住宅ローン控除(減税)の確定申告を忘れたらどうなる?必要書類は?
いまや住宅購入のインセンティブとして、なくてはならない存在になっているのが「住宅ローン減税」です。マイホームを取得後、2017年中に入居すると10年間で最大400万円(一般住宅の場合)が税還付されることになり、家計面での負担軽減効果はもとより、心理面においても住宅取得のハードルを引き下げてくれます。魅力的な税額控除といえるでしょう。しかし、その恩恵に授かるには“自ら”確定申告しなければなりません。市役所や税務署から案内が送られてくることはありません。制度を知らずに還付請求しなければ、一銭も戻ってこないのです。
何とも不親切な仕組みになっているわけです。私ガイドは理不尽に思えてなりません。読者の皆さん、わが身を振り返ってみてください。正社員であろうとパートであろうと給与所得者の場合、所得税や住民税は毎月、源泉徴収され、その残額が「手取り」として給与口座に振り込まれます。つまり、勝手に給与から天引きされてしまうのです。税金を取りっぱくれないようにしようという、手抜かりのない国の周到さが垣間見えます。
このように、税制というのは国にとって実に都合よく制度設計されています。税金に無知・無関心な納税者が不利益を被る仕組みなのです。そのため、「うっかりしていた…」と確定申告をし忘れると、住宅ローン減税の還付金はどうなってしまうのでしょうか?――「仕方ない」で片づけるには金額が大き過ぎます。そこで慌てなくて済むよう、基本知識をご紹介します。
入居年に確定申告を忘れても、遡って5年以内なら還付金の請求が可能
住宅ローン減税を請求し忘れても、猶予期間5年以内なら還付請求が可能です。
最大400万円(2017年)の税還付が期待できるだけに、うっかりは避けたいところですが、実は救済措置が用意されており、給与所得者の場合、5年間はいつでも還付金の請求ができるよう決められています。たとえば2017年分(2017年中に入居した人)の確定申告の対象者であれば、翌18年2月~3月の所得税の確定申告時期に申告をし忘れても、2023年12月末までに還付申告を済ませれば、住宅ローン減税の還付金が受け取れます。
確定申告の方法、提出書類いずれも本来の手続きとまったく変わりません。もちろん還付金額が減額されるといった不利な扱いも受けません。
ただ、毎年発行される「源泉徴収票」や「住宅ローンの残高証明書」など、過去分の必要書類を紛失していると再発行してもらわなければなりません。けっこう面倒な作業です。こうした面倒を避けるには、確定申告し忘れないのが最大の防御となります。くれぐれも、うっかりには用心してくだい。
自営業者の請求期間は2011年12月2日を境に分かれる
他方、ご自身で毎年、確定申告する自営業者が住宅ローン減税の還付請求をし忘れた場合は、「更正の請求」が必要になります。更正の請求とは、納税申告書を提出した者の税額等の計算に誤りがあったことにより納付すべき税額が過大(払い過ぎ)であるとき、一定期間内に改め直す請求のことです。この更正の請求にも時効(請求期間)があり、2011年度税制改正で改められました。改正前は「法定申告期限から1年間」だったのですが、改正後は「同5年間」に延長されました。経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るのが改正の狙いです。
ただ、1年と5年のどちらが適用されるかは申告期限によって異なってきます。具体的には次のように定められています。
- 法定申告期限が2011年12月2日より前:請求期間は1年間
- 法定申告期限が2011年12月2日以降:請求期間は5年間
法定申告期限とは、マイホームの入居年に対応した所得税の確定申告の締切日を指します。たとえば2013年中に入居した人は、翌14年2月17日~3月17日が住宅ローン減税(所得税)の確定申告期間です。
よって、2013年入居者の法定申告期限は2014年3月17日となり、失念後、5年間の請求期間が認められます。2013年に入居した人の住宅ローン減税の最大控除額は200万円(一般住宅の場合)ですので、該当する人は今からでも更正の請求を行い、税額控除の恩恵を享受しましょう。
税制は知っているか知らないかで、損得に大きな個人差が生じます。ぜひとも知識武装を心掛けてください。