2003年に起きた日本高速道路公団の藤井治芳元総裁の辞職問題。大臣から出せといわれた「辞表」を出さなかったことで、やれ解任だ、解任されたら地位保全を求めて訴訟だ、などと泥沼化していますが、この問題に関して、当時「藤井総裁は辞表の書き方を知らないのでは。総裁に辞表の書き方を教えてやろう」などと、いかにもな発想で、私のところにラジオ局とTV局から個別に取材が来ました。
ラジオはなんとまあ、電話による声の出演。夜中の12時ということで、待ちくたびれて酒を飲み、おまけにウトウトしてしまったために、かなりトンチンカン受け答えをしてしまいました。恥ずかしい……。
汚名返上というわけで、ここで改めて、正しい「辞表」の書き方をまとめてみます。
■2007年度版「正しい退職記事の書き方」をアップしました!
●退職することの法律的な意味合いは?
社員が会社を退職する場合、一般的には、
(1)会社に退職(雇用契約の解除)について承認をお願いする合意解約の申し込み
(2)一方的に退職を通告する解約告知
以上の2つのパターンがあります。退職する側が、どちらを意図して退職の意思表示を行うかによって、法律的な解釈も異なってきますので、注意が必要です。
具体的には、退職の意思表示が合意解約の申し込みだとすると、会社から退職について承認があった時点で効力が発生しますので、もし、今日付けでの退職を願い出たとしても、会社が承認すればその日のうちに退職できるわけです。
ただ、急に辞められたのでは会社も困ってしまいますので、正式に承認を出す前に、残務整理や引き継ぎにかかる期間などを考慮して退職日についてすりあわせを行い、半月後とか1カ月後とか、退職日を合意のうえで設定することになります。また、会社が退職を承認するまでの間には、退職を撤回することも可能です。
これに対して、一方的な解約告知である場合には、会社の承認は必要ありませんが、原則として、退職を意思表示した日から2週間後にならないと退職できません。ただし、会社の就業規則に2週間より短い期間での退職を認める規定があればその期間になりますし、退職を届け出る文書に1カ月後の日時を指定した場合は、その日が退職日となります。
この解約告知は、退職する側が一方的に「辞めてやる」と宣言するものですから、原則として撤回することはできません。
では「辞表」と「退職願」、どちらの言葉を使うのが正しいのでしょうか?次ページで解説しましょう。