静かな幕開けとなった ペイオフ解禁


写真のタイトル
ペイオフの解禁で預金者の非常口が閉ざされた格好だ
2005年4月1日、ペイオフが完全解禁されました。特に目立った混乱もなく、静かな幕開けとなったようですが、ペイオフに関する報道をみる限り、すべてが預金者に対する情報発信だらけです。

「金融機関を分散させよう」
「個人向け国債は国によって実質的に保証されているので安心だ」
「高い利回りをねらうなら、不動産投資信託も魅力がある」

など、預けている預金をどのように保全するかばかりが一人歩きしているのです。別の角度から見てみると、「金融機関に踊らされている」様相も否定できず、気がついたら「リスクのある金融商品を購入させられていた」という事態になりそうです。

今回はこうした預金者の立場ではなく、180度視点を変えて、金融機関が破綻した場合に、住宅ローンを借りている債務者はどうなるのか一緒に考えてみましょう。


いったい誰のための何のための制度だったのか?


簡単にペイオフの経緯を振り返ると、“解禁”という言葉が表すように、もともとは全額保護の制度はありませんでした。90年代後半、山一證券の自主廃業、日本長期信用銀行や北海道拓殖銀行の破たんなどが集中し、日本の金融システムが揺らぎだしました。そこで、国民の心理不安を抑えようと1996年にペイオフを凍結し、期限付きで預金の全額保護を行なったのです。

しかし、銀行への過保護政策で国際競争力が弱まってしまい、弱体銀行を延命させることは「不良債権の増大」などマイナスの影響が大きいこともあり、解禁のタイミングを計るようになっていきました。当初、凍結期間は2001年3月末までの予定でしたが、金融不安が払拭(ふっしょく)されないために、解禁は2度にわたって延期され、ようやく2002年4月には定期性預金の全額保護を解除し、そして2005年4月からは決済用預金と当座預金を除き、全額保護されなくなりました。つまり本来、ペイオフは

 「ぬるま湯」につかっていた金融機関に“カツ”を入れるための制度

なのです。「護送船団に終わりを告げ、たくましい銀行になってほしい」というのがねらいでした。冒頭で「預金者に対する情報発信だらけ」と述べたのは、こうした経緯には触れられず、「1000万円とその利息」ばかりが強調されているため、本制度の本質を見失わないよう警鐘を鳴らす意味を持たせています。


銀行が破たんすると、住宅ローンの残債はどうなるの?


それでは、今回のテーマであります「住宅ローンの取り扱い」について見ていきましょう。

■住宅ローンを借りている金融機関に預金もある場合

破たん金融機関に住宅ローンなどの「借り入れ金」と「預金」が同時にある場合、相殺することが可能とされています。例えば、A銀行に預金が1000万円、借り入れ金が2500万円あるとすると、相殺して1500万円となるのです。しかし考え方として、上記の例では預金1000万円を繰り上げ返済することにその効果は等しいので、必ずしも融資元の破たんに縛られることはありません。

なお、相殺を希望する場合は「本人の意思表示」が求められ、破たん金融機関に申請しなければなりません。自動的に手続きされることはないからです。また、定期預金は満期が到来するまでその権利が金融機関に存在するため、約款などの改定を要する場合があり、相殺が認められないケースもあります。気になる方は直接、金融機関へお問合せください。


■住宅ローンだけがある場合

この場合、「融資元が消滅するのだから、住宅ローンも消滅するのでは?」と期待する方が(もしかしたら)いるかも知れませんが、残念ながら返済義務がなくなることはありません(笑)。引き続き、ローンは支払っていかなければなりません。

仕組みとして、(借り手からみた)住宅ローン債務は譲受金融機関(受け皿銀行)に引き継がれ、今度は受け皿銀行へ支払っていくことになります。簡単にいえば、支払い先(債権者)が移動するだけといえるでしょう。しかしその際、気がかりなのが返済条件も同時に変更され


 ・残債の一括返済
 ・金利の変更(引き上げ)


があるのではないか、ということです。また、受け皿銀行がすぐに見つかればいいですが、時間がかかった場合にその間のローン返済がどうなるかは予想の域を出ません。現実問題として、突然に残債の一括返済を迫られても払えるわけがないですが、過去に“前例”がないだけに断言できないのが現実です。


すべて「仮定」の話であること忘れるな!


以上、ペイオフと住宅ローンについて言及してきましたが、1000万円とその利息を超える普通預金等が一部カットされる可能性があるのも、あるいは、住宅ローンの債権者が移動するのも、すべて

 「金融機関が破たんしたら・・・」

という前提に成り立っています。「もしも・・・」という仮定の話なのです。金融機関が破たんしなければ、預金が一部カットされることはありません。前段で「ペイオフの本質」を強調したのも、本末転倒している議論を是正したいからで、少なくとも読者の皆さまには正しい認識を持ってもらいたいと思います。

「今、我々には何が求められているのか」ペイオフ解禁を契機に、改めて考えてみましょう。


【関連サイト】
決済用預金はペイオフに向くか?
住宅ローンを抱える世帯 35.5%
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。