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犬の耳の形や構造の種類、動きからわかる感情とは

犬の耳は口ほどにものを言う! 犬は耳の形もいろいろ。いったいどんな種類があるのでしょうか?また、耳の構造や耳の動きから伝わる犬の気持ち(心理・感情)を解説します。犬の場合、嗅覚に次いで優れた感覚器官であるのが耳。そんな耳にも注目してみてくださいね。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

耳のうごきで犬の気持ちがわかる

耳の様子で愛犬のきもちがわかる

耳の様子で愛犬のきもちがわかる

犬の耳はただ音を聞くだけでなく、気持ちを表現したり、意志を伝えたりする役目も果たす大切な器官です。今回は犬の耳について見てみましょう。
 
<目次>
 

もしかして内緒話も聞こえてる?

犬は寝ている時でも耳をぴくぴく動かしたりしますよね? 犬の耳にはたくさんの筋肉があり、自由自在に動かすことができるのですが、このような耳を「運動耳」と呼びます。

彼らにはどのくらいの範囲の音が聞こえているのでしょうか? この可聴域の数値について調べてみると、実にいろいろな数値が出てきます。ヒトの可聴域が約20Hz~20,000Hzと言われているのに対して、犬の場合は16Hzまたは20Hz~80,000Hz(「犬学入門」/大野淳一、誠文堂新光社、1982年発行)、16Hz~120,000Hz(愛玩動物飼養管理士2級教本第2巻/(社)日本愛玩動物協会、2005年・2006年発行)。他には15Hz~50,000Hz、40Hz~47,000Hz、特に上限の数値に関しては35,000、75,000(パブロフの実験で出た数値)など、かなりばらつきがあり、犬の可聴域をはっきりと調べることの難しさを表しているようにも思えます。

では、犬はどのくらいの音を聞き分けることができるのか? ある実験によると、直系3mmの鋼鉄の球を3cmの高さから鉄板に落とした時、人間は鉄板から6m離れるともう音が聞き取れなかったのに対し、犬は24m離れてもその音を聞き取ることができたそうです。また、食事を与える前に一定の音を聞かせて唾液の量を測定した実験では、メトロノームの100回/1分間と96回/1分間の速さの違いを聞き分けたということ。他にも面白い実験がありました。犬を中央にし、円形状にいくつもブザーが鳴る装置を設置して、どのブザーが鳴ったか当てるという実験では、人間は16の音源しかわからなかったのに、犬には32の音源がわかったという話です。

いずれにしても犬たちは私たち人間よりはるかに広い範囲の音を聴いているということに変わりはありません。もし、彼らが人間の言葉を理解できるなら、内緒話もしっかり聞かれているということかもしれませんね。
 

個性豊かな耳の形・種類

次は耳の形についてのお話です。いろいろな形がありますが、基本は「立ち耳」「半立ち耳」「垂れ耳」の3つ。それぞれその中に個性をもった耳の形が存在し、バリエーションを豊かにしています。以下に、その代表例をご紹介しましょう。
柴犬

柴犬

立ち耳/直立耳/エレクト・イア(Erect ear)/プリック・イア(Prick ear)
根元から先端までピンと立った耳。
例)柴犬、紀州犬、シベリアン・ハスキー、ジャーマン・シェパード・ドッグ
 
フレンチ・ブルドッグ

フレンチ・ブルドッグ

蝙蝠耳/バット・イア(Bat ear)
幅が広く、先端が丸くて、蝙蝠の翼に形が似ている耳。
例)フレンチ・ブルドッグ
 
パピヨン

パピヨン

バタフライ・イア(Butterfly ear)
蝶の羽に似た形をした耳。
例)パピヨン


キャンドル・フレーム・イア(Candle Flame ear)
トイ・マンチェスター・テリア

トイ・マンチェスター・テリア

蝋燭の炎の形に似た耳。
例)トイ・マンチェスター・テリア







半立ち耳/半直立耳/セミ・エレクト・イア(Semi-erect ear)/セミ・プリック・イア(Semi-prick ear)
シェットランド・シープドッグ

シェットランド・シープドッグ

基本形は立ち耳ながら、耳の先端が折れているもの。折れ方によっていくつかの呼び方がある。
例)シェットランド・シープドッグ、ラフ・コリー





ボタン耳/ボタン・イア(Button ear)
フォックス・テリア

フォックス・テリア

耳の先が前方に向かってV字型に折れている耳。
例)フォックス・テリア、ボーダー・テリア、ジャック・ラッセル・テリア





ローズ耳/ローズ・イア(Rose ear)
ウィペット

ウィペット

耳の内側が見える状態で後方に折りたたまれた半直立耳、または垂れ耳。
例)ブルドッグ、ウィペット






垂れ耳/ドロップ・イア(Drop ear)
ゴールデン・レトリーバー

ゴールデン・レトリーバー

根元から垂れている耳。
例)イングリッシュ・ポインター、ゴールデン・レトリーバー、ビーグル






ペンダント・イア(Pendant ear)/ペンジュロス・イア(Pendulous ear)
バセット・ハウンド

バセット・ハウンド

まるでぶら下がるようについている耳。
例)ダックスフンド、バセット・ハウンド、ブラッドハウンド







この他、耳の付け根のつき位置が高いものはハイ・セット・イア(High set ear)、反対に低いものはロー・セット・イア(Low set ear)というようにつき位置を主眼に置いた呼び方などもあります。

