食と健康/胃腸の健康を守る食事・レシピ

ごちそう疲れの胃腸にやさしい七草がゆ

一月七日には、朝七草がゆを作って食べる風習があります。ご馳走づくしのお正月気分にけじめをつけ、胃を休めるという生活の知恵です。七草に使われる若菜にはどんな栄養成分が秘められているのでしょうか?

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

若菜の勢いをいただく七草粥

七草はビタミンやミネラルを多く含んでいます

七草はビタミンやミネラルを多く含んでいます

古代中国では、元日から八日の各日に、鶏・狗(=いぬ)・羊・猪・牛・馬・人・殻の順番に占う風習があり、「正月七日目を人日とし、七種の若菜を熱く煮た吸い物にして食べると年中無病でいられる」と信じられていました。

また日本でも奈良時代から、七種の穀物かゆを食べ、その年の五穀豊穣を祈るという農民行事があり、これが中国の人日の節供と一緒になったようです。正月六日に早春の若草を摘み、翌朝芽吹きの勢いを食べることにより、邪気を払い万病を避けられると言い伝えられています。

食べ物が豊かな現代においては、お正月のごちそうが続いた後、あっさりと消化がよいおかゆで胃腸をいたわることは、とてもタイムリーだと思います。

七草にはビタミン、ミネラル、ポリフェノールも豊富

野草の中にはアクが強いものや苦味のあるものがありますが、七草はクセのないものが多いので、あまり煮過ぎずに、七草の味わいを活かしていただきましょう。

七草は、ビタミンやミネラルを多く含んでおり、またセリ・ナズナ・ハコベ・ホトケノザなどの野草の苦味やアクの成分は、様々な種類のポリフェノールです。ポリフェノールは、生活習慣病を引き起こす原因の一つ活性酸素を抑える抗酸化作用や炎症を鎮める作用などがあると期待され、研究が進められています。

■セリ
中国では精のつく食べ物として知られ、日本の古い植物図鑑にも、刺激が強すぎるため多食を禁めた文献があります。

カロテンやビタミンB2が特に多く、カルシウム、貧血に有効な鉄分、ビタミンC、便秘解消に役立つ食物繊維が豊富に含まれています。ケルセチンなどのフラボノイドを含み、香りの精油成分には消化促進、また民間療法では発汗、保温作用があると考えられていました。

(食べ方

葉はお味噌汁の実やおひたし、和え物など、すき焼きに入れてもおいしい。根は炒めものに。

■ナズナ(別名:ペンペン草)
たんぱく質やカロテン、ビタミンB1、ビタミンB2、カルシウム、鉄、マンガンが含まれています。またアブラナ科なのでアリルイソチオシアネートや、様々なフラボノイドなども含みます。

(食べ方)

テンプラ、ごはんに混ぜてナズナ飯、和え物、おひたし、酢の物など。

■ゴギョウ(別名:母子草 ハハコグサ)
たんぱく質やミネラルが豊富で、ルテオリン、ケルセチンなどが含まれています。民間療法では扁桃炎や胃炎をしずめる作用があると考えられていました。

(食べ方)

ヨモギの代わりにおもちにつき入れ草餅に、雑炊、テンプラ、和え物に。

■ハコベ
ハコベはヒヨコやウサギのえさに利用され、ニワトリグサとも呼ばれます。たんぱく質に富み、カルシウムや鉄などのミネラルも多く含み、整腸作用があります。また生葉の葉緑素は、口臭予防にすぐれ、古くは歯磨き粉として利用されていました。

(食べ方)

アクやクセがありません。味噌汁の具、和え物、炒め物、おひたしなどに。

■ホトケノザ
(別名:コオニタビラコ)
シソ科のホトケノザが多く見られますが、実はキク科のホトケノザが七草に使われます。様々な文献を見ましたが、なかなかコオニタビラコの栄養成分や機能性の記述はありません。

(食べ方)

お浸しや炒め物、味噌汁の具、お味噌汁、テンプラ、和えものなどに。

■スズナ(かぶらの別名)
根には消化酵素のジアスターゼが多く含まれ、食物繊維も豊富。葉はカロテン、ビタミンなどのビタミン、カルシウム、鉄分等のミネラルを多く含みます。

(食べ方)

漬け物、煮物に。

■スズシロ(だいこんの別名)
葉にはビタミンC、カロテン、ビタミンB1、B2、リン、鉄分、根にはでんぷん分解酵素のジアスターゼ、たんぱく質分解酵素アミラーゼ、エステラーゼなどを含みます。食物繊維も含みます。

(食べ方)
大根おろし、煮物、漬け物、葉は油炒めなどに。

摘む時には、毒草に注意

現代のように流通が充実していない時代には、地方によっては、すべて揃わないものもあり、大根やカブラ、また野でセリ程度を摘んで粥にしていたのが現実だったようです。もちろん今ではスーパーで簡単に換えますが、もしも自分で若菜を摘む際には、ドクゼリなどの毒草と間違わないように、十分知識をもった人と一緒に摘むようにしましょう。

またあくまで、七草も食品で、おかゆなどの料理で摂取できる栄養成分の量は、薬のように濃度が高いものではありませんから、過度な期待はできません。ただ、野菜同様またはそれ以上に栄養価も高い若菜を、伝統行事に習って食事に取り入れ、日々の健康づくりに役立てるのも、楽しいものです。食卓の話題も広がりそうですね。

七草がゆが過ぎ15日には、前述の「七種がゆ」(米、麦、大豆、小豆、ゴマ、アワ、キビを入れた雑穀がゆ)を食べる行事もあります。新年会なども続く中、胃腸の調子が悪い時は、おかゆでカラダの調子を整えましょう。

参考/
薬になる植物図鑑(柏書房)
江戸時代食生活事典(雄山閣)
本朝食鑑(平凡社)
四季の野草 摘み菜がごちそう(山と渓谷社)
その他

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