大学生の就職活動/就職活動の選考対策

内定に近づくインターンシップとは?

インターンシップは、単に働くことを学んだり視野を広げるだけではない。社会で働く上で必要な力の獲得や、社会で働く自信、さらに採用に直結しているインターンシップもある。しっかり探してトライしよう。

執筆者:見舘 好隆

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インターンシップとは?

インターンシップはいろんなタイプがある。何を身につけたいのかよく考えて、積極的にトライしよう。

インターンシップはいろんなタイプがある。何を身につけたいのかよく考えて、積極的にトライしよう

インターンシップとは、大学および小中高校など教育機関と、企業や官公庁などが協力して行う産学連携教育の一つであり、文部科学省では「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した“就業体験”を行うこと」と定義されている。インターンシップを授業科目として実施している大学は95.5%(文部科学省 大学等における平成23年度のインターンシップ実施状況について)。単位化されていないインターンシップも含めれば、実施していない大学はほとんどないだろう。また産学連携だけでなく、地域の各種学校や医療・福祉施設、地域コミュニティ、NGOなどと連携し実施されている。

しかし、そのタイプは様々である。大別すると以下の4つのタイプとなる。「働くこととは何か」「将来働く上で必要な力を身につけたい」「将来進むべき道を見つけたい」「学んだことが実務に活かせるかを確かめたい」など、参加する目的を明確にし、目的に合ったインターンシップを探して、しっかり準備した上で参加してみよう。

1.職場体験型
「働くこととは何か」「職場とは何か」「将来働くためにどんな力が必要か」といった職業観の醸成をなどを目指したタイプ。全入時代における大学のユニバーサル化、ニート問題など若年者雇用対策のためにキャリア教育の一環で近年一気に普及した。実施時期は就職活動が始まる前、つまり1~2年生、そして遅くても3年生の夏休みとなる。

2.実務実践型

学んだ知識を、実務の実践を通して習得することを目的としたタイプ。例えば、理系の大学で行われている産学連携の研究・開発やフィールドリサーチなど調査を絡めたゼミの課題研究、そして医療や福祉関連の大学で行われている現場実習、教員免許や学芸員など資格取得のために必要な実習がある。アメリカのコーオプ教育(CO-OP Education)をモデルに、職場体験型以前に導入された。実施時期は3年生や4年生、つまり基本知識を習得した学生が対象となる。学んだことを形にするチャンスとして積極的に取り組もう。

3.課題解決型

企業や官公庁などで与えられた課題(もしくは自らが設定した課題)に挑戦し、課題解決能力を身につけることを目的とするタイプ。以下の2つの名称で呼ばれることが多い。
  • PBL(Problem Based Learning/Project Based Learning)
    学生が中心となって、試行錯誤しながら課題に取り組む少人数グループの授業やプログラム。課題は教員が設定することが多い。近年はキャリア教育の一環として、社会人基礎力を向上させることを目指したものが増えている。
  • サービスラーニング
    教室での学びと、地域で行われる有意義な奉仕活動を組み合わせた授業やプログラム。学習経験を豊かにすると同時に、市民としての責任を教え、生涯にわたる地域への貢献を育み、地域の結びつきを強化する目的を持つ。課題は教員が決めることもあるが、学生自身が見出すこともある。
いずれのタイプも実務実践型と同じく、必ず成果物(報告書や発表、作品など)が求められる。実施時期は年次は問わないが、近年は1年生向けゼミでの実施が増加している。講義と違って面食らうと思うが、社会に出たら毎日が課題解決だ。早いうちから慣れておこう。

4.採用直結型
インターンシップ自体が採用活動の一部になっているタイプ。インターンシップだけで内定が出るわけではないが、そこでの行動や姿勢が評価され、面接へとつながることが多い。実施時期は3年生の夏休みから、採用活動が始まる時期までとなる。意中の企業のインターンシップは必ず参加するようにしよう。

インターンシップに参加する方法

大学が用意してくれるインターンシップだけじゃないよ。学外にも目を向けよう。

大学が用意してくれるインターンシップだけじゃないよ。学外にも目を向けよう

インターンシップのタイプが実務実践型や課題解決型であれば、授業に組み込まれておりその授業を履修することで参加できる。職場体験型は単位化されているものもあるが、基本的には自由応募が多い。採用直結型は自由応募となる。

自由応募できるインターンシップは、年中行われている。よって、学内の掲示板やキャリアセンター、ボランティアセンター、サービスラーニングセンターなどのポスターやチラシをチェックしよう。各センターの職員に相談しよう。

