やっぱり税金は難しくて、よく分からない |
本コラムの作成にあたり、私、ガイドは記載内容に間違いがないよう毎回、事前に税務署に記入方法を再確認しているのですが、職員に細かい質問をすると「確認しますので、ちょっとお待ちください」と担当者ですら即答できない有り様です。なかには「~だと思われます」と、想像(?)で返答してくる職員までいました。これでは、どのように記入すればいいのか、確定申告初心者の方が迷うのも無理もありません。
そこで、お困りの読者のお役に立てるよう、今回も“かゆいところに手が届く”記事を目指してみました。前回同様、次のURLをクリックし、「計算明細書」のひな形を見ながら本文をお読みください。
【ひな形】住宅借入金等特別控除額の計算明細書 (国税庁) ※PDF形式
(注)当該手引きは、2008年1月1日~同年12月31日までにマイホームに入居した方を主な対象としています。
「登記簿上の名義」と「住宅ローン上の名義」を区別せよ!
今回、計算明細書の記入方法をご紹介するに当たり、まずは再確認の意味も込め、そもそも「共有」とは何なのか、基本事項の復習から始めることにしましょう。
共有とは1つの物を複数人で所有すること。つまり、「共有」=「共同所有」のことです。各共有者は共有物の全部に対して、その持分に応じた使用が認められており、他方、共有物全部(=マイホーム)を売却するなどの処分行為を行う際には、共有者全員の合意を必要とします。そして、その際に注意しなければならないのが、「登記簿上の名義」 (共有名義)と「住宅ローン上の名義」 (連帯債務)を混同してはならない ―― ということです。
以下、モデルケースで詳述します。いずれも4000万円の分譲マンションを購入した場合で考えてみましょう。
【モデルケース1】
・本人(夫):頭金300万円 住宅ローン2700万円
・本人の妻:頭金として300万円
・本人の親:頭金として700万円
共有者は3人となり、分譲マンションに対する登記簿上の持分割合は、夫が4000万円分の3000万円、妻が4000万円分の300万円、親が4000万円分の700万円となります。しかし、住宅ローンを組んでいるのは夫1人だけなので、単独債務となり、連帯債務者はいません。住宅ローン上の名義人は夫だけとなります。
【モデルケース2】
・本人(夫):頭金300万円 住宅ローン1700万円
・本人の妻:頭金300万円 収入合算して住宅ローン1000万円
(ただし、妻は連帯保証人)
・本人の親:頭金として700万円
※夫婦で収入合算して借り入れを起こしているため、本来は「夫婦で合計して2700万円を借りている」と考えるのが一般的。ただ、ここでは便宜上、分かりやすいように夫の借入れ分1700万円、妻の借入れ分1000万円と分けて表記する。
こちらも共有者は3人となり、マンションに対する登記簿上の持分割合は、夫が4000万円分の2000万円、妻が4000万円分の1300万円、親が4000万円分の700万円となります。しかし、収入合算とはいえ妻は「連帯保証人」のため、住宅ローンは夫1人の単独債務として扱われます。収入合算すると、必ず連帯債務になるわけではないということです。よって、この場合も連帯債務者はいないことになります。
【モデルケース3】
・本人(夫):頭金300万円 住宅ローン1700万円
・本人の妻:頭金300万円 収入合算して住宅ローン1000万円
(ただし、妻は連帯債務者)
・本人の親:頭金として700万円
同じく共有者は3人となります。マンションに対する登記簿上の持分割合は、夫が4000万円分の2000万円、妻が4000万円分の1300万円、親が4000万円分の700万円となり、<ケース2>と変わりありません。相違点は住宅ローンが夫婦で「連帯債務」の関係にある点です。
連帯債務とは、複数の債務者が同一内容の給付について各自が独立して給付をする義務のことをいいます。金融機関側からすると、夫にも妻にも住宅ローン2700万円(夫1700万円+妻1000万円)全額を請求できる債権関係になります。その際、注意しなければならないのが、夫婦で収入合算して住宅ローンを組んだ場合、
○妻が連帯保証人だと、住宅ローン控除を受けられるのは夫だけ ○妻が連帯債務者だと、夫と妻の両方が住宅ローン控除を受けられる |
ことになっている点です。「連帯保証人」と「連帯債務者」は似て非なるものです。正確な理解を心がけましょう。
【モデルケース4】
・本人(夫):頭金300万円 住宅ローン1700万円
・本人の妻:頭金300万円 妻の自己名義で住宅ローン1000万円
・本人の親:頭金として700万円
共有者は3人。マンションに対する登記簿上の持分割合は、夫が4000万円分の2000万円、妻が4000万円分の1300万円、親が4000万円分の700万円となり、<ケース3>と変わりありません。ここでの相違点は、住宅ローンが単独債務の集合体になっていることです。収入合算ではなく、“各自”が自己名義でそれぞれに住宅ローンを組んでいるため、<ケース2>のように妻の借入分が住宅ローン控除の対象から外される心配がありません。
このように、ひと口に共有名義といっても、その中身は千差万別です。ご自身がどのケースに当てはまるのか、しっかりと自己分析しておきましょう。