問題は、1時間当たり賃金がどのように計算されるのかということです。これは、毎月決まって支給される給与全額を基準としているのではありません。月給として定められている給与から、家族手当や住宅手当などの生活補助的な手当、通勤手当、臨時に支払われた賃金、1カ月を超える期間ごとの賃金(賞与など)を除いた金額を、1カ月の所定労働時間で割ったものになります。
また、賃金の割増しが必要となるのはあくまでも1日8時間、または1週40時間を超えて労働した場合のことです。あなたの会社が、実質的に1日7時間、週の所定労働時間は35時間ということであれば、1日当たり1時間、または1週5時間までの残業に対しては、割り増し分を上乗せしない1時間当たりの賃金で、残業代を計算しているということも考えられます。
Q 残業代が3カ月毎にまとめて支給される
私の勤務先では、勤務時間の把握が難しいからということで業務週報をもとに超過勤務時間が計算され、3カ月毎に「繁忙手当」名目でまとめて支給されています。都合によりこの手当支給直前に退職することになりましたが、退職後に支給を求めることはできますか。
A 本来は月給としてもらうべきもので請求できる
勤務時間の把握が難しい理由の背景が不明ですが、いずれにしても時間外勤務に対する残業代を毎月の給与に含めず、後払いとするのは問題があります。
労働基準法第24条では、「賃金は通貨で、毎月、一定期日に、直接労働者に、全額を支払わなければならない」と賃金支払いの5原則を定めています。時間外勤務に対する手当は法律上の賃金ですから、3カ月毎にまとめて支払うという方法は、この規定に違反するといえるでしょう。
あなたに支給されている「繁忙手当」は、そもそもが時間外勤務手当であり、本来ならば、毎月の給与に含めて支給されるべきものです。退職後であっても、対象となる期間に働いた分の手当は、当然、支給を求めることができます。
Q 残業しているのに残業手当がもらえない
私が働く調剤薬局(有限会社)は、就業時間は9時から18時までで、間に1時間半の昼休みがあります。仕事が終わるのはほとんど毎日、19時過ぎになりますが、残業代はつきません。社長は、医療という特別だからというのですが。
A 割増手当はつかないが残業代はもらえる
労働基準法は、労働時間の上限を1日8時間、1週40時間と規定し、これを超えて会社が従業員に労働させた場合は、該当する時間外労働時間に相当する賃金に、その2割5分以上を上乗せした賃金を支払わなければならないとしています。ここでいう労働時間は拘束時間ではなく実労働時間です。
さて、あなたのように朝9時から夕方6時までの勤務で、昼休みが1半時間の場合、所定労働時間は7時間半となりますが、所定の就業時間後もさらに1時間労働する場合、このうちの前半の30分は労働基準法でいう「時間外労働」にはあたりません。しかし、相談内容だと、所定労働時間を超えて労働していることに変わりはないようですから、通常の労働時間に相当する賃金が支払われるべきです。また、残る30分は時間外労働に該当しますから、割増賃金の対象になります。
調剤薬局は、労基法上は診療所などと同様に保健衛生業に分類され、従業員10人未満であれば特例として週44時間までの労働が認められています。あなたの会社の社長が「医療関係は特別」といっているようですが、この場合でも1日の労働時間(8時間)についての上限には特例はありません。1日30分相当額の残業代は請求できます。