転職による退職金の目減りを防止する
さて、退職金には長年の功労に対する報償的意味合いがある以上、自己の都合で退職する場合、退職金の目減りは避けられないし、また、転職することで、勤続年数がとぎれとぎれになると、それだけ生涯手にする退職金も大きく目減りすることになります。
ならば、この目減りする分を少しでも小さくすることはできないものでしょうか。
中小企業退職金共済制度を活用する
転職による退職金の目減りを防止するための一つの方法としては、中小企業退職金共済制度の利用が挙げられます。この制度は、国が一部を援助することで、個別に退職金制度を持つことが困難な中小企業でも退職金の支給を可能にしようと、いまから40年以上も前にスタートしています。
本来、退職一時金はそれぞれの会社独自の制度となっているため、退職すればその時点で所定の一時金を受け取るほかありませんが、この中退金共済制度では、退職時に、それまでの掛け金に応じた退職金を一時金として受け取る以外に、「過去勤務期間の通算」制度を利用することで、前の企業での掛金納付月数を引き継ぐことができます。
中退金の退職金支給額も、勤続年数に応じて年数が長くなるほど有利になるシステムになっていますから、転職時に一時金を受給して加入期間をとぎれさせるより、そのまま継続することで、より高額の退職金をもらうことが可能になるわけです。
ただ、この制度を利用するには、いまの勤務先が中退金共済に加入していて、かつ、転職先も同様に加入していることが絶対条件になります。いま現在、被共済者(中退金共済加入者)である人は、転職先を選ぶ際にも、中退金に加入している会社かどうかがチェックポイントの一つといえるでしょう。
ポイント制採用企業なら実績次第で退職金もアップ
第2の方法は、退職一時金の算出方法として「点数方式」(ポイント制ともいう)を採用している企業を選ぶことです。
多くの企業では、勤続年数だけで退職一時金の支給額を決定していますが、点数方式では、職能等級別に一定の点数を定め、これに在級年数を乗じて入社から退職するまでの累積点を算出し、これに1点あたりの単価を乗じることによって、退職金を計算する方法が採られています。
わかりにくいかもしれませんが、要は、転職による中途入社であっても、能力を発揮して人より早く出世することで、ただ勤続年数が長い人よりも多くの退職金を手にすることも可能になるわけです。
この点数方式を採用している企業は、1997年の「賃金労働時間制度等総合調査」(厚生労働省)では8.2%(従業員1000人以上の大手企業では16.9%)。同じ調査で81年には3.4%でしたから、その割合は年々増加しています。給与体系が年功重視から能力・業績重視へと移りつつあることと並行して、退職一時金についても在職中の貢献度を加味する企業は今後とも増えてくることでしょう。