そして次なるターゲットは、排出量取引?
温室効果ガスに価値をつけて売買するのが、排出量取引 |
国内(または域内)における排出量取引は、企業ごとに温室効果ガスの排出枠を設定し、ガスの排出量が枠未満に抑えられた企業が排出枠を売り、枠を超えた企業がそれを買う、という取引となります。
例えば、設定された排出目標の枠未満にガス排出を抑えたA社と、排出目標を達成できなかったB社があったとします。A社の余った排出枠を、B社がお金を出して買う、というしくみです。
では、この排出量取引制度が、なぜサブプライムローン問題と原油・金など資源価格高騰の延長線上にあるというのでしょうか。
現在の原油価格や金価格などが、実需以上の買いによって押し上げられた価格だとすれば、この過熱した水準は、いつかは修正されるはず。投機的な資金は、割高な価格では利幅が取れないために買いを入れないし、むしろ利益確定のために売り手に回るからです。
とすると、投資対象は次の何かに移ります。それが新興国の株式なのか、高金利通貨なのかは分かりませんが、排出量取引の制度が整備されると、同じように投機資金が向かう選択肢の1つになるとも考えられます。
証券化ビジネス、お金が主役に?
サブプライムローン問題であれ、このたびの原油や金など資源の高騰であれ、根底にあるのは、証券化ビジネスの行き過ぎです。お金は「経済の血液」とも言われます。そもそもお金というのは、モノとモノの交換をスムーズにする道具だったはずです。モノの売買をするときに、そのモノがとても大きくて分割しにくかったり運びにくい場合に、そのモノを保有する権利を移転する手段として生まれたのが、証券化というビジネスモデルです。
しかし証券化ビジネスが行き過ぎた結果、お金そのものが商品となって取引の主役になってしまいました。そしていつしか、お金の価値を生んだり膨らませたりするモノ(不動産や原油や金など)を売買して、そこから利益を得ることが取引の目的になりました。
同様に、排出枠という目に見えないモノに価値をつけて売買を行う排出量取引にも、投機資金が流れ込む可能性がありそうです。
排出量取引は既にEUで導入され、日本国内でも導入を検討している段階です。その制度に投機資金が必要以上に流入すると、本来の排出枠以上の価格で売買されてしまうことが懸念されます。
そもそも、日本国内では、温室効果ガス削減目標を達成することすら厳しいという状況です。その日本で、排出枠に余裕ができる企業(つまり排出量の売り手)がどれだけあるというのでしょうか。温室効果ガスの排出目標が達成できない企業が買い手となり、価格高騰も容易に想像つく中、さらに投機資金で排出枠の価格が押し上げられたら、いったいどうなることやら・・・・・・。導入する場合には、あらゆる状況を想定して、徹底した制度設計が必要です。
【関連サイト】
・「広がる環境ビジネス きれいな空気を売買」
・「カーボンオフセットで温暖化防止に参加!」
・国内排出量取引(環境省)
【関連リンク】
・「エネルギー資源・環境問題」
・「All About“エコチャネルトップ”」