家族の喫煙が悩み……禁煙させられないのはなぜ?
家族の禁煙を成功させたい……。喫煙習慣を止めるのは大変なことですが、行動心理学の基礎知識が役に立ちます
様々ながんだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞、はては認知症まで、私たちの健康に大きな影響を及ぼすタバコ。近年では、副流煙の問題もクローズアップされており、例えば夫である男性がタバコを止めない場合、小さいお子さんや妊娠中の女性の健康にも、非常に大きな問題になることが分かっています。
「タバコをやめてほしい」「タバコは体に悪い」「部屋が汚れるから」などなど、いろいろなメッセージを伝えても、「そうか。じゃ、今日から止めよう」ということには、残念ながら、なかなかなりません。しかし、行動心理学的な考え方をちょっと知るだけで、その状況を打破することができるかもしれません。
ご家族の禁煙を成功させるために不可欠とも言える、行動心理学に基づいた5つのステップについて解説します。
人間が行動するのには、段階がある
私たちが日頃取っています様々な行動。それらは無意識にしているようでも、実際には頭で考え納得したことが実際の行動に移されているものです。例えばですが、私が夏のクールビスのためにクレリックカラーのストライプのシャツを1枚買ったときの話を挙げてみましょう。ただシャツを一枚買ったという話だけをすると、シンプルな行動に聴こえると思いますが、この「購買」という行動に移るまでには、いろいろな段階を経ています。
まず、まだ肌寒いような季節にクールビズの話を聞いても、シャツそのものにも興味すらない、という段階があります。次に、徐々に暑くなってきて、クールビズにはこんな服がよい、という情報を耳にして、涼しい着心地のシャツを作りたいなぁ、それでは、どんなシャツにしようか、と考える段階。そして、実際にお店に行って、いろいろな商品を見てみる段階。さらに、実際にどんなものを買おうかと考えながら、店員さんに相談しあり試着したりする段階。そして最後にいくつかの候補からお気に入りの1枚を選んで購入し、私のシャツのローテーションに加わる、という流れになります。
ここで大切なことは、「段階によって、伝わってくるメッセージは違う」ということです。たとえば、「クールビズって何?」という段階で、シャツの袖口をダブルカフスにするかどうかといった情報は全くいりませんが、実際に購入するうえでシャツを選ぶときには、そういった細かなことを考えることも重要です。
タバコについても同じです。「禁煙」というシンプルなゴールを目指すわけですが、そもそも今がどの段階にあるかを見極めて適切なメッセージを送らなければ、なかなか相手に伝わらないということになってしまいます。
それでは次に行動心理学に基づく5つのステップについてご説明します。
禁煙を目指す人が辿る、行動心理学に基づく5つのステップ
人が行動する際は、無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期という5つのステップをたどります。禁煙にたとえてそれぞれのステップを解説してみましょう。■無関心期
全く禁煙について考えていない、何の関心も無い時期です。禁煙という考えが全く頭にないので、この時期に唐突に禁煙を勧めても、「禁煙って、俺に言っているのか?」という反応になります。
■関心期
「タバコは体に悪いと思っているんだけど、止められないわ」と言いながら喫煙を続けているのもの、一応、頭の中には禁煙という単語がよぎっている時期です。
■準備期
「そろそろタバコを止めないとだめだ。子供が生まれるまでには、やめておいた方がいいかな」等、禁煙について具体的に考え、禁煙に関する情報や、先輩の体験談を聞いたりして、禁煙する準備に入る時期です。
■実行期
「今月から禁煙中です!」と、実際に禁煙を実行に移す時期です。
■維持期
実行期をうまくスタートし、タバコを吸わずに禁煙を維持できている状態のことです。
通常、これらのステップは段階的に上っていき、また、場合によっては、何度か後戻りをします。禁煙について言えば、準備期から実行期になったけど、また、タバコを吸い始めてしまって、「また、いつか、禁煙しなくちゃなぁ」という関心期に戻ってしまうことも珍しくありません。
禁煙成功をサポートするために、各段階で伝えるべきメッセージ
では、これら5つの段階毎にどのようなメッセージを伝えるのが適切でしょうか? 具体的に挙げてみましょう。■無関心期の声かけのコツ
禁煙という単語が耳にひっかかるよう、ベースを作るようなメッセージが必要です。ここでは、喫煙が本人や周囲にどんな害があるのか、及ぼす影響に関する情報をそれとなく伝えていくようにします。
■関心期の声かけのコツ
喫煙の悪影響に加えて、禁煙することで得られる健康上のメリットや経済的なメリット、世間的な喫煙に対する風当たりや、禁煙ブームの現在など、禁煙に対して興味をかき立てるような情報を伝えていきます。
■準備期の声かけのコツ
準備期になると本人自身が、禁煙に関する情報を収集し始めていますので、具体的な禁煙方法や禁煙治療の内容などを共有するようにし、禁煙についてより具体的なイメージを持てるような情報を増やしていきます。実際の禁煙成功者の話などもよいでしょう。最終的には、禁煙をスタートする予定日などを決めていくようなサポートもしていきましょう。
■実行期の声かけのコツ
いざ禁煙を始めてからの実行期には、いわゆる禁断症状と呼ばれる「離脱症状」などが起こります。離脱症状への対処法や、その時期に起こり得る種々なことについてもなるべく情報を伝え、禁煙がうまくスタート・継続できるようにサポートしていきます。
■維持期の声かけのコツ
維持期には、再びタバコを手にすることがないように、日常生活での細かい生活指導を含めてサポートしていくのが望ましいです。
この一連の考え方、進め方は、ダイエットや節約などでも同じように使えます。行動心理学の考え方を知っておくと、ご家族にも、自分自身にも適切なタイミングで適切なメッセージを伝えられるようになります。まずはご家族の禁煙を成功させられるよう、この考え方をうまく活用しえみてください。