水晶体が濁って起きる白内障
白内障になると視力が低下し、全体的に見えづらくなります |
白内障とは、水晶体が濁って視力が低下する病気です。水晶体は紙にくるまれたキャンディーのような構造になっています。外側の袋が水晶体嚢、中身は中心部から nucleus(核) epinucleus(核の周囲部) cortex(皮質)と呼ばれています。濁るのは表面ではなく、中身です。
通常は白く濁るので白内障と名前がついていますが、茶色く濁ったり虹色に濁ったりする場合もあります。
白内障の原因は紫外線? 加齢?
白内障の原因はなんでしょう? 「紫外線が白内障を引き起こす」と書いてあるものがありますが、これは一概には言えないと感じています。臨床医として数多くの症例を見てきた経験から、私の個人的な考えを含めて解説します。
もちろん水晶体を取り出して強い紫外線を直接当て続けると白内障になることは間違いないでしょう。しかし、
・理論的には紫外線は多くが角膜で反射されるので、目の中にはそれほど到達しない
・紫外線を特別多く浴びる仕事(漁師さんやサーファーやプロゴルファーやテニスのコーチなど)をやってらっしゃる方で実際紫外線が原因の目の障害(翼状片など)を起こしている患者さんを数多く診てきたが、経験的に、それらの患者さんに特別白内障が多いということはない
・紫外線をあびるのは水晶体の前面部中心に極端に多いはずだが、通常の白内障は水晶体の後面に起こるタイプ、中心部に起こるタイプ、周辺部から中心部に向かって拡がってくるタイプが多く、前面中心に最初に起こるものが少ない
これらの理由により、紫外線の影響は通常の加齢性の白内障に関しては大きくはなく、原因はやはり加齢による水晶体の経年変化だと考えております。
しかし一方で、
・網膜色素変性症の患者さんには、前面中心部のみに白内障が起こることがある
・若くして発症する白内障は、前面中心部から濁りが起こることが多い
ということもありますので、これらは紫外線の影響があるかもしれません。
ですので、「通常の方は白内障に関しては紫外線を特別気にすることは無いが、若くして(50歳未満)白内障になっている方や、網膜色素変性症の患者さんなどは、紫外線を浴びすぎないようにしたほうが良いかもしれない」とここでは述べておきます。
紫外線と可視光線(光)の違い
余談ですが、目に関しては、紫外線と可視光線(いわゆる「光」)を混同している記事がよく見られます。紫外線は透過力が低いために、多くが目の表面で反射されます。可視光線は中まで届きます。なので、・目の表面にとって悪いのは紫外線。翼状片や角膜炎を引き起こす
・水晶体には少量の紫外線が届いているだろうと推定されるので、紫外線の影響が多少はあるだろう。可視光線はおそらく影響なし。
・網膜には紫外線はほとんど届いていないと考えられるので、紫外線の影響は無視できると考えられる。影響があるのは可視光線。「網膜色素変性症の悪化や黄斑部変性症の悪化には紫外線の影響が……」というのは間違いで、「網膜色素変性症の悪化や黄斑部変性症の悪化には可視光線の影響が……」と考えます。
続いては、白内障の主な症状 について紹介します。
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