1ページ目 【チベット人はチベット自治区だけ住んでいるのではない】
2ページ目 【ダライ・ラマなどチベット仏教のしくみとは?】
3ページ目 【チベット問題の背景・歴史・そして今後はどうなるのか】

なぜチベットは「併合」された?

チベットの山と湖
チベットの山々と湖。写真:「MONIQUE'S フリー素材写真」
清王朝末期から、中国はチベットをより強い支配のもとに置こうと考えていましたが、第2次大戦終結までの多難な国際情勢は、そのような余裕を中国に与えませんでした。

1949年成立した中華人民共和国政府は、「チベットを帝国主義から解放する」として1950年に人民解放軍をチベットの都ラサに向けて進軍させます。そしてダライ・ラマ政権と「17条協定」を締結し、人民解放軍はラサに進駐します。

この結果、ダライ・ラマ政権は中国の地方政府として存続することになりましたが、同時に中国の主権下に入ることを事実上承認することにもなりました。これをもって「チベット併合」とみるか、「中国統一の回復」とみるか、意見は分かれます。

また1950年といえば朝鮮戦争が開戦した年です。南北朝鮮にアメリカや中国が肩入れする形で参戦し、国際政治の眼はこちらに注目、チベット情勢への関心は高まりませんでした。

どうしてダライ・ラマ14世は亡命したのか?

1954年、中国はチベット自治区設立の準備委員会を設け、チベット支配を強化しようとします。

それと前後して、中国人とチベット人の対立は徐々に深刻さを増していきました。中国による大規模なチベット人弾圧があったともいわれています。そして1959年、その対立はチベット人による大規模な騒乱に発展しました。

中国政府からの度重なる警告とチベット人の間で板挟みになり、進退窮まったダライ・ラマ14世は、インドに亡命して亡命政府を樹立します。こうしてチベットにおけるダライ・ラマ政権は崩壊しました。

その後、パンチェン・ラマ10世がチベットのリーダーとされましたがあくまで形式的なもので、1964年に彼は完全に失脚(文革終了後名誉回復)、翌年にチベット自治区が成立し、チベットは完全に中国共産党の指導下に入ることになったのです。

今でもチベット人が迫害されているという情報は絶えず伝わってきます。そのような状況下で、今でも亡命したダライ・ラマ14世は「独立運動」の象徴的存在となっているのです。ダライ・ラマ14世もまたそれを自覚して行動しているのだろうと思われます。

中国とダライ・ラマの「対話」はうまくいく?

中国との対話
高齢であるダライ・ラマ14世が死んだ後のチベットが手のつけられない騒乱状態に陥る可能性も指摘されている。
今回(2008年)のチベット騒乱と、それをきっかけに起こった「中国バッシング」。この打開のためか、中国政府はダライ・ラマ14世との対話再開を発表しました。

もっとも中国政府は、文化大革命以降、ダライ・ラマ14世との対話を幾度か行ってきました。1985年にはダライ・ラマ14世の帰国がいったん決まりましたが、「帰国は独立放棄を認めることになる」という反対もあり、これは実現しませんでした。

1988年、ダライ・ラマ14世はフランスで「ストラスブール提案」を行い、中国との連邦化、つまり軍事以外はチベットの主権を認めるということを要求しましたが、これは中国によって拒絶されました。

それ以降、ダライ・ラマ14世はアメリカで盛り上がってきたチベット支援運動や、ノーベル平和賞受賞(1989年)によるチベット問題の国際化をきっかけに、中国への国際的圧力が強まり、チベット独立が進むと考え、各国への訪問と首脳との会談に力を入れるようになります。

こうしたなか2002年から再びダライ・ラマ14世と中国政府との対話が非公式に始まりましたが、結局成果はなく、2007年に決裂しました。

今や「世界の工場」として国際的な地位を築いた中国が、国際的な圧力によってチベットに大きな譲歩をする、ということは考えにくいことです。また、中国政府がチベットに行った巨額な公共投資額を考えても、チベットを「手放す」ようなことはしないでしょう。その意味で、今回の対話の成否は、おのずと見えているような気がします。

ただ、ダライ・ラマ14世はもう73歳であり、またダライ・ラマ14世と中国との交渉役を演じてきたのは彼の実兄です。高齢の彼らが生きているうちに交渉を成立させなければ、チベットで予想外のことがおこるかもしれない、それもまた中国は認識しているはずです。

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