは、住んでいるマンションの管理規約に定められています。以下は国土交通省が示した「マンション標準管理規約」の一部です。
 
第2章 専有部分等の範囲
(専有部分の範囲)
第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付
した住戸とする。
2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおり
とする。
一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。
3 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にあ
る部分以外のものは、専有部分とする。
出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」

この標準管理規約によりますと、「天井・床および壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする」とあります。つまり、標準管理規約は界壁、階層の本体はすべて共用部分とする上塗基準ということです。なお、バルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラスは専有部分に含まれないのですが、各区分所有者が専用使用権を有する共用部分となります。

さて、火災保険金額は、管理規約に基づく専有部分をベースに計算します。実際のマンション管理規約は、特段の理由がない限り、ほとんどが標準管理規約をベースにしたものとなっているようです。そのため、火災保険は上塗基準の専有面積で計算するものである、と考えていいでしょう。

一方、共用部分である躯体については、管理組合が一括して火災保険をかけています。よって壁芯基準の専有面積で専有部分の火災保険金額を計算すると、上塗基準で計算した場合よりも保険金額が高くなり、その分保険料も高くなってしまう上、躯体部分に二重に火災保険をかけることになってしまいます。いうまでもなく、一つの損害において保険金を二重に受け取ることはできません。となると、保険料のムダ払い、ということになってしまいます。火災保険の見積もりを取る場合には、この点に注意が必要ですね。

 

6700万円のマンションでも、火災保険金額は「840万円」

ということで、冒頭の質問に対する答えです。

購入価格6700万円のマンションで、登記上の専有面積が62平米だった場合、専有部分の適切な火災保険金額は840万円(※セゾン自動車火災保険の場合。2017年10月現在)。専有部分の面積計算の違いに加えて、マンションの分譲価格には土地価格や住宅業者の利益も乗せられているため、これほどの違いが出るのです。住宅ローンの借入金がそれ以上あっても、保険金額は840万円で、それ以上に余分に掛けることは原則できません。

なお、管理規約に基づき専有部分を正しく評価した場合であっても、保険会社あるいは共済団体が評価の際に用いるモノサシの違いから、保険(共済)金額が各社で異なるケースもあります(保険会社によって火災保険の金額に差があるのはなぜ?)

そもそも、火災保険の評価額(保険金額)は、マンションそのものの資産価値とは全く異なるものです。マンションの火災保険金額とは、上塗部分の専有部分の損害、つまり全焼したときに「内装や付帯設備をすべてやり直すのに必要となる金額」ということにほかならず、そう考えると840万円は妥当な金額なのかもしれません。

【関連リンク】
保険会社によって火災保険の金額に差があるのはなぜ?
マンション専有部分の保険金額はいくら?

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