食べる人に優しく、素材の個性を活かす
こうした思いを具現化するためにオープンした「旬菜 桜花」では、森田さんがこれまでに信頼関係を築いてきた大阪を中心とする生産者さんから直送される食材が楽しめます。今回私は、夜の時間に「おまかせコース」をいただきました。河内鴨のササミの昆布〆。
河内鴨は、明治初期から続くツムラ本店のもの。無農薬飼料で長期間平飼いされた健康な合鴨を、丁寧にさばき熟成された肉。臭みがなく、ねっとりと舌にからみつくような食感。ほんのり昆布の旨味が、主張しすぎないほどよさで感じられます。
私もよく昆布〆は作るのですが、どうしても〆すぎてしまいがちで、昆布の水分や時間等、いろいろとコツを伺いました。よい昆布を使えば、だしをとった昆布で短時間〆るだけで、十分昆布の旨味ものるそうです。
トマトの旨味が凝縮したすり流し。
トマトは、旨味成分が多いと言いますが、トマトの旨味に昆布だし、そしてとろみをつけるためにお米を加えたすり流し。
コクを出すには、フレンチやイタリアンなどでば動物性のだしを使いますが、植物性のものだけで、十分にコクや、トマト本来の味が楽しめました。器もしっかり冷やされ、鬱々として蒸し暑い夜に最高の御馳走でした。
旬の魚のお造り盛り合わせ。
旬を迎えたハモ、高知のカツオ、そして天然のヒラメの盛り合わせ。
野菜だけでなく、魚介類も季節を伝え、またその土地の気候風土を伝えてくれます。
お酒好きにはたまらない酒肴盛り合わせ。
ちょっと珍しいエビの酒盗
犬鳴ポーク自家製ベーコンの炙り焼き
トロっと舌触りのよい有機豆腐の味噌漬
スパイスなどをほんのり効かせた河内鴨のレバーペースト
河内鴨の砂ずりのコンフィ
河内鴨の生ハム仕立て
犬鳴ポークは、厳選されたリサイクル飼料を食べて育つ大阪唯一のブランド豚。なかなか市内の飲食店でもお目にかかれません。
今回河内鴨は、ロースなどだけでなく、様々な部位が楽しめました。日本料理だけでなく西洋料理の手法も取入れ、食材にあった食べ方が工夫されています。
大阪を中心とする食材が楽しめるお番菜盛り合わせ。
もずくの酢の物
水なすのあっさり煮
新じゃがのしょうゆ煮
小芋の衣かつぎ
自家製ポテトサラダ
ふきの炊いたん
犬鳴ポークの煮豚
地場野菜がいろいろと楽しめる盛り合わせ。たとえば、新じゃがのしょうゆ煮などは、じっくり炊いて煮含めるというよりは、さっと表面に味をしませる程度とか。
じゃがいもは味がしみ難いものですが、表面にはしっかり味がありながら、内側のじゃがいもそのものの風味と調和し、塩分を控えながらお口の中でちょうどよい塩梅になるように計算されていると思いました。
旨味ののった甘鯛とあさりの椀もの。磯の香りが豊か。
なかなか出逢えない立派な大きさの甘鯛。甘鯛やあさりの動物性の旨味だけでなく、アオサ海苔の香り、そして隠し味に、昆布だしで炊いたワカメのペーストも加えてとろみをつけているとか。磯のよい香りが膨らんで、旨味が深まります。
旬の野菜がたっぷり入ったスープ煮。
産地直送のキャベツ、タマネギ、春菊、犬鳴きポークのスープ煮。
キャベツやタマネギからでる甘味がしっかり効いた、体がほっとするような一品。焼きお握りにスープをかけて食べてもおいしそうです。
この後、ごはんがつきます。
おまかせコースの他にも、アラカルトのメニューも楽しめ、お料理に合わせて、こだわりの蔵元の日本酒や地ビール、ワインなども揃っています。
カウンターに座ると、お食事をいただきながら、食材の説明だけでなく、どんなふうに調理すると、その食材の持ち味の活かし方や、無駄なく大切に食べられる工夫など、プロのコツも惜しみなくお話してくださるので、料理好きの方にはなおおいしいと感じられることでしょう。
私は、森田さんのお料理をいただいて、多くの人と築いた信頼関係を、一皿の料理という形に投影することに、真摯にむき合う人だなと感じました。
「旬菜 桜花」では、おいしい食事を楽しみながらの生産者交流会や、生産地での体験・BBQ等、生活者と生産者をつなぐイベントが行われています。詳しくは、「旬菜 桜花」へ。
■「旬菜 桜花」
大阪市中央区高麗橋4-5-13 淀屋橋サテライトビル1F
TEL 06-6201-0223
営業時間: 11:30~14:00、18:00~23:00(L.O.22:30)
定休日 : 日曜、祝日