リクルートやマイナビがインターンシップ情報をまとめたサイトや、官公庁や地方公共団体、NPOなどが情報をまとめたサイトもある。意中の企業があれば、その企業がインターンシップを募集していないかこまめに企業のホームページをチェックしてみよう。また、ユニークなものに農林水産業のインターンシップや、議員インターンシップ、そして海外インターンシップもある。調べてみよう。

■ユニークなインターンシップの例
  • 農業インターンシップ
    全国農業会議所が農林水産省の補助を受けて実施するインターンシップ。全国の農業法人(約130社)で、1週間から1ヶ月以内(原則2週間)以上で通年受入れ可能。交通費は自己負担だが、食費・宿泊費は受入先が負担。
  • 漁師.jp
    全国漁業就業者確保育成センターが運営する、これから漁師を目指す方、水産業に就職したい方、漁業に興味のある方、転職を考えている方向けへの情報サイト。全国各地の漁業体験講座情報あり。
  • RINGYOU.NET
    林野庁の補助を受けて全国森林組合連合会が実施する「緑の雇用担い手対策事業」サイト。全国各地の林業体験講座情報あり。
  • NPO法人ドットジェイピー(議員インターンシップ)
    内閣府認証のNPO法人が運営。大学生が議員と行動を共にする事により、議員の仕事・議員の思い、政治と社会のつながりを知る体験学習プログラム。メディアを通さない生の政治を体験できるので、政治家を目指す人だけでなく民間企業・公務員など幅広い進路で経験を活かすことができる。選考会費(3,000円)プログラム参加費(12,000円)
  • 特定非営利活動法人アイセック・ジャパン
    世界107の国と地域への海外インターンシップを紹介する、世界最大規模の学生が運営する非営利組織のサイト。 
募集人数を超える応募者があるインターンシップは、書類選考はもちろん、筆記テストや面接、グループディスカッションを課すケースもある。特に海外インターンシップのように渡航費・滞在費が大学などから拠出されるケースや、有名企業でかつ採用直結型であれば応募が多数となり、必ず選考があるだろう。テレビ局のアナウンサー講座などはその典型といえる。

特に書類選考があれば、キャリアセンターのスタッフに事前に内容を添削してもらうのがいいだろう。筆記テストがあるならその勉強を、面接やグループディスカッションであればその練習が大切となる。

インターンシップに参加するメリット

学外の初めての場所で、初対面の人と一緒に、難しい課題に取り組めば、必ず成長できる。インターンシップで自らを成長させよう。

学外の初めての場所で、初対面の人と一緒に難しい課題に取り組めば、必ず成長できる。インターンシップで自らを成長させよう

インターンシップのタイプによって、参加するメリットは様々である。今の自分に欠けているもの、もしくはさらに成長させたいものは何かをよく考えて、積極的に参加しよう。

1.「働く」ことを学ぶ
主に職場体験型で「働く」ことが学べるが、その他のインターンシップでも学ぶことができる。もちろんアルバイトでも学べるが、それはアルバイトに限定された仕事になる。例えば本社で正社員が働く姿を見たり、協働したり、さらに職場における課題を一緒に考えることで、今まで想像することも難しかった働くことを体感することができるはずだ。

2.将来の視野を広げる

主に職場体験型および採用直結型で将来の視野を広げることができるが、その他のインターンシップでも可能。もちろん、アルバイトでも可能だが、アルバイトを募集していない企業、特にホワイトカラー(人事や総務、企画、経理など)の仕事や専門職の仕事(学校や病院、裁判所、テレビ局など)は、なかなか経験できない。インターンシップだからこそ触れることができる企業を選んで、視野を広げてみよう。

3.将来働くために必要な力(社会人基礎力)を身につける
実務実践型および課題解決型で将来働くために必要な力を身につけることができる。短期間が多い職場体験型や採用直結型ではおそらくこの力は身に付かない。少なくとも数カ月にわたって、チームを組んで、課題に対し考え抜き、積極的・主体的に取り組むことで、社会で働くために必要な力は向上する。社会人基礎力で言えば、「チームで働く力」「考え抜く力」「前に踏み出す力」のいずれか、そしてすべてを向上させることができる。

4.将来働く自信(自己効力感)を高める
実務実践型および課題解決型で働く自信を高めることができる。短期間が多い職場体験型や採用直結型ではおそらく高められない。なぜなら、実務実践型および課題解決型には必ず成果物が求められるからだ。何が何でも期日までに、企業や教員が期待する成果を上げなくてはならない。よって全力で最後までやり抜くこととなり、もし失敗してもやり抜いた自信が手に入るだろう。

自己効力感(自分がある具体的な状況において、適切な行動を成功裡に遂行できるという予測および確信)を高めることは、ひいては就職活動への自信、そして自己PRするエピソードとなるだろう。

