文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
いまや、きれいな空気が売買される時代になりました。
現在、二酸化炭素削減量1トン分が約4~7ドルです。この二酸化炭素やメタンなど、温暖化を引き起こすガス(=温室効果ガス)の排出権が売買されているのです。
温室効果ガスに関する2005年市場規模は、3000億円から4000億円、今後、この削減量の売買マーケットは拡大の見込みとなっています。その拡大規模は予測がつかないほど大きなもの、とも20兆円になるとも言われています。

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ストップ
地球の温暖化に歯止めをかける決め手は?

京都議定書がきっかけに(1P目)
日本で2万円、チリなら500円(1P目)
途上国の発展にプラス、先進国のガス削減にプラス(2P目)
日本でも排出権を売買される日は近い?

京都議定書がきっかけに


京都議定書とは、地球温暖化防止のため二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減ルールを定めたものです。
このルールは、先進国から排出される温暖化排出ガスを、2012年までに少なくとも1990年と比べて5%削減するように義務付けたものです。温室効果ガスを世界で一番排出しているのはアメリカですが、「経済に深刻な打撃を及ぼす」として離脱しています。排出大国の中国も「途上国」のため削減義務がありません。このため、問題点も抱えてはいるのですが、条件が整ったため、2005年2月16日、発効されました。

温室効果ガスというのは、大気中にたまって宇宙に逃げる熱(赤外線)をはね返し、地球に熱をこもらせるもの。温室効果ガスの削減目標は、2012年までにEUが8%、日本が6%です。1990年の日本の排出量は約12億3700万トンで、ここから6%削減すると約11億6300万トンとなるわけですが、日本は2003年には逆に8%増加し、約13億3600万トンを排出してしまいました。目標を達成するには増加分も含む14%を削減しなければなりません。

地球温暖化の進み具合は、現在に比べ、2100年には平均気温が5.8度上昇すると見られています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、この環境下では動植物の15~30%が死滅するという見込みです。

日本で2万円、チリなら500円

このように、先進国に義務付けられた温室効果ガス排出削減目標ですが、経済活動の活発な先進国で排出を削減するのは難しく、途上国に木を植えるなどして二酸化炭素を吸収したほうが処理が簡単で、費用が安くすみます。

この温室効果ガス排出権が取引されています。これが「京都メカニズム」と呼ばれるものです。
先進国から発展途上国に資金や技術を提供し、その途上国内で削減した温暖化ガスを、資金・技術を提供した先進国の国内で削減したものとして扱うことができる「クリーン開発メカニズム」に日本企業は着目しています。

例えば、日本が途上国の施設の新設や設備更新などの開発プロジェクトに資金的・技術的協力を行います。それが稼働することによって温室効果ガスの削減につながった場合、その削減成果の一部を日本の排出削減量としてカウントする、というスキームです。サラリーマンが、使いきれない有給休暇を「誰かに売ってあげたい」と言っているのと同じようなことです。途上国で安いコストで温暖化ガスを削減し、その分日本国内で排出することが可能になります。
会議場
空気を使うのも「契約」に


日本で二酸化炭素を1トン削減するのにかかる費用は約2万円といわれています。これが途上国なら、安くすみます。例えば南米のチリでは約500円で削減できます。この差額が排出権の値段になります。

企業も環境対策を迫られています。
もはや、環境対策に取り組む企業イメージアップ狙いという時期ではなく、政府が環境税の導入を検討していることが企業の取り組みを加速させています。環境税とは、環境汚染物質の排出削減のため、環境の利用者に税金を課すというものです。環境利用者は、高い税金を払うより税額より安く環境汚染対策を行い、税金を節約しようと考えます。代表的な環境利用者とは、環境汚染物質を排出する者で、電力会社、石油元売会社、鉄鋼業界などです。

そこで、環境汚染を防ごうとするあまり経済活動にブレーキを掛けてしまうのではないかと不安を抱く企業は、途上国での温室効果ガス削減の権利を買い、国内での事業活動をそのままペースダウンさせないために、排出権取引を利用したいと考えます。

ここまでの話では、温室効果ガス排出権取引のためのプロジェクトは、先進国のご都合主義、というように聞こえるかもしれません。しかし、途上国にとってもプラスになります。
次のページでこの点について解説しましょう。