返済期間10年以上の住宅ローンを組んでマイホームを取得し、2017年中に入居した場合、一般住宅では最大400万円、長期優良住宅では同500万円が税還付される「住宅ローン減税制度」―― しかし、この金額は「最大控除額」であるという点を忘れてはいけません。

振り返れば、この最大控除額は2013年度税制改正で決められました。制度設計に当たっては、2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げることによる住宅の販売不振を少しでも緩和・平準化しようという思いが込められています。

そのため、上述した「最大控除額」は消費税率8%を課された住宅を取得した場合に限り適用される仕組みになっており、「経過措置」によって税率5%のままで引き渡しを受けた場合や、中古住宅を個人間で売買した結果、消費税が非課税となった場合には、一般住宅の最大控除額は400万円から200万円に半減されます。同じく、長期優良住宅は最大500万円から同300万円へと縮減されます。「400万円」あるいは「500万円」という数字ばかりがクローズアップされるため、正確な情報が伝わりにくくなっているのです。

だからなのでしょう。制度自体の仕組みや自分が受け取れる還付額がよく分からないという声が多く聞かれ、しばしば「思っていたより還付額が少ない」といった相談を受けます。そこで、本稿では「住宅ローン減税」基礎の基礎として、ご自身の還付額がいくらになるのか基本的な計算方法をご紹介します。

「還付」の意味を正しく理解しよう

住宅ローン減税「還付」の意味を正確に理解しよう。

自身が徴収された所得税額以上の還付金は戻ってこない。


住宅ローン減税を“攻略する”には、「還付(減税)」の意味を正確に理解することから始めなければなりません。以下、<モデルケース>で説明することにします。

<モデルケース1>

分譲価格4000万円(消費税8%込み)の新築マンションを、頭金800万円、住宅ローン3200万円(2017年末時点のローン残高は3100万円とする)を組んで購入し、2017年中に入居した。その年、給与所得者である住宅ローンの名義人(単独名義)が徴収された所得税額は20万円とする。

はたして、いくら還付されるのか?―― その計算にあたっては次の大原則を知らなければなりません。

  1. 住宅ローンの名義人が1年間(1月1日~12月31日)に徴収された所得税額
  2. 住宅ローンの年末残高に控除率を掛けた金額

上記(1)または(2)のどちらか少ない金額が、本人の還付税額となります。

これを<モデルケース1>に当てはめると

(1)20万円
(2)31万円(年末残高3100万円×控除率1.0%)

となり、確定申告によって還付される減税額(初年分)は20万円となります。「年末ローン残高の1%」ばかりが強調されているせいか、必ず1%相当額(ケース1では31万円)が戻ってくると思っている人が少なくなく、実際に還付された金額と“開き”があることで初めて、本来の仕組みに気付きます。

年額20万円の還付金が10年間、毎年戻ってきたと仮定しても、その合計金額は200万円。最大控除額400万円の半分に過ぎません。

住宅ローン減税でいう「減税」とは、本人が支払った所得税が同制度を通じて文字通り「戻ってくる」だけで、政府が負担してくれるわけでも、税務署が補てんしてくれるわけでもありません。住宅ローン減税の財源は「自身が徴収された所得税」そのものであることを、ぜひ知っておいてください。

共有名義の場合は夫と妻それぞれが持ち分に応じて税還付される

収入合算で住宅ローンを組んだ場合の「住宅ローン減税」還付額の計算方法

連帯債務による借入金に係る各共有者の年末残高は、夫婦の持ち分割合に応じて決められる。


続いて、今度は夫婦2人が収入合算し、共有名義(連帯債務)でマイホームを取得した場合を見てみましょう。

<モデルケース2>

6000万円(消費税8%を含む)の新築マンションを購入した共働きのご夫婦。頭金はご主人が2000万円、奥さんが1000万円。各人の年収や頭金の出資額を勘案して、持ち分はご主人が3分の2、奥さんが3分の1とし、2017年に徴収された所得税額はご主人が15万円、奥さんが10万円とします。

すると、持ち分に応じた取得対価は

  • ご主人:4000万円(購入価格6000万円×3分の2)…(A)
  • 奥さん:2000万円(購入価格6000万円×3分の1)…(B)

ご夫婦それぞれが出資した頭金は以下の通り。
  • ご主人:2000万円……(C)
  • 奥さん:1000万円……(D)

よって、住宅ローンの借入金額は3000万円……(E)
※購入価格6000万円-(夫の頭金2000万円+妻の頭金1000万円)

借入金額3000万円に対する年末残高:2900万円…(F)とすると、共有者が負担すべき連帯債務による借入金の額は次のようになります。

  • ご主人:(A)4000万円-(C)2000万円=2000万円……(G)
  • 奥さん:(B)2000万円-(D)1000万円=1000万円……(H)

連帯債務による借入金に係る各共有者の負担割合は

  • ご主人:(G)2000万円÷(E)3000万円=約67%……(I)
  • 奥さん:(H)1000万円÷(E)3000万円=約33%……(J)
よって、連帯債務による借入金に係る各共有者の年末残高は以下のようになります。

  • ご主人:(F)2900万円×(I)67%=1943万円……(K)
  • 奥さん:(F)2900万円×(J)33%=957万円……(L)

これより、最終的に住宅ローン減税による還付額は以下のようになります。

【ご主人】
(K)年末残高1943万円×控除率1.0%=19万4300円と、徴収された所得税額15万円を比較し、初年度の還付金額は15万円

【奥さん】
(L)年末残高957万円×控除率1.0%=9万5700円と、徴収された所得税額10万円を比較し、初年度の還付金額は9万5700円


なお、話が複雑にならないよう、モデルケースでは住民税の還付については考慮していません。

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