「肺に影」の検査結果は、自覚症状なしでも「肺がん」疑いなのか
自覚症状がなくても、レントゲン検査で「肺に影がある」と言われたら…誰しも不安になるものです
私がボランティアで行っていた医療相談のサイトでも、これら「肺に影があると言われたのですが……」というご質問を多くいただきました。
患者さんのメールを拝見していると、中には深刻に悩まれているケースもあります。まずは健康診断の結果を冷静に受け止めるために、健康診断の背景を理解しておくことが大切です。健康診断で肺に影があると言われた時の対処法について解説します。
<肺に影があるとき考えられる病気・再検査の必要性 目次>
健康診断の目的は早期発見・早期治療!「疑わしきは罰する」スタンス
健康診断の目的は、「がん」などの病気を早期に発見し、早期に治療を行うことで、病気への治療成績を向上させることにあります。胸部レントゲン写真の場合も、やはり、肺がんや縦隔腫瘍などの胸部の悪性疾患を早く見つけることを目的にしています。
肺がんにしても縦隔腫瘍にしても、いわゆる「できもの」があると、通常は写らないような影が、胸部レントゲン写真には写ります。このような影が観察されたとき、検診を行う医師は「要精検」、すなわち、もう少し詳しく検査してくださいというコメントを出します。
この際、健康診断の目的が「早期発見・早期治療」であることを考えると、少しでも気になるような影があれば、「とりあえず、再検査」と考えます。すなわち、健康診断の場合には「疑わしきは罰する」というのが基本的なスタンスである、と言えます。
そして、「肺に影」は、さまざまな原因で起こることです。
「肺に影」で考えられる病気
患者さんのご相談を拝見していると、レントゲン検査での「肺に影がある」という検査結果を見て、「肺がんかもしれない」と思い悩まれているケースが多いと感じます。実は、肺に影がうつる原因には、いろいろなものがあります。その代表的なものが、炎症によるものです。とくに、60代以上の年代の方は、昔の結核の後などが残ってしまっていることがあります。このような状態では、「肺尖部胸膜肥厚」とか、「肺尖部に斑状陰影」などと記載されている場合が多いです。
また、血管の蛇行や、肋骨の重なり、女性の場合には乳頭が腫瘤状陰影になって写ることもありますし、血管腫や過誤腫など、良性の腫瘍が写っている場合もあります。
つまり、肺に影があるからといって、必ずしも肺がんとは限らず、むしろ、肺がんであることの方が少ないのが現実です。
「肺に影」があると言われたら…再検査?経過観察?
では、健康診断で肺に影があると言われたらどうすれば良いのでしょうか。基本は、「健康診断の結果用紙に記載されている指示に従う」ということです。そんな、当たり前のこと……と言われるかも知れませんが、実際に異常所見があると書かれていると気が動転してしまって、ここを見落とされているケースが少なくありません。医師のコメントが「1年後に再検査を」というものであれば、まずは、肺がんや縦隔腫瘍など心配すべき状態ではないと考えてください。これは、通常、昨年以前のレントゲンと、今年の分とを見比べ変化がないことを確認できた場合ですので、まずは、良性の変化か、生理的な陰影と考えて良いと思います。
また、「すぐに再検査を」と言う場合には、できるだけ速やかにその指示に従っていただきたいのですが、その際にも、心配しすぎることはありません。基本は、「疑わしきは罰する」というスタンスであることを思い出し、淡々と検査を進められることが大切です。
いずれにしても、もっとも避けていただきたいのが、「健康診断で異常を言われているが、がんや大きな病気が見つかると怖いので、検査は受けていない」という状態です。
早期発見・早期治療が、がんの治療の基本です。あまり、心配しすぎることなく、検査を進めていくことが、あなたの大切な体を守る第一歩になることを、心に留めておいていただけたら、と思います。がんの検査や診断方法に関しては、「治療の第一歩!がんの検査と診断を知ろう」 を併せてご覧下さい。
肺がんに関する詳しい情報は、「肺がんの初期症状とその進行」や「近年増えつつある肺がんの初期症状とは」 でご確認下さい。
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