ハーバード・ケネディースクール(その2)
「アルバイトやクラブをする暇なんて、微塵も無い大学院」
「The John F. Kennedy School of Government」 私も学びたい!しかしその前に英会話教室行かないと… |
- 「ネゴシエーション」ブライアン・マンデル教授
交渉術入門のコースは、毎週月曜日にその週のトピックについての講義があり、火曜日夕方に前日の講義内容に即した模擬交渉演習がある。模擬交渉演習とは、学生にそれぞれ異なる役割と指示書を与えて交渉させるゲームのようなものである。水曜日は、前日の演習の結果を振り返ってクラス全体で議論する。
<例>複数の争点がある一対一交渉「転職活動の際、好条件を引き出すには?」
繰り返し行われるグループ交渉「経営側vs組合側 給与引き下げか、工場閉鎖か?」
- 「公共の倫理」ケネス・ウィンストン教授
この授業のポイントは、「ゼロからの再構成」だ。まずケースディスカッションで、二十カ国から集まった学生から多彩な意見を搾り出すことから始まる。教授は時間内に結論めいたものは一切出さない。ひたすら介入と沈黙を繰り返すだけだ。そして出てきた意見を皆で精査。プラス面・マイナス面で振り分け評価し、総合的に妥当と思われる意見だけ残す。その上で、当該ケースの主人公がどう行動すべきかを意見をぶつけ合う。そして、自分の突っ込んだ意見を定期的に6ページのレポートにまとめる。
<例>「トルーマン大統領と原爆投下」原爆投下はテロリズムか?
「胎児の人権と母親の人権」ニューヨーク州知事が妊娠中絶について出す方針をまとめる。
- 「日本の外交政策と意識決定」エズラ・ボーゲル教授
授業はケーススタディとディベートだ。前半は学生が与えられたテーマに関するディベートを行い、後半は教授がコメントを加えながらクラス全体のディスカッションをリードする。テーマは以下のように、戦後日本の外交政策の中心となるテーマであり、賛成と反対に分かれてディベートを行う。ディベートチームは二人で、授業に先立ち何度かのミーティングを重ね、理論武装して授業に挑む。
<例>湾岸戦争への自衛隊派遣 vs 資金援助のみによる貢献
日本市場の開放 vs 国内産業保護
永遠の平和主義 vs 日本の再武装
この紹介文だけで、皆さんはきっと気づくだろう。そう、この授業の単位をとるには、アルバイトやクラブをする暇なんて、微塵も無いことを。ほとんどの授業の予習として、資料の読み込みが課せられ、毎回100ページ以上はザラで、本一冊という場合もある。それ以外にもプレゼンテーションの準備、チームとのミーティングなどがあるのだ。
言うまでも無く、こんな授業と日々格闘すれば、「企業が求める力」は溢れるばかりに獲得できるだろう。アルバイトやクラブで獲得するよりも、遥かに高いレベルで、効率良く。
でもみんなはきっとこう思うだろう。
「だって、天下のハーバード・ケネディスクールだからだよ! 普通の日本の大学や大学院の授業で、そんな素晴らしい授業なんかあるのかなあ」
でもね、あるんだよ。たくさん。それはみんなが大学の授業を知らないだけなんだ。
その観点を、自分の例を紹介しながら、伝えていこう。
※次のページで、立教大学院ビジネスデザイン研究科の例を紐解く!