大学生の就職活動/就職活動事例

為末がメダルを取った理由(後編)

為末選手は、天賦の才だけでメダルを取ったのではない。キャリアを切り開く理論「計画された偶発性」を体現したのだ。君のキャリアも、私もキャリアも、もっと切り開く余地がきっと、あるはずだ。

執筆者:見舘 好隆

最初にかっ飛ばす・最後に前にのめりこむ


※記事「為末がメダルを取った理由(前編)」より続く。

「400mHは最後の直線でハードルが2台あるので余りに体力を使い果たすと引っ掛けて転倒という事にもなりかねません。もし私がそういう立場だったら、前半自重して後半差す戦略を選ぶはず。その戦略を選んだ場合、一番やられたくないのは超前半型、それを私は選ぶことにしました。この天候でスローペースで、しかも準決勝最下位の選手がまさかかっ飛ばすとは思ってないはずですから、何か起きるかもしれません。」(※出典:為末大オフィシャルサイト「侍ハードラー」

この為末選手が取った戦略は、「リスクテーキング」だ。記事「新庄に学ぶキャリアの可能性」で新庄が語る、

「日本で12億円もらうより、メジャーでプレーをしたほうがトータルとしての価値が上回るんじゃないか。」
(出典:『ドリーミングベイビー』新庄剛志)

この考え方と基本は同じだ。為末選手にも新庄選手にも、勝算はなかった。でも、そのまま普通に走るより、そのまま阪神にいるより、もっとすごい何か(為末選手の場合はメダル)に到達できるんじゃないかという、ある意味「センス」としか言いようの無い感覚だ。最初にかっ飛ばすことでライバルにプレッシャーを与え、有利に勝負を展開できたことは一目瞭然だ。

また、最後の前に倒れこむ戦略も同じだ。インタビューでも語っていたが、「骨が折れたってたいしたことは無い」という台詞が「リスクテーキング」を物語っている。4位との差は0.08秒。ケガ覚悟で前にのめり込まなければ、間違いなく勝てなかった。

この両方の「リスクテーキング」が奏効し、メダルを為末選手は獲得できたのだ。


さて、ある程度の「リスク」を加味してトライできる勇気。このセンスをどうやって身に付ければいいのだろうか?

答えは一つ。結局「やってみないとわからない」。だからこそ大切なことは、その勇気を裏打ちする「何か」を育むこと。つまり、「たくさん経験を積むこと」だろう。「このリスクテーキングは、成功するのか?」という感覚は、数をこなさなければきっと得られない境地だ。何度も何度もトライして、その「何か」を育むしかないと言える。為末選手は、日本選手権決勝でも豪雨に見舞われていて、その中で優勝、すなわちヘルシンキの切符を得ている。欧州のレースを転戦し経験をたくさん積んでいる。そこでおそらく何度も「リスクテーキング」を試し、センスを身につけたに違いない。

やってみないとわからないのだから、たくさんやってみるしかない。

失敗や窮地を楽しめる「開き直る力」が、為末選手のメダル獲得に繋がったのだ。


※記事「試練(夜逃げ)が成功につながる時」も参照するべし!



※次のページで、会社を辞めて、海外遠征で培ったプロ根性を考える!
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