派遣で働く/派遣の基礎知識

特定派遣とは?一般派遣との違い/労働者派遣法改正後の今後

(注釈:2018年9月29日に特定派遣は廃止になりました)現在労働者派遣は許可制に一本化されていますが、以前は大きく分けて「一般派遣」と呼ばれる「登録型派遣」と「特定派遣」と呼ばれる「常用型派遣」がありました。どのような違いがあるのでしょうか。

渋田 貴正

執筆者:渋田 貴正

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特定派遣と一般派遣の基本的な違いと特徴

特定派遣と一般派遣との違い 労働者派遣法改正後の今後

特定派遣と一般派遣の違いを解説

平成27年に労働者派遣法が改正される前までは、労働者派遣には、一般派遣と特定派遣と呼ばれる2つの区分がありました。法改正によってこの2つの区分がなくなりましたが、経過措置として、会社が国に所定の届け出を出しておけば、平成30年9月29日までは特定派遣事業を営むことも可能です。そのため、平成30年9月29日までは特定派遣事業も存在しているということになります。

以下では、両者にどのような違いがあるのかを説明します。登録型派遣とは、派遣元の会社のサイトなどに登録して、希望の仕事に応募する形式です。通常、派遣というときは、登録型派遣を思い浮かべる方も多いと思います。それに対して、常用型派遣は、社員として派遣元に雇用され、別の仕事場に派遣される形です。

登録型派遣・常用型派遣の両方を行う場合を一般派遣、常用型派遣のみ行う場合を特定派遣と呼んでいます。とはいっても、多くの場合は一般派遣=登録型派遣、特定派遣=常用型派遣として用いられていますので、以後、一般派遣・特定派遣の用語を使用します。

一般派遣と特定派遣の違いは、派遣元との契約形態です。一般派遣は、働きたい人が派遣元から仕事の紹介を受けて、希望の派遣先への派遣が決まれば、その時点で雇用契約を結ぶ流れとなります。そして、派遣先との契約が終了したときに次の派遣先が決まっていなければ派遣元との雇用契約も終了します。このため、健康保険や厚生年金保険の期間にブランクができたり、年次有給休暇が取得できなかったりといったことが生じます。

一方、特定派遣は、社員を雇用して、案件ごとに自社の社員をクライアント先に派遣することになります。派遣先との派遣契約が終了しても、派遣元との雇用契約はなくなりません。

私自身、特定派遣の派遣元で働いた経験がありますが、派遣先での仕事後、派遣元の本社に戻って派遣元の仕事をすることもありました。感覚としては、派遣という意識はなく、別の仕事場で働く正社員といったところでした。

 

特定派遣は一般派遣より安定しているものの単純比較ができない

一般派遣と特定派遣は、同じ派遣という名前を持っていますが、その性質はずいぶんと異なります。どちらが良いかと聞かれれば、先ほど書いた通り、社会保険や安定性の面からは特定派遣の方が、メリットは大きいと言えます。しかし、誰もが入りたい会社に入れるわけではないように、この両者も働き手が自由に選択できるものではなく、常用雇用を前提とする特定派遣の方が、狭き門です。

通常仕事を探している方は、正社員・一般派遣社員・アルバイトといった雇用形態から、就業までのステップや自己のスキル、終業後の労働時間や給料などを勘案して、自分の希望を満たす最適なものを選択します。

そこまで収入は必要なく、気楽にやりたいといった場合はアルバイトを選択するでしょうし、ある程度の収入は確保したいけど、正社員の職探しは条件的に難しいといった場合は一般派遣を選択するでしょう。こうした検討の末、正社員で雇用された方の職場が特定派遣もやっていたという場合が現実的には多いのではないでしょうか。

あえて一般派遣を選択する方はいても、特定派遣については、積極的に選択するというよりは雇われた会社で特定派遣も事業として行っていた、という流れが普通です。

私が働いていた特定派遣の派遣元でも、社内で新規事業を開拓する社員もいれば、派遣先に常駐する社員もいるといった形で、特定派遣の事業は一つの事業部門といった扱いでした。

 

3年ルールを巡る一般派遣と特定派遣の違い

法改正前には、派遣には3年ルールと呼ばれるものがありました。これは、簡単にいうと、同一業務に継続して3年間派遣労働者を受け入れる場合、派遣先が直接雇用の申込みをしなければならないというルールです。平成27年の改正によって廃止されたため、今では適用されませんが、どのようなルールだったのかを簡単に説明します。

3年は、ヒトではなく業務をベースに判断します。例えば派遣社員のAさんが2年担当し、その後別の派遣社員のBさんが1年担当すると、合計で3年間派遣社員が同じ業務を担当することになるので、派遣先はBさんに直接雇用の申込義務が発生します。しかし、この制度には例外があります。具体的には、以下の26種類の業務は、派遣社員に担当させられる期間に制限はありません。
 
  1. ソフトウェア開発
  2. 機械設計
  3. 放送機器等操作
  4. 放送番組等演出
  5. 事務用機器操作
  6. 通訳・翻訳・速記
  7. 秘書
  8. ファイリング
  9. 調査
  10. 財務処理
  11. 取引文書作成
  12. デモンストレーション
  13. 添乗
  14. 建築物清掃
  15. 建築設備運転・点検・整備
  16. 案内・受付・駐車場管理等
  17. 研究開発
  18. 事業の実施体制等の企画・立案
  19. 書籍等の制作・編集
  20. 広告デザイン
  21. インテリアコーディネーター
  22. アナウンサー
  23. OAインストラクション
  24. テレマーケティングの営業
  25. セールスエンジニアリングの営業
  26. 放送番組等における大道具・小道具

もともと、業務の専門性が高い業種について派遣期間の制限を無くしていたのですが、技術の進歩に伴って、中には専門的とは言えなくなった業種も入っており、時代にそぐわないということで、この3年ルールも廃止されることとなりました。

 

特定派遣廃止による労働者派遣法改正後の派遣の未来とは?

平成27年9月に、特定派遣というカテゴリをなくし、例外扱いとされている26種類の業務についても廃止するという法律の改正が行われました。この改正によって、SEなども3年ルールの適用を受けることになりました。

そして、平成30年9月29日には特定派遣事業が完全に廃止されます。多くの派遣は登録型のため、特定派遣の廃止によって、仕事がなくなるなどの影響を受けることはありません。特定派遣の廃止によって最も大きな影響を受けるのは、IT業界です。大手企業を中心にシステム開発などで、中小のIT会社から社員を派遣してもらって、自社に常駐させて仕事をしてもらうことがあります。このときに利用されているのが、特定派遣なのです。

特定派遣が廃止になると、一般派遣の許可を得られていない企業については、労働者派遣事業ができなくなります。小規模な派遣会社は、労働者派遣契約ではなく、請負契約などの形で事業を行っていくことになるかもしれませんが、大手などを中心に、コンプライアンスの問題から、実態が労働者派遣であれば、許可を得ていない事業者からの受入には慎重になる可能性もあります。結果として、一般派遣の許可を取れない会社については、淘汰が進む可能性もあります。

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