5.自らの学習を実践を通して理解する

実務実践型および課題解決型で教室で学んだことを実践を通して理解することができる。きっと最初は失敗するだろう。しかし試さなければ失敗する知識のままだ。試して失敗してこそ修正できる。修正し、再トライして成功して初めて学んだことが君のものとなるのだ。

6.社会的責任を理解する
課題解決型のサービスラーニングで社会的責任を理解することができる。社会的責任とは、日本国憲法でも制定されている国民の三大義務(教育・勤労・納税)であり、特にサービスラーニングは市民としての責任・地域へ貢献する意識を、その地域のニーズに合った社会活動に実際に参加して学ぶことができる。国際基督教大学のサービスラーニングが代表例。

7.内定を取る

すべてのインターンシップ経験は、その企業の就職活動に有意に影響する。なぜなら、その企業を深く理解した上での受験であり、ホームページだけで企業研究した企業より、説得力がある志望動機を作ることができるからだ。また、インターンシップを通して得た社員との人間関係も有意に影響するだろう。もちろん、企業の人事は必ず「採用には影響しない」と明言するだろう。しかし、企業の人事にしても、インターンシップにおける働きっぷりは、どんな選考方法でも測定できないその学生の可能性を見出すことができる。参考にしない方がおかしい。

特に採用直結型は選考の一環なのでそのつもりで参加しよう。そのインターンシップが採用直結型かどうかは、そのインターンシップに参加した先輩に聴いたり、キャリアセンターに確認してみよう。

インターンシップに参加する時の注意点

インターンシップの成果は事前準備とその日の振り返りで決まる

インターンシップの成果は事前準備とその日の振り返りで決まる

インターンシップに参加すれば、目的にしている成果が必ず手に入るわけではない。手に入れる大切なポイントは2つ。しっかり準備することと、毎日振り返ることだ。では、事前準備について述べる。
  • インターンシップ先をじっくり研究する
    実習先を調べることは社会人として当然のマナーだ。何も研究していないことが悟られると、君の熱意の軽さに受入先はがっかりするだろう。せめて社長の名前とメッセージ、歴史、経営理念、事業内容ぐらいは暗記して行こう。
     
  • 質問リストを作成する
    ぜひ聞いてみたいことを紙に書いてまとめていこう。例えば、やりたいこと探しなら仕事のやりがい、そのやりがいを引き出してくれるもの、仕事のつらさ、そのつらさを乗り越えさせてくれるもの、先輩自身が入社を決めた理由、先輩の今の目標など。例えば内定獲得なら、職場に求められる人材、職場で求められる働く姿勢、先輩自身の就職活動(内定を取った秘訣など)を訊いてみよう。
     
  • 小さなメモ帳とペンを持参する
    仕事を頼まれた時に忘れないようにメモするメモ帳とペンを持参しよう。また、メモしながら話を聴く姿勢は、受入先にも好印象を与えるだろう。
     
  • 名刺を作る
    受入先の社員は君の連絡先を知っているので、名刺を渡す必要はないが、その職場で受入先企業以外の企業の方と名刺交換する機会があるかもしれないので、念のため持って行こう。
     
  • 遅刻しない
    言うまでもないことだが、遅刻は絶対にできない。事前に地図や経路を印刷しておいて、当日は30分前に現地に着くようにしよう。自分の携帯番号を伝えておくと迷った時に連絡してもらえるので、メールなどで伝えておこう。
     
  • リクルートスーツを着用する
    実習先にもよるが、リクルートスーツ着用が必須である。もしかしたら社内を案内してくれたり、他の社員や人事を紹介してくれるかもしれない。そんな機会に慌てないためにもリクルートスーツで臨もう。
     
  • 社会人マナー講座に参加する
    キャリアセンター主催ならマナー講座が開催されるはずだ。敬語や言葉遣い、電話の掛け方や受け方、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)など、基本を学んで現地で恥をかかないようにしよう。
     
  • 目的をしっかり設定し、それをやり遂げる決意を持つ
    ただ参加しただけで終わらせないように、参加する目的を明確にし、可能であれば受入先にも伝え、その目標をやり遂げる決意を持って参加しよう。
最後に、毎日の振り返りをしっかり行おう。「ああ疲れた」とすぐに寝てしまっては、学んだことをすべて忘れてしまう。その疲れが無駄になる。その日のうちに学んだことを咀嚼(そしゃく)して、自分の言葉にして残そう。おそらく実習録が課せられると思うので、当日メモしたメモ帳を参照しながら、しっかり書き残そう。そのエピソードが、就職活動にも生かされるのだから。
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