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施設ホテルコスト負担は公平か?

2005年6月22日、改正介護保険法が成立。新予防給付の導入、施設入居者のホテルコスト全額負担が大きな改正ポイントです。改正について考える2回目は施設ホテルコスト負担についてです。

執筆者:宮下 公美子

2005年6月22日、改正介護保険法が成立しました。今回の改正では、逼迫している介護保険財政を立て直すために、給付抑制のための方策が打ち出されました。その大きなポイントの一つは、前回の記事で取り上げた新予防給付の導入、もう一つが施設のホテルコストの利用者負担化です。今回は、この施設のホテルコスト利用者負担について考えてみます。

施設のホテルコストとは?

特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設などにおける食費、居住費用のことです。ショートステイも同様の考え方でホテルコストは利用者負担となり、デイサービスの食費もこの改正により、保険の対象外になります。

●食費     【食材料費+調理コスト相当】
介護施設の経営実態調査や家計調査のデータからみたモデル的な負担水準は
月4.8万円程度とされています。

●居住費用  【個室・ユニット………減価償却費+光熱水費相当】
       【準個室※……減価償却費+光熱水費相当】
       【相部屋……光熱水費相当】
       ※準個室とは非ユニット型の個室、ユニット型で個室に準ずるもの

同じく、介護施設の経営実態調査や家計調査のデータからみたモデル的な負担水準は
  個室・ユニット……月6万円程度
  準個室………………月5万円程度
  相部屋………………月1万円程度  
とされています。

負担は公平化されたのか

しかし、居住費用の大半が減価償却費であるなら、なぜ相部屋は光熱水費のみで、原価償却分は請求されないのか。そもそもホテルコストの利用者負担は、在宅で介護していれば当然かかるはずの居住費用や食費を保険で負担するのは、在宅と比べたときに公平性を欠くということで導入が決まりました。しかし、居住費用は、在宅の現状よりむしろ高い設定になっているのではないかという批判もあります。

また、生活の場である特別養護老人ホーム入所者にホテルコスト負担を求めるのはともかく、医療施設である療養型、中間施設である老人保健施設利用者に負担を求めるのはおかしいという意見もありました。しかし結局、3施設同列ということに。

これによって、約1/3が介護保険での入院患者、約2/3が医療保険での入院患者となっている療養型医療施設でのホテルコストの扱いにまで、議論が飛び火しています。療養型医療施設に介護保険で入院している患者と、医療保険で入院している患者の費用負担に格差があってはいけないという観点から、医療保険対象者もホテルコストは入院者負担にしようという案が検討されているのです。

以前、「介護保険見直しの論点【2】」という記事にも書きましたが、自己負担分を払えない人たちは施設を退所し、在宅を選択せざるを得ない状況になってしまわないでしょうか。

低い負担水準に合わせて公平化を図るのではなく、「高」平等という考え方。利用者サイドからではなく、予算から政策を考えるため、こういう施策になってしまう。悲しいことです。

施設サイドからは、利用者に請求するホテルコストの設定が難しいという声も挙がっています。このモデル的負担水準はあくまでもモデルで、実際にいくら徴収するかについては、各施設の判断に委ねられています。保険から除外されてしまう額以上を請求しなければ経営は成り立ちませんが、相部屋を希望しても個室しか空いていなくて個室に入っている利用者にはいくら請求するのか。経営を考えれば、光熱水費だけの請求というわけにもいかず、だからといって、個室を希望してもいない利用者に高い居住費用を払えというわけにもいかない。

結局、運用を任されている施設が頭を悩ませることになってしまいそう。

障害者自立支援法のときも思いましたが、予算から施策を考えるのではなく、利用者の便宜面から考える人は、政府にはいないのでしょうか? 

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