「繰り上げ返済」…利用の仕方を間違えると、思わぬ失敗につながる |
ところが、利用価値の高い繰り上げ返済も、使い方を間違えると思わぬ“失敗”をしてしまうことがあります。そこには、思わぬ落とし穴があるのです。せっかく良かれとして行った行為が、裏目に出ては元も子もありません。そこで今回、想定される『繰り上げ返済の失敗例』を紹介したいと思います。
返済期間が10年未満で「住宅ローン減税」はストップする
まずは、住宅ローン減税との関係から見ていきましょう。ご存じ、住宅ローン減税とはマイホーム取得のために返済期間10年以上のローンを組んだ場合、適用年ごとのローン残高に一定利率をかけた金額が還付される税額控除の1つです。多くの方が恩恵にあずかっていることでしょう。ところが、同制度の適用期間中に期間短縮型の繰り上げ返済を行い、その結果、住宅ローンの返済期間が10年未満になると、以後、住宅ローン減税は受けられなくなってしまうのです。
というのも、住宅ローン減税の適用条件に「返済期間10年以上のローンを組むこと」という項目があるため、仮に10年を下回ると適用条件から外れてしまうからです。20年以上も返済期間が残っているような人は、それ程、心配ないかも知れませんが、せっかくの減税制度を無駄にしては残念です。注意しなければなりません。
なお、返済期間が10年を下回ったら、すべてのケースで住宅ローン減税がストップするかというと、実はそうでもありません。ややこしいのですが、以下、2つの事例で補足説明します。
<ケース1> 契約時に15年完済の住宅ローンを組み、現在、3年が経過した。本来であれば完済まであと12年だが、まとまった資金ができたので期間短縮型の繰り上げ返済をした。その結果、返済期間が3年分短縮され、完済までのローン返済期間が9年間となった。 <ケース2> 契約時に12年完済の住宅ローンを組み、現在、3年が経過した。本来であれば完済まで残り9年だが、まとまった資金ができたので期間短縮型の繰り上げ返済をした。その結果、返済期間が3年分短くなり、完済までローン返済期間が6年間となった。 |
どちらのケースも、繰り上げ返済後の返済期間が10年未満となりました。そのため、前出の説明からすると、両者とも住宅ローン減税の適用から外れてしまうと考えがちですが、実は、実際にストップするのはケース2だけで、ケース1は引き続き減税を受けることができるのです。なぜ、このような違いが生じるかというと、それは返済期間の計算方法に“からくり”があるからで、ここでいう「返済期間」とは、
という計算式でカウントされるのです。単純に、残りの返済期間で判断しないことに注意しなければなりません。その結果、ケース1では支払い済み期間3年+繰り上げ返済後のローン期間9年=12年となり、減税の対象となる一方、ケース2では支払い済み期間3年+繰り上げ返済後のローン期間6年=9年となるため、減税の対象外となるのです。「しまった……」とならないよう、知識武装しておきましょう。
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