肉体労働が減って食生活が豊かになると、どこの国でも糖尿病予備軍が増えつづけます。近頃、話題になっている「メタボリック シンドローム」は病名ではありません。これは太っていて高血圧気味、空腹時血糖値も糖尿病とは言えないまでも高く、ちょっとずつ悪い人がとても心臓や脳の障害を起こしやすいという警告です。もちろん、このレベルから糖尿病に進む人も多いのです。
糖尿病予防薬のいろいろ
節食とエクササイズが糖尿病を予防する、あるいは発症を遅延するということは、大規模の糖尿病研究で明らかにされています。ところが食事と運動というライフスタイルの改善は、「分かっちゃいるけど、やめられない」の典型なのです。これらの研究ではライフスタイルの改善と共に薬の効果も調べられました。なかでも、「メトフォルミン」は肝臓のインスリン感受性を高めて、肝臓からのブドウ糖の放出を抑えると考えられていますが、アメリカ人のような肥満型の糖尿病予備軍にはとても効果がありました。
同様にインスリンがうまく作用しない人のための「インスリン抵抗性改善薬」も、人によっては予防効果があることも分かりました。タケダの「アクトス」はこの薬の代表的なものです。
また、食後の炭水化物(ブドウ糖)の吸収をゆっくりとさせる「アルファ=グルコシダーゼ阻害剤」も糖尿病予防に有効とされています。食後高血糖を抑えるのですから当然ですね。このタイプの薬にはタケダの「ベイスン」が日本ではよく使われています。
血圧降下剤の効果は?
興味深いことは、高血圧の降下剤であるACE阻害剤やARB(アンジオテンシン受容体ブロッカー)という薬も糖尿病予防に効果があるようなのです。これらの降下剤は糖尿病者の高血圧症に使うと糖尿病性腎症の予防になるのです。今後は、どのような機序(システム)で糖尿病予防になるのか解明できれば、新しい糖尿病予防薬の開発につながります。また悪玉コレステロール(LDL)を下げ、善玉コレステロール(HDL)を増やす「スタチン」という高脂血症の薬も糖尿病予防になるようです。問題は、これらの薬を糖尿病予防に使うことを健康保険が認めていません。だから今は使用できませんが、なるべく早く事実を解明してもらいたいものですね。
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