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英雄か悪魔か?シャロンという人物(3ページ目)

イスラエル・シャロン首相の病状についてのニュースが続いていますが、なぜ彼はそれほどまでに注目されるのか?それは、彼のこれまでの生涯をみていくとわかってきます。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【軍人として「国民的英雄」に上り詰め、そして右派政治家へ】
2ページ目 【今もなお国内外の議論の的……国防相シャロンのレバノン侵攻】
3ページ目 【21世紀になってつかんだ政権の座……超リアリズム的なその政策】

【21世紀になってつかんだ政権の座……超リアリズム的なその政策】

シャロンの「カムバック」

・1996年 リクード中心のネタニヤフ政権発足
・1997年 ヘブロン合意(イスラエル軍の占領地撤退について) 一方で自爆テロ頻発するようになる
・1998年 シャロン、外相に就任
・1999年 初の首相公選、労働党のバラクが首相に就任 シャロン、リクード党首に選出
・2000年 シャロンによるイスラム聖地への訪問を機に第2次インティファーダ勃発、和平プロセス破たんへ
・2001年 首相公選(これが最後)、シャロンがバラク破り首相に就任 労働党を連立に入れる挙国一致内閣を結成

シャロンは雌伏していた時期、一時はリクード党首を狙いますが、結局ネタニヤフに敗れます。ネタニヤフは、右派ながら、中東和平に熱心なアメリカ・クリントン政権の圧力もあり、和平プロセスを進展させます。

しかし、自爆テロが頻発するようになり、このころから和平の雲行きが怪しくなっていきました。こうしたころから、シャロンが再び台頭してきます。

ネタニヤフはより過激な右派との連携が上手く行かず、労働党の政権復帰を許してしまいます。そして「国民的英雄」シャロンが、とうとうリクード党首に上り詰めることになります。

シャロンは2000年、イスラム聖地への訪問を行いパレスチナ人を刺激、これにより第2次インティファーダが勃発、和平プロセスは完全に破たんします。

この間、アメリカは大統領選のさなかであり、クリントン政権は有効な手を打てずじまいでした。

そして2001年には、外交にあまり関心のない(当時は、ですが)ブッシュがアメリカ大統領になることによって、アメリカの仲介による和平プロセス進行はいよいよ困難になっていきます。

こうした中、シャロンは首相公選で圧倒的勝利を収め、とうとう首相に就任します。

シャロンの現実主義~タカ派とハト派の顔の使い分け

イスラエル地図
ガザからの撤退を進める中、シャロン政権は通称「アパルトヘイト・ウォール」の建設に余念がない。地図以外でも、さまざまなところに建造中で、パレスチナ人の「隔離」が進んでいるとされる。
・2002年 パレスチナ人への攻撃強める ジェニンでイスラエル・パレスチナの大衝突、パレスチナ人が多数虐殺されると報道
・同年 イスラエル軍、アラファト議長のいるラマラを包囲
・同年 ブッシュ大統領、「中東和平ロードマップ」を提案
・2003年 総選挙で圧勝、労働党が政権離脱
・同年 いわゆる「アパルトヘイト・ウォール(隔離壁)」建設始まる
・2004年 ガザ地区撤退計画が閣議決定
・同年 アラファト自治政府議長死去、後任に穏健派アッバス就任
・2005年 ガザ入植地撤退実行
・同年 右派からの反対受け新党カディマを結党、直後倒れる

2001年のいわゆる「9・11」と、それに伴う「テロとの戦い」ムードは、シャロン政権に味方しました。シャロンもまた「テロとの戦い」を口実に、パレスチナ人への攻撃を強めました。

特に2002年にはパレスチナ自治政府議長であり「長年の宿敵」アラファトを包囲。アラファトの脱出は許しましたが、事実上自治政府の機能はマヒしました。

そして総選挙で圧勝。労働党は政権から出たため、少数与党ながらシャロン首相の求心力はますます強まっていきました。このころから、「アパルトヘイト・ウォール」とよばれる壁をヨルダン川西岸地区に築き、ユダヤ人入植地とパレスチナ人地域の隔離を図るようになりました。

しかし、シャロンの強攻策に反対する国際世論と、次第に中東に関心を向け始めたブッシュ政権の動きを読んだシャロンは、ガザからの入植地撤退という「ハト派的」政策を、一転して実行することになります。

これは、一見中東和平を進めるプロセスですが、実はその一方ではるかに広大なヨルダン川西岸地区を確保するため、国際世論をかわす狙いがあると見られています。

ポスト・シャロンのイスラエル政局とパレスチナ和平は?

しかし、シャロンの動きは自党のリクード右派やその他連立を組む右派政党を刺激しました。

そこでシャロンはいきなり新党カディマを結成。たちまち人気となり、世論調査ではリクード、労働党をおさえてトップに立ちます。

しかしこの直後、シャロンは脳内出血で倒れ、政務の取れない状態へと陥ってしまったのでした。

シャロンの政界からの退場は何を意味するのでしょうか。和平が進むかもしれません。しかし、一方で「超大物」の不在は、イスラエル政局の混迷化を進め、いよいよ中東和平が滞ることになるかもしれません。

これからのイスラエル政局の成り行きを、注目したいところです。

「英雄か悪魔か?シャロンという人物」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座

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