住宅ローンは退職金で返済できるの?
「万が一のことを考えれば、最長期間で借り入れし、毎月の返済額はなるべく少なくしておいた方がいい」「返済期間を長くした方が、その分、同じ年収でも借入額を増やすことができる」など、住宅ローンを組む方のほとんどが最長35年で資金計画を立てています。年収や自己資金が少ない人にとっては、無理もないことなのかも知れません。

その根底には、「まとまった資金ができれば繰り上げ返済して、返済期間を短縮すればいい」「最後は退職金でローンの残債を全額、繰り上げ償還すれば老後も心配ない」という考えがあってのことでしょう。

確かに、特定の企業に勤めていれば、ボーナスや退職金が完全になくなることは考えにくいはずです。大企業や上場企業であれば、なおさらです。しかし、年功序列や終身雇用といった高度成長期の就業モデルは崩れつつあり、公務員といえどもリストラが叫ばれ、老後が安泰な時代ではなくなった今、退職金を当てにした返済計画は問題ないのでしょうか? 2005年1年間で、1万2999件もの企業が倒産(東京商工リサーチ)している現実を直視すれば、不信感を持たない方が、かえって不自然なくらいです。

そこで、まもなく定年を迎える「団塊の世代」の“退職金事情”を基礎データに、「賢いマンション暮らし」読者の来たるべき定年退職時に向けた「住宅ローン返済計画」について考察してみましょう。

定年時の平均退職金は“2402万9000円”


まずは、誰もが気になる「退職金の額」についてです。古いデータではありますが、総務省による「民間企業退職金実態調査」によると、平成11年度中に勤続35年で定年退職した人の平均退職金は2402万9000円でした。当然ながら、勤続年数に比例して退職金の額は増えており、企業規模別では、従業員数の多い企業ほど支給額が多いことも見て取れます。

  <企業規模別 定年時の平均退職金>  (単位:千円)
企業規模5000人以上1000~4999人300~999人100~299人全体平均
勤続20年7,5839,4178,7596,8638,169
勤続25年13,60111,28710,6778,02910,819
勤続30年20,53818,09914,29212,38816,513
勤続35年28,12924,24921,01717,43424,029
勤続40年27,36823,61520,96719,08724,150

※企業規模100人以上、かつ、本社・本店の事業所規模が50人以上の民間企業に勤める常勤従業員(役員を除く)で、勤続年数20年以上の退職者(平成11年度中に退職)に対する退職金の支給額です。

また、団塊世代をターゲットにした季刊誌「定年あるじゃん」(リクルート発行)が2006年3月に行なった読者追跡アンケート(下グラフ)でも、退職金支給額(予定額を含む)のボリュームゾーンは「2000~3000万円未満」という結果が出ています。団塊の世代は別名、“逃げ切りの世代”とも呼ばれるように、年金縮小の影響も少なく、年功序列による賃金アップの恩恵も受けられることから、前出の総務省調査(平成11年退職者)とも遜色(そんしょく)ない支給額を確保できるのでしょう。うらやましい限りです。



ところが、新市場とライフスタイルを探る専門誌「日経消費マイニング」の調査では、団塊世代の43.4%は住宅ローンを抱えており、しかも、高額所得者ほどローン残高が多いそうです。また、「総務省の調査では、世帯主が60歳代の家庭が抱える負債は平均840万円で、そのうち約650万円が住宅関係」(日経新聞05年10月30日より引用)というデータもあり、長期返済による資金計画の“ツケ”が、定年退職後の家計に重くのしかかっていることが分かります。「何とかなるだろう」といった楽観的な発想が、“諸悪の根源”となってしまったわけです。

はたして、退職金で住宅ローンは完済できるのか?……次ページで、詳しく見ていくことにしましょう。