文章:光原 ゆき(前任ガイド)
「邪」が身体に入ってくる?
漢方医学から考える風邪の原因とは? |
「風邪」は、「風」に「邪」と書きます。この「邪」という文字に漢方医学における風邪を理解するヒントがあります。漢方医学の考え方では、風邪は、風や寒さといった周りの環境が身体に害を及ぼして起こる病気とされます。例えば、普段は心地よい風も、不快に感じるようならば病気の原因になってしまいます。「邪」とは、このように病気の原因になるもののことなのです。「邪」は大きく分けて、環境によるものと、体内に起因するものがあります。前者は、風や寒さ、暑さ、湿気、乾燥など、後者はむくみや鬱血などが挙げられます。
このような環境の変化による邪から身を守っているのは、皮膚や粘膜です。これらが防御しきれなくなると風邪をひきます。また、身体の中の水分や熱のバランスは体調に大きく影響します。風邪をひいたら、ただ体調が悪いというだけでなく、「どこがどのように悪くなったか」を意識して、それに合わせた対策を取ることが大事です。このポイントで、民間療法を考えてみると、意外に合理的であることがわかるのです。
基本は温めること…でも例外も
風邪は、身体が冷えて発症することが多いですよね。日本では古来より寒気から始まる風邪が主で、民間療法もこれに対応するものが多くあります。漢方では葛根湯が筋肉の緊張を取り身体を温めるとして有名ですが、葛湯や水あめも効果的です。身体の全体を温めると同時に、汗の補給にもなります。また、風邪の時、お粥を食べるのも理にかなっていて、同じく、水分補給と体温調節が期待できます。
ここで注意したいのは、最近になって、温める治療が効かないタイプの風邪が増えてきたということ。のどの奥が熱くて痛い、熱があっても寒気がない、冷たい水を大量に飲みたくなる、という症状では葛根湯は効きません。むしろ、冷やすタイプの治療がよいといえます。
次のページでは、これからの季節ならではの風邪対策をご紹介します。