■派遣契約と解雇に関する問題
Q:派遣元から契約途中での解約を通知された
3カ月の解約で派遣社員として働き始めたのですが、2週間もしないうちに、派遣元会社から解約をいい渡されました。「派遣先企業から、あなたの技術力不足を理由に代替要員を要請された。いまの力量では新しい派遣先も見つけられない」というのです。力不足は私の責任かもしれませんが、残る2カ月半の給与はもらえないのでしょうか。A:休業手当か解雇予告手当の支払いを請求できる
派遣社員は、派遣先企業から直接的に解雇をいい渡されることはあり得ません。また、派遣会社と社員の間で結ばれている雇用契約でも、正当な理由なしに途中解約はできないことになっています。
問題は、派遣先企業から派遣労働者の交代を要求された理由として挙げられている「技術力不足」が、派遣元の会社の就業規則に、解雇事由として定められているかどうかです。極端に能力不足だったり、勤務状況が悪い場合には、解雇は妥当とされることもあり得ます。しかし、派遣元の会社は、派遣社員として登録を受け付ける時点で能力評価を行い、それに見合った派遣先を紹介したはずですから、いまになって技術不足を持ち出すのは正当ではありません。したがって、あなたは、派遣元の会社に対して新たな派遣先を紹介するよう要求し、それがかなえられないときは、契約期間満了時までの休業手当を支払うよう要求してみてはどうでしょう。
もしも、能力不足が正当な解雇理由として認められていても、あなたの側に悪質で重大な責任があるわけではありません。ですから、派遣元の会社は、事前に解雇を予告することも必要になります。よって、その解雇予告に相当する手当の支払いを求めることも可能です。
Q:派遣契約の解除と同時に解雇を言い渡された
ソフト開発の請負会社に雇用されていました。その会社から、あるメーカーに派遣されましたが、半年ほどで派遣契約が解除となり、それと同時に雇用されていた会社から「ほかに仕事はない」からと解雇をいい渡されました。A:派遣契約解除に伴う解雇は解雇権の乱用
派遣労働者は、派遣元との間で雇用契約を結びます。常用型の特定派遣の場合はもちろん、登録型の一般派遣の場合でも、派遣元はこの雇用契約に定められた期間は、雇用契約を継続する義務を負っているわけです。
したがって、派遣元は、派遣先から契約を途中解除された場合でも、派遣元の責任として労働者を別の派遣先に派遣するなどして雇用を継続するか、就業させられない場合には休業手当を支払わなければなりません。また、派遣元の会社には、別の派遣先を探すなど解雇を回避する努力をすべき義務があり、そうした努力なしに、ほかに仕事がないからと労働者を解雇するのは解雇権の乱用といえるでしょう。
労働者派遣法では、派遣元と派遣先からの一方的な派遣契約解除に対して、派遣労働者の雇用の安定を図るために、派遣元と派遣先双方にしかるべき措置をとるよう義務づけています。あなたと派遣元の会社との間で交わした「就業条件明示書」にも、派遣契約解除の場合の措置が明記されているはずです。
あなたの場合、派遣元に対しては派遣契約解除にともなう解雇の不当を訴えるとともに、派遣先には、派遣契約の内容に沿って、関連会社などでの就業あっせんなどを要求することも可能です。
ここまで、解雇の手順や解雇理由に関して、その妥当性が問題になるテーマを取り上げましたが、労働基準法には、会社が従業員を解雇する場合には、30日以上前に予告することが必要との定めもあります。
この解雇予告は、期間を短縮することもできますが、その場合は、短縮する日数に応じて、平均賃金を支払わなければなりません。この場合に支払われる賃金を『予告手当』といいます。短縮する日数に応じるということは、会社から「明日から来なくていいよ」と即日解雇された場合には、平均賃金の30日分以上を予告手当としてもらう権利があるということになります。
後編では、この予告手当を巡る問題についてのQ&Aを紹介します。