「預金通帳」は、正反対!
お手許の預金通帳をよく見てみれば……? |
この担当者の方は、締め切りに追われ焦っていたこともあったのでしょう。いつもどおり、預金通帳を見て直接会計ソフトへ仕訳を入力していたそうですが、悲しいかな。ここでまんまと預金通帳のワナにはまってしまいました。
みなさんもお手許に預金通帳があれは、開いて見てみてください。向かって左側(借方)には「お支払い金額」、右側(貸方)には「お預り金額」と書いてあるはず。具体的には、「左側には出金金額」が、「右側には入金金額」が書いてあります。これが悲劇の始まり。……もう、ピンと来た方、いらっしゃいますよね?
そう、通常、簿記では預金のような資産は「左側は入金金額」「右側は出金金額」が来ると教わったはず。なのに、預金通帳はこれと正反対の書式となっているのです。これを忘れてそのまま担当者の方が通帳どおり入力してしまったために、悲劇を招く結果となってしまったのでした。
普段なら絶対あり得ないようなミスも、焦っていると起こってしまうもの。忙しいときほど落ち着かないと、大変なことになってしまいますね。
しかし、そもそも「預金通帳」が簿記で教わったとおりの書式(向かって左は入金、右は出金)としていれば、こんな悲劇は生まれなかったはず。
預金通帳はなぜ、わざわざ左右反対に取引を書いているのでしょうか?
「視点」を切り替えれば見える「理由」
失敗を失敗のまま終わらせるかどうかはあなた次第。なるべく今後に活かせるようにしたいものです。 |
悲劇に遭った人から見れば、単なる嫌がらせにしか見えない預金通帳の書式。でも、銀行にもそれなりの理由があります。
あなたが銀行を開いたとしてみましょう。その際、顧客から預かった預金はどのように取り扱うことになるでしょうか?「預金」はその名のとおり、顧客から「預」かったお「金」のこと。顧客の要求に応じて返さねばなりません。つまり「負債」として計上することになるでしょう。
顧客から見て「資産」となる預金は、預けられる銀行から見ればその反対の「負債」となるのです。
「負債」は簿記上、「資産」の場合と反対の取り扱いで、増加する場合向かって右に、減少する場合は向かって左に金額を書くことになっています。銀行から見れば、「預金の預入」は負債が増えるので向かって右側に、「預金の引出し」は負債が減るので左側に書くことになる。それがそのまま預金通帳の書式となっているわけです。
最近は銀行のホームページから銀行の決算書を見ることが出来ますので、是非見てみてください。「負債の部」に、「預金」が載っているはず。その際、他の科目にも目を移すと普段お目にかかれない勘定科目がたくさんあるでしょう。実は、銀行は「銀行簿記」という、銀行用の特別な簿記によって、その取引が記録・表示されているのです。
預金通帳は「銀行目線」で書かれているので、私たちから見ると反対の書式で書かれている、ということがお分かりになったでしょうか?
たしかに、一見「不親切」ではありますが、その理由を探ってみると「銀行簿記」なんてなかなか聞きなれない簿記にたどり着けたりして面白いものです。
失敗を単なる失敗で終わらせるのではなく、自分のスキルアップに活かせたのならば、それは「失敗」ではなくなりますよね。
【関連リンク】
・「EDINET」
(有価証券報告書等の開示書類を閲覧するホームページ 。色々な会社の決算書類を閲覧できます。銀行の決算書を見てみては?)