禁煙できないなら、「軽いタバコ」に変えれば健康的か?
「タバコは体に良くないことはよくわかってます。だから、軽いタバコにしてがんばってるんですよ」 何度目かの禁煙のお話をしたAさん(55歳男性)は語気を強めてこうおっしゃいました。
営業職らしいかっちりしたスーツを身につけたAさんは、「タバコは止めなくてはならないと思っているけれども、止められない。だから、がつんとくるタバコから、昔は頼りなくて吸えたもんじゃなかった『軽いタバコ』に変えてがんばっているんです」というメッセージを目に込めて、じっと私を見つめていらっしゃいます。
「そうなんですね。色々とご自分でも工夫されているんですね。」
Aさんの熱い視線を受け止めながら、私は続けます。
「禁煙の話なんて馬耳東風という方もいらっしゃるなかで、何とかしたいという気持ちを行動に移されているのはすばらしいことです。しかし、軽いタバコはどういう意味なのか、ご存知ですか?」
軽いタバコにしても無意味! 喫煙とがんリスクの関係
タバコの健康被害が共通のコンセンサスを得られるようになってきた時代の影響でしょうか。
「低タール」「1mg」「ライト」「スーパーライト」「ウルトラライト」などなど、タバコの健康被害の程度をなるべく薄めたような表現を使ったパッケージが数多く見られます。しかし、残念ながらこれらの製品も、多くの喫煙者が期待するような「ライト」なリスクとは大きく異なるのが現実です。
タバコの箱に表示されているタールやニコチンの量は、一定の条件下で機械が吸引した煙の中に含まれる量を示したものです。「軽いタバコ」と聞くと、紙巻きタバコの葉の成分を工夫してニコチンやタールの量を減らしたタバコだと思っていませんか? しかし、実態はそうではありません。タバコの葉の中身はほとんど変わらず、フィルターだけが異なるのです。
「軽いタバコ」のフィルターには、その周囲にぐるりと小さな穴が並んでいます。つまり、タバコの煙を吸い込む際に、周囲の穴から空気が流れ込んで、結果的に煙が薄まる、というのが基本的なからくりです。
「なーんだ」という感じですね。しかし、喫煙者はニコチン依存症のため、自分に必要なニコチンを摂取するために深く吸い込んだり、根元まで吸ったり、小さな穴を塞いで吸ってしまうことがわかっています。
つまり、「軽いタバコ」というのは幻想で、ニコチンなどの有害物質の摂取は期待したほど減らず、逆に一酸化炭素については多く摂取することになる可能性があるということです。
健康を考えるのなら「軽いタバコ」ではなく、やはり禁煙が鉄則
「タバコが止められないから、軽くして、せめてもの努力をしている」 そのお気持ちはよく分かります。しかしタバコは、やはり止めるしかないのです。これだけは意志として、きっぱりとお伝えします。止めづらい原因はこのサイトでも解説していますし、止めるための最新の方法もご紹介しています。是非情報を活用し、煙がなく、健康を損なわないタバコフリーの生活を送れるようになるよう、頑張ってください。