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介護・福祉職の給与はなぜ上がらないのか?(3ページ目)

介護・福祉職の給与はなぜ安いのか。専門職として評価されていないから? 現職の方からは「介護・福祉職はこれまで質より量だった、もっとふるいにかけられるべきだ」との厳しい声も。あなたはどう思いますか?

執筆者:宮下 公美子

質より量の介護はもう終わり

ここで、ユーザーからいただいたご意見をご紹介します。保育士から転職して介護業界に入り、介護福祉士、ケアマネジャーを取得。日本福祉大学の3年次に編入し、昨春卒業されたという経歴を持つ、現職の在宅ケアマネジャーの男性。かなり厳しいご意見です。

「これまでいくつかの特別養護老人ホームでの勤務を経験し、介護スタッフの専門性に対する意識の低さを痛感しました。複合的な原因から引き起こされている要介護者の状態、症状をきちんとアセスメントし、発生の根拠を明確に分析しながらケアを行える介護スタッフは、果たしてどれだけいるでしょうか(経験則・感情論・精神論ではなく合理的な根拠をもった対応、いわゆるエビデンス・ベイスド・プラクティス。医療の場合は、エビデンス・ベイスド・メディスン)。

たとえば、尿失禁。これは切迫性・腹圧性・溢流性・機能性など、異なる原因によって引き起こされ、本来、対応も原因によって異なります。しかし、多くの現場でされているのは「Pトイレの設置」「オムツの着用」という画一的な対応。介護の専門性が感じられません。

「あなたの一票」では「給料が安い」への投票が多いようですが、そう思うなら起業するなり、何かしらアクションを起こせばいいではありませんか。それ以前に上記のように、そもそも介護職としての専門性を発揮しているのか、職務を忠実に行っているのかどうかにも疑問があります。そういう意味で、ケアマネジャーに厳しいと言われている今回の介護保険の改正は、むしろよかったのではないかと思っています。担当件数の上限が35件になれば、ケースカンファレンスも、ケース記録の詳細な記述も、これまでのように忙しくてできないという言い訳はできなくなりますから。ともかく職務をまっとうせざるを得なくなるはずです。

これからは、ルーティンワークに甘んじて、不満は言うが具体的で建設的な行動は起こさないという人は、生き残れなくなっていくと思います。それがイヤなら、組織的或いは個人的に戦略を立て、スキルを磨き、建設的にアクションを起こせばいいのです。ニーズ多様となるこれからの時代、「質より量」といった旧態依然の介護は、間違いなく終焉を迎えると思います。ふるいにかけられることで個の価値が上がり、パフォーマンスも上がっていく。そういう時代になると思いますし、なってほしいものです」(地域医療を目指す福祉系ケアマネジャー・30歳代・男性)

実に厳しいご意見で、反発を感じる方もいるかもしれません。
しかし、私は的を射たご意見だと思っています。

多くの介護職のみなさんが、高い理想と理念を持って、仕事に取り組んでいることは十分承知しています。しかしその一方で、十分な自己研鑽もせず、待遇の悪さを嘆いているだけの介護職がいるのも事実だと思います。

介護保険導入以来、介護の仕事もどんどん専門性が高まってきています。いつまでも家政婦さん、付添婦さんの延長線だと、他職種から思われるようではいけません(家政婦さん、かつての付添婦さんには介護職とは違う、それぞれの専門性があると思っています。念のため)。専門職として、看護師や時には医師とも渡り合えるだけの専門性を身につけていかなくては、社会的地位は向上しません。

そして、一人一人のそうした研鑽と並行し、社会の仕組みを変えていくことも必要でしょう。介護、福祉は、人間の尊厳を支える重要な仕事であることを、ねばり強く社会に対して訴え、理解を促すこと。そして、そのサービスにはそれなりの対価を払うのがふさわしいという、社会的な共通認識を得られるようにしていかなくてはならないと思うのです。

この問題、ぜひみなさんにもじっくり考えていただきたいと思います。

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