食と健康

疲労回復のための食事・栄養学的に効果がある献立のコツ

【管理栄養士が解説】疲労回復に効果的な食事や献立があります。疲れが取れず、「疲れた」が口ぐせになっている人は、慢性的な疲労感や疲れやすい体質は仕方ないと諦める前に、食生活を見直してみましょう。疲労が溜まる仕組みと、疲労を予防・回復しやすくする食事のポイント・具体的な献立のコツをご紹介します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

疲れが取れない原因は? ストレス・栄養バランス・睡眠不足など

うつむく女性

疲労が取れなくて困る……といったことはありませんか?

毎日忙しい現代は、慢性的な疲れを感じやすい環境にあります。眠っているはずなのに疲れが取れない、朝起きた瞬間から疲れている、そんな方も少なくないでしょう。

こういった疲れの原因として挙げられるのは、下記のような内容です。
  • 過労や睡眠不足
  • 不規則な生活
  • 精神的なストレス
  • 栄養のバランスが悪い
  • インフルエンザ等の疾患で体調が悪い
風邪やインフルエンザなどの疾患による体調不良は、その病気が治れば疲労感も回復しますが、それ以外は生活習慣自体を改善する必要があり、なかなか一筋縄ではいきません。しかし、きちんと改善に向けて努力するためには、なぜ食事が疲労回復に繋がるのか、腹落ちする理由が欲しいものです。疲れが生じるメカニズム、疲労回復に必要な栄養素や疲労解消法について、管理栄養士が詳しく解説します。
 

疲労回復に大切な食生活……脂肪が溜まると疲れが取れにくくなることも

ヒトは食べたものを燃焼させることで、生きるためのエネルギーを作り出しています。食事をすると身体の中ではさまざまな生理的反応が起こりますが、その際の触媒になるのが「ビタミンやミネラル」。これらが不足すると、反応が先へ進めないため、エネルギー源は蓄積しやすい脂肪の形に変換されてストックされます。

身体は脂肪を必要なものとしてストックしているはずですが、一方で、溜め込みすぎると「腫れている」と勘違いするせいか、通常より多くの「炎症物質」を出してしまうのです。この炎症物質が蓄積すると、全身倦怠感・微熱・筋肉痛などの身体症状の他、抑鬱・思考力低下などの精神症状が出るとされています。

そのため、疲労を蓄積しないためには休息と併せて、食事管理に留意しなければなりません。必要以上の脂肪を体内に溜め込み過ぎないようにすることが不可欠です。
 

疲労回復に向いた献立は「定食」! ビタミンCやアミノ酸が効果的

疲労回復に大切なのは、まずはなんといっても規則正しい食事です。1日1食だと食べすぎが防げるという考えの方もいるようですが、ビタミンやミネラルなどの必要成分が不足しやすくなります。1回ごとの食事量を減らして1日3食、時間を決めて食べることが何よりも大切です。

献立はどうすればよいか迷う方もいるかもしれませんが、食事内容は、栄養のバランスを考えると「定食スタイル」が最も適しています。「定食スタイル」とはご飯やパン、麺などの主食、肉、魚、卵、豆腐などの主菜、副菜の3種類が揃っていること。どれか1つでも欠けてはいけません。

よく「野菜中心に食べています」と言う方がいらっしゃいますが、野菜ばかりでも栄養のバランスは崩れます。野菜を意識して多めに食べることはよいことですが、ご飯や魚をおろそかにしてはいけません。

栄養成分としては「ビタミンC」や「アミノ酸(とくに分岐鎖アミノ酸やイミダゾールジペプチド)」などが疲労回復に役立つといわれています。ビタミンCを多く含む果物や野菜を多めに食べることや、適量の良質のアミノ酸を含む肉・魚・卵などを毎日食べることが大切です。ビタミンCを特に多く含む果物は柑橘類、また野菜であればピーマン・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワーなどに多く含まれています。

あまりオススメはしませんが、一時的にでも疲労を解消したい場合には「糖分補給」も有効です。特に、甘味の強い糖類に即効性があります。具体的には、チョコレートやクッキー、まんじゅうなどが効果的です。しかし、こうした甘いものはあくまで「カンフル剤」です。あまり多用してしまうと、クセになってしまい肥満を助長するので気をつけてください。
 

肉体疲労か、精神疲労か…疲れの原因に合わせた疲労解消法

疲労には大きく分けて2種類あります。激しい運動を行った後の肉体疲労と精神的な疲れによる疲労です。食事でこのどちらの疲労もある程度カバーできるのですが、それだけでは限界もあります。疲労の種類に見合った解消方法を行うことが大切です。

肉体疲労の場合は、何よりも身体を休めることが大切です。この場合、横になってTVを観る、読書をするなどの対応が良いでしょう。精神疲労の場合は、スポーツをする、散歩に行くなどして身体を動かすことが疲労回復につながります。精神疲労の場合は身体が疲れているわけではないので、TVを観るなどゆっくりしているようでも、心が急いてしまい、疲労回復につながらないのです。

さらに、疲労回復のためには睡眠も重要な役割をしています。就寝の2~3時間前までにスマートフォンやパソコン、テレビなどの明るい光を見ないようにし、食事や入浴も済ませておくと、入眠しやすくなります。特に、夕食を食べすぎてしまうと寝ている間に消化吸収を行うことになるため、体がしっかり休むことができず、翌日に疲労感が残ってしまうことがあります。良質な睡眠のためには、食事の時間にもできる限り気を配りたいものです。

疲労を溜めない工夫は、QOL、いわゆる「生活の質」を高めます。心も身体も生き生きとした生活を送ることができるよう、食生活以外の生活習慣も見直していきましょう。
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