また、耳と言うと避けて通れないのが断耳の問題。すでにヨーロッパを中心に動物愛護の観点から断耳を法律によって禁止している国もあります(医療目的や実猟犬など例外もあり)。日本でも断耳・断尾をしていない犬を見かけるようにはなりましたが、今後真摯に取り組むべき問題の一つであることは間違いがないでしょう。
 

耳が前方に向いてるなら気持ちも前向き、後方なら不安や恐怖

心理によって耳の位置や形も変わる。

心理によって耳の位置や形も変わる。

次は、耳の動きについて。犬は耳の動きでも気持ちを表現しています。垂れ耳やしぼんだ形の耳では、その動きというのはわかりづらいかとは思いますが、立ち耳の犬を例にとって見てみましょう。

1の犬は表情も穏やかで、耳もピンと立っています。「家族が帰ってきたみたい」「何か美味しそうな匂いがするな」など、何か興味を引かれるものがあると耳もピンと立ちます。

2の犬になると耳は後方に倒れ、唇もやや後ろに引かれ気味になっています。表情もちょっと不安げ。「向こうから誰か来るけど、知らない人だし、ちょっと気になるなぁ……」「あ、ママが僕の嫌いな爪切りを手に持っている。もしかして爪切りされるの?」なんていう時にはこういう表情になることがあるかもしれませんね。

3の犬は「今にも咬みつくぞ」という感じです。鼻には皺がより、耳は前方に向かってピンと立ち、唇はややすぼまって歯をむき出しにしています。自信もたっぷり。

4の犬も攻撃的な表情であることはわかりますが、3の犬と違うのは耳が後方に倒れていることと、唇の開き方がやや後方に引かれてということ。実は4の犬は「それ以上近寄ってきたら咬みついてやるぞ」と言いながらも、その一方で相手に対して怖さや不安を感じていて、できるならこのまま逃げてしまいたいというような気持ちもあわせもっているのです。攻撃と恐れという相反する感情が同時に出ている状態です。

つまりは、いい意味でも悪い意味でも気持ちが前向きにある時には耳の動きも前方へ向かい、不安や恐れといった気持ちが後ろ向きにある時には耳の動きも後方へ向かう傾向にあるということなのです。こういうことを意識しながら愛犬の耳の動きを見てみると面白いですよ。目は口ほどにものを言うという言葉がありますが、犬の耳も多くを語っているのです。ただし、「しっぽ」の記事でも書いたように、犬のボディランゲージを読むには体全体のサインを観察し、その時の状況や環境なども考慮に入れる必要があるということは言うまでもありません。
 

犬の耳のつくり

犬の耳の構造:略図

犬の耳のつくり:略図

最後に犬の耳はどういうつくりになっているのかを見てみましょう。

耳は大きく分けて3つの部分から成り立っています。外側から外耳・中耳・内耳。「耳」の形として見える部分は耳介と言います。外耳道は人間と違ってL字に似た形となっており、耳の入り口から縦の部分を垂直耳道、途中から横に向かう部分を水平耳道と言います。中耳を構成するのは鼓膜から鼓室、耳小骨、耳管までで、耳小骨はつち骨・きぬた骨・あぶみ骨という小さな3の骨によって成り立っています。耳管(=エウスタキオ管)は咽頭までつながっていて、外耳と中耳の気圧を調節しています。中耳に隣接する内耳には蝸牛(=うずまき管)と半規管、前庭があり、聴覚に関係するのが蝸牛で、平衡感覚に関係するのは半規管と前庭です。内耳はその形や働きが複雑なことから「迷路」と呼ばれることもあります。

音が「聞こえる」ということは、音から発生する空気の振動(=音波)が伝わるということ。耳介の中に入ってきた空気の振動は鼓膜に達すると、すぐ隣にある耳小骨に伝わり、それがさらに内耳の蝸牛に伝わって、蝸牛内部のリンパ液を振動させます。蝸牛の中にある繊毛細胞がその振動を感知し、蝸牛神経を経て大脳中枢部に送り込まれることで「音」として認識するというわけです。

犬の場合、嗅覚に次いで優れた感覚器官であるのが耳。そんな耳にも注目してみてくださいね。

参考資料:
「犬の用語事典」大野淳一著/誠文堂新光社
「心理と行動から見た 犬学入門」大野淳一著/誠文堂新光社